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タバコと酒とブライアー
先日の動画で、ラストロックを投じたカナダのスキップ(メレシチェク)が口に何かを咥えていることに疑問を持たれた方がいるかもしれない。(0:12~0:19くらい)
葉っぱかな? 番長なのかな? それとも岩城関係?
いいえ、タバコです。(しかも、おそらく火がついている)
若干ケースは違うのだが、
— 竹田 直将(TAKEDA Naomasa) (@banseicc) January 26, 2023
世界選手権の決勝で、
勝利を確信した選手が
歓喜のあまり(?)大きく飛び跳ね、
着地に失敗して(得点に関与する)石を蹴飛ばし
結果優勝を逃す、ということが実際あった。
(1972 Garmisch-Partenkirchen)
まだ勝負はついていなかったのだ。https://t.co/1RIcQaHpAQ
現在的な観点からは信じられないが1970~80年代くらいまで、タバコを吸いながらカーリングをプレーするのはさほど珍しい光景ではなく、さかのぼればマナー違反ともみなされていなかったのだ!(現在は違います。念のため。)
男子のカナダ選手権(Brier:ブライアー)の第1回大会は1927年に開催されている。世界選手権が始まったのがいちおう「1959年」ということになっとりるので(カナダとスコットランドの対抗戦「Scotch Cup」の開始年)カナダ選手権は世界選手権よりも30年以上長い歴史がある。
Brier最初の50年間、大会の冠スポンサーをつとめたのは、かの「マクドナルド」であった。といっても、私の娘が連れて行ってとせがむ、ハッピーセットのマクドナルド(McDonald's)ではなく、北米を拠点に煙草の製造販売をしていたマクドナルド(Macdonald Tobacco)である。
そのため、Brierの選手控室には選手が自由に吸えるようにタバコが積まれ、会場内いたるところに灰皿が設置されていた(らしい)。
なんじゃそりゃ、と思うかもしれないが、当時の感覚としては、全農が会場に「もぐもぐブース」を展開しているのと同じようなものだっただろう。
カーリングはおっさんがタバコ吸いながら楽しむ競技、というイメージだったんでしょうなあ!
当然といえば当然の話で、当時のカーリングのファン層と企業の訴求層が重なったからこそ、マクドナルドは大枚はたいて大会をスポンサードしたのだ。
付け加えると、大会の愛称「Brier」はマクドナルド社の主力ブランド名から採られたものである。(「メビウス」とか「キャメル」みたいな感じです)
もっと言うと、大会のトロフィーに歴代優勝チームが名を刻む金属板の形状、これはこの「ブライアータバコ」のハート形のトレードマークをリスペクトしたものなのだッ!
(スポンサーが変わった後も、形状を変えなかった。出場選手が肩に付けている出場回数を誇示するワッペンの形状も同じ由来です)
※どんなのか見たい方はカナダスポーツ殿堂のウェブサイトでご確認を。リンク先下部に画像あり。
(たばこ缶の中央部にあるハート形のマークがそれ)
ちなみにマクドナルド社はその後、買収や統合等を経たものの、事業は継続しており、現在、日本たばこ産業(JT)の傘下にあるそうだ(へぇ)。
マクドナルドの後を引き継ぎ、その後20年間にわたり大会の冠スポンサーになったのがラバットビール(Labatt Brewing Company、醸造業)である。私のようなオールドファンにとっては、カナダ選手権は「ラバットブライアー」の名称がなじみ深い。
1980~90年代に入って、カーリングは「おっさんは禁煙に成功したが、ビールはやめられん」というイメージだった(んでしょう、たぶん)。
その後、冠スポンサーはノキア(通信・携帯)を経て(突然、デキるビジネスマンに変身)現在はご存じのとおりティムホートンズ(ドーナツ・コーヒーショップチェーン)に交代している。
「みんなでコーヒー片手にドーナツかじりながらカーリング観戦だー!わーい!!」というイメージ(たぶん)。
このように、この100年でカーリングのイメージは大きく変化してきたのである。
さて、振り返って、日本におけるカーリングのイメージはどう変化してきたといえるのか?
だいぶ長くなったのでこのあたりで話を止めておきたい。(つづかない)
(2023年2月7日にツイート)