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#152 むち…むちィ……

 近所のお寺さんに法然展のチケットをいただいたので行くこととなった。
 国立博物館の前がすごい人だかりなのでヴォーすげーと思ったら修学旅行の団体さんとツワーの外国人さんの群れだったりするのでびっくりしちゃう。あとでわかったことだが、博物館から向かって右のなんにもなかったところがバスツワー用のターミナルとして整備されていて、この辺に人が溜まるのも必定といえるのであった。まぁアンタずいぶん綺麗にならはって。バスターミナルにかける言葉やないでぇジイチャン!

 あたくしもずいぶん国立博物館には通ったクチではございますが、今回くらい「おれは何を観に来たんだろう」という気持ちになることは無うござんした。よくよく落ち着いて考えてみると、今年は浄土宗の開宗850年にあたるので、その記念ということもあったんだろうというのは想像に難くないのですが、なんだろう、ご上人の絵伝があって、足利義輝の筆による一枚起請文などに見られる時の実力者の手厚い信仰があって、増上寺が徳川将軍家の菩提寺になる、と、その流れを見ている、ということは、そうか、われわれは博物館に、ある一宗教の隆盛の流れを観に来たのだ、ということになる。博物館に。博物館に?
 いや、その背後にあるものこそ観るものではないのか。信仰に裏打ちされたモチベーション。数々の阿弥陀仏像、木像、精緻な絵伝、それをも功徳としてものしてきた当時の人々の熱意。そのへんを観たらいいのかもしれない。そうなんだよな、その当時の人々が動かした"手"の痕跡を博物館に期待しているのかもしれないな、と思い至るあたりが得難い体験でございます。 

 そしてまあ、関連グッズの展開もものすごい。サイトの方をご覧いただくと瞭然とするのですけんども、

 極楽浄土つながりで洗面器と手ぬぐいのセットが売られているのには非常に興味が湧く(が、使わなそうな気がするので断念する)。ご存じの方にはおなじみ、拝観ルートの途中にお土産物屋グッズのブースがあるのですが、いやに動物モチーフのランチバッグや文鎮とも呼べないような小さいオブジェの販売がある。コウモリにカタツムリ……カタツムリ?(そんなんあったっけ?)とあやしがりて寄りてみるに、展示の後半では香川は法然寺の彫像群「仏涅槃群像」がまるっと展示されている。つまり、この彫像群にある動物たちが惜しげもなくグッズ化されておるわけで、おお、このカタツムリ像のむっちり感がとてつもなく、いい。そうした宗教的なシーンの立体化ではあるが、像をこさえた人が何を思ってこのカタツムリをこしらえたかが想像できる。殻のシュッとした感、すっと伸びた2本の目玉、とどめに「ぽてっ」とも「むちっ」とも形容できるカタツムリの肉の質感。なんともフェティシズムにあふれており、急にもンのすごくカタツムリのオブジェが欲しくなりましたが6品のうちネコとカタツムリだけ完売ときた! みなさん解ってるッ!

 ついでなのでアジア館の方にも寄ったけど、やはりそれぞれの世界の民族がでっかい石像を打ち立ててみたり、砂岩を削って細かい模様を城壁にほどこしてみたり、まさに「ぽてっ」と音がせんばかりのガネーシャ像などを観ると「ああ、これこれ」と嬉しくなってしまうのでござんした。
 やはりその、博物館というのは、人の手の跡を見るもんだと思いました。

おまけ:坊主頭で白いワイシャツ姿なのは、だいたいどこかのご住職。

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ながちろ
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