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魅惑のライチ
正直、僕は果物があんまり好きじゃない。
最近は不眠気味で、「食事でも見直してみるか」程度のナメた気持ちで、毎日バナナとりんごを食べてはいる。
バナナには、聞いたこともない、恐竜の名前みたいな栄養素が含まれていて、それがリラックス効果をもたらしてくれるらしい。
りんごはぶっちゃけ何となく果物といえばで頭に浮かんだから買っている。
僕の中で昔から果物は「うーむ、なんか65点くらい」という感じがする。
確かに、果物は美味しい。
例えばみかん。あれは美味しい。しかしあの白い皮みたいな部分。まるでちぎったティッシュを食ってるみたいだ。それに手が汚れる。
イチゴはよく見ると、モノスゴク“ツブツブ”している。あれが苦手だ。それに時々なんか酸っぱい。練乳をかければ良いのだが、それはイチゴが好きと言えるのだろうか?それに手が汚れる。
スイカなんか1番嫌いだ。匂いを嗅ぐだけで吐き気がする(僕はウリ科の食べ物が大嫌いだ)。それに人は平気な顔をしてスイカのタネを口から吹き出して遊ぶ。あんなの最悪じゃないか。オジサンの飛ばしたタネが僕に当たった時、一族はみんな楽しそうに笑っていたが僕は内心泣きたい気持ちだった。早く顔を拭きたくて仕方なかった。それに食べた事はないがきっと手が汚れる。『夏の素敵な思い出=スイカ』という黄金の方程式が成り立たない、悲しい人間がいることを皆さんには知っておいてほしい。
りんごや梨はジューシーだと人は言うが、僕からしたら甘い汁を吸った硬いスポンジを齧ってるようだ。
ぶどうはうまい。が、手が汚れる。
バナナはうまい。しかし5房もあって1日1本ずつしか食べないもんだから最後の1本なんかもう真っ黒になっていて「これ、食べて良いのだろうか」と思いながら目をつむって一息で食べている。
そう、果物ってどこか修行感があるのだ。何かを耐えた向こう側の甘みを楽しむ。みたいな。
ここまで散々果物の悪口を言ってしまったが、唯一、僕が大好きな果物がある。
『柿』だ。
あれは完ペキだ。ぽってりとした甘さ、重さ、しっとりとした歯応え、熟したモノも最高。スプーンですくってよくお爺ちゃんからもらったものだ。修行感もまったくない。
それから、これはちょっとした不思議なのだが、僕は『果物味の何か』は割と好きだ。
『メロンパン』は大嫌いなウリ科のメロンがモチーフだが、昔から大好きだ。ウリ独特の鼻の奥に溜まるイヤな感じが全くない。
『りんごジュース』も『オレンジジュース』も、果物特有のつっかえる感じがないし、かき氷の『イチゴシロップ』はツブツブもないし、酸っぱくもないから大好きだ。
たしか『コロロ』という名のぶどうグミがあった気がするが、あれは本家ぶどうよりうまい。
な〜んだ。と、思う。
みんな果物の修行感を分かってるんじゃん。と。分かってるからそういう部分を削ぎ落とした商品を作ってるんじゃないか。と。楽して文字通り甘い汁を吸ってるんじゃん⭐︎と。
僕は本当は果物が大好きなんじゃないかと錯覚までしてしまう。
そんな僕が今1番気になっている、魅惑の果物がある。
『ライチ』だ。
僕は、『ソルティライチ』という飲み物が狂おしいほど好きだ。コンビニで何か飲み物を買う時、ここ数年は必ずそれを選ぶ(その前まで何を飲んでいたのか思い出せないほどだ)。最初に飲んだ時衝撃を受けた。スポーツドリンクでもジュースでもない、それは確かに、食べたことのない未知の果物の味がした。僕好みの味だった。
あの味の果物があるのならぜひ、ぜひ食べてみたい。
しかし、これまで『果物』→『果物味の何か』はあったが、逆の経験はない。果物独特の修行感を感じてガッカリしてしまうのではないかという恐怖と、そもそもどこに売っているのか、旬はいつなのか、あの小さな赤い実ごと食うモノなのか(なにせあのペットボトルのイラストでしか見たことがない)、手は汚れないか、さっぱり分からないのだ。
という事で、僕はもうしばらく、この状況を引き延ばすだろう。まったく男らしくないが、まだ踏み込む勇気が出ない。
美味しい美味しい『ソルティライチ』を飲み、南国のどこかで(産地も知らない)トロピカルに成っているであろう魅惑のライチに思いを馳せることにする。