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足跡を残せ

作業に疲れて昼寝することにした。
20分休むつもりが、アラームに気付かずすっかり長寝してしまったようだ。

一体どのくらい寝ていたのか…不思議な事に、これがさっぱり分からないのだ。流していた映画はとっくに終わっていたし、寝る直前にやり取りしていた連絡もない。最後に時計を見たのがいつだったか、まるで思い出せない。
別に困りはしないがなんとなく知りたくて色々と漁っていたら、その時付けていた作業記録にたまたま時間を書いていた。

〈18:12予定〉

これは、『このメモは18:12に書いた、今日済ませておきたい録音予定』という意味だ。

見事、何て事ないこのメモのおかげで大体の寝ていた時間が分かった(この後30分ほど作業して、起きたのが21時だったので20分仮眠のつもりが2時間20分寝ていた事になる。「あらまぁ」である)。

…これで1つ思い出した。
中学の頃の美術の授業だ。
先生の事をよく覚えている。髭をたくわえ、絵の具の跡のたくさんついたエプロンをつけ、“いかにも美術の先生然”としていた。
その風貌が印象深かったのか、最初の授業で言っていた事をよく覚えていた。

「みんなが描いた絵には必ずサインをしましょう。この中に将来偉大な画家になる人がいるかもしれません。そんな時、その人物が初めてサイン入りで描いた絵が今この瞬間生まれるかもしれないのです。だから必ずサインをしましょう。」

俺はこの先生が大好きになった。
どうやら俺には絵の才能はなく、何の賞も貰えなかったし、その時描いた絵も今やどこにあるのやら(何の絵かも覚えていない)…という感じだか、今思えば素敵な先生に出会っていたんだなとふと気付かされた。

〈今日の予定を決めた時間〉なんて書いたところで何の役にも立たなさそうなものだが、おかげでアーティストとして大切なものを再確認出来たわけだ。まったく、人生分からないものだ。
2時間のオーバースリープも無駄ではなかったようだ。
いや、時間は無駄にしたが。

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