ASOBIJOSの珍道中①:LAを経由して
うとうとと、眠れたのか、眠れなかったのだかハッキリとしない時間を過ごして、目を開けると、機内には、辺りの窓から差す、すみれ色の光が充満していました。私は、しばらくぼうっと外を眺めてから、日記帳を取り出し、こう綴りました。
こう書き終えるや否や、飛行機は着陸体勢に入りました。すると、隣のMARCOさんは一層固く目を閉じて、身をこわばらせます。そうです、普段は何事にも勝気で、車の運転も自転車の運転も、怖い物なしでびゅんびゅんとぶっ飛ばす彼女ですが、飛行機は大の苦手なのです。
いよいよ着陸が近づいて、飛行機が大きく左に傾きながら旋回しだすと、もう檻に入れられた猫のようにブルブルと震え上がっています。これは、と思って、腕を強く掴んで、
”おぉ、危ない!”
などと、からかいますと、
”ぶっころすぞ、てめぇ!”
などと言いながらも、その目はもう涙目で、オロオロと、なんとも愛しい有様。
”あぁ、もう飛行機なんて二度と乗らねえ”と、いつものセリフを決めながらスタスタと、私たちは成田からモントリオールへと向かう道のりの経由地、LA(ロサンゼルス)に下り立ちました。
LAには2泊する予定で、事前に予約していたホステルへ向かおうとしましたが、ここでまず一苦労です。空港の到着ロビーで、案内係らしき中年男性を見つけ、滞在先であるベニスビーチへの行き方を尋ねますと、
”タクシーは高いからやめたほうがいい。50ドルはくだらない。Uber(ウーバー、個人タクシーを呼ぶアプリ)でも30はかかるね。一番いいのは高級ホテルの送迎バスに乗って、近くまで行ってからタクシーに乗ったらいい。私の息子も高級ホテルで働いているから、大丈夫だ。"
と。この、最後の一文の意味が全く理解不能で、
”送迎バスは、そのホテルの客しか乗れないんじゃないのか?”
と尋ねますと、
”いや、私の息子が働いているから大丈夫だ。もう5、6年は真面目に働いて、立派なやつなんだ。”
と、、、、。
さて、気を取り直して、一旦、落ち着いてご飯でも食べようかと空港内を歩き回りました。重たいスーツケースを押して。しかし、その到着ロビーではカフェくらいしか見当たらず、隣のロビーまで歩いてみようか、と、歩き、そこでも食事らしい食事を出している場所が見つからず、またもう一つ、と歩き、歩き、歩き、なんだかんだ1時間以上も迷い猫のようにさまよい疲れ、なんとか一つのピザ屋を見つけ、そこでピザとオレンジジュースを注文して席につきました。
カードで支払いを済ませようとするMARCOさんが、
”あれ、これ何?”
と言うので、
”とりあえず NO にしといたら?”
と適当に応えますと、どうやらそれはチップだったらしく、それまでとても上機嫌で”コンニチワ〜!”などと、はにかんでいたオールバックの店員さんが、露骨に無愛想になり、一瞬たりとも目を合わせてくれなくました。
まあ、そんなこんなで、ピザの一枚が19ドル(2500円)もする物価の高さにも驚かされ、10時間以上のフライトで疲れた胃も、ひどく固く脂っこいピザにムカムカさせられ、何もかもがこうも噛み合わないのか…。と、呆れるほどのもどかしさに、"あぁ、いよいよ日本を離れたんだね"、と苦く微笑んだ私たちでした。
ちなみに、その後、携帯の電波も繋がらないので、しぶしぶ普通のタクシーに乗ったのですが、たったの20ドルでした。