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ボールプールに降ってきた!
僕は時々《マジョリティ》とか《マイノリティ》について考える。
いやいや、そんな深刻に考える訳じゃぁない。頬杖ついて鼻でもほじりながらぼんやぁり考えるだけだ。
こんな感じで。
僕はビートルズというバンドが好きだ。
彼らの事を「世界で1番有名なバンドだ」と言っても「まぁ、そうだろうな」という感じで文句は出まい。
これは《マジョリティ》と言って良いはずだ。
しかしどうだ。
中学の頃、クラスでビートルズを聴いてるやつは誰もいなかった。
なんなら聴いてることをちょっと笑われたくらいだ。「古っ!」と。これはおかしいじゃないか。
その代わり、彼らは別のバンドやアイドルの話をしていた。み〜んな同じ話をしていた。
僕は気付いた。「あれ?俺がマイノリティになってないか?」と。当時は大変混乱した。
びっくりはここから。
時が経ち、同窓会や結婚式で彼らに会う。
当時散々話してたバンドやアイドル達は、あろうことか「ああ、そんなのもいたな。懐かしい」と言われるのだ。
あの頃の目の輝きは失せ、今やビール片手にゆるめたネクタイと疲れた目で、ゲップをしながら「そんなのもいたな」ときたもんだ。
な〜んて仕打ちだ。
これじゃあマリコ様も浮かばれない。
ただ、結局起きた事は一緒。口を揃えて別のバンドやアイドルの話をする。
僕は肩をすくめて「やれやれ」と言いたくなった。《マジョ》と《マイノ》の世代交代だ。一体どうなってるんだ。
そんなモノか。
今流行ってるバンドやアイドル、小説でも映画でもいい。10年後、同じ熱を持って愛し続ける人は残るのだろうか?いや、ほとんどいなくなるだろう。そして数少なく残った者は『流行遅れの変わり者』とされる。僕はそんなの悲劇的だし、「本当の好きではないじゃないか」と思っていた。「俺は芯があって偉い」とも。
でも違った。
高校の時、同級生に「お前の好きなビートルズはもう新作が出ない。古いものばかり追ってて何が楽しい?いや、それは追ってるとも言わない。振り返ってるだけだ」と言われ、ぐうの音も出なかった。
自分が惨めに思えた。
彼らは今を生きていると。新しいものを追って時代の先端を走ってるんだ、と。
「あらら、俺は『流行遅れの変わり者』か」と。
でも違った。
最近気付いた。
僕は何かに興味を持つ時、その理由が、『新しいから興味アリ』とか『流行ってるから興味アリ』となる事がまず無いのだ。
あれだ。ボールプールってあるでしょう?
心ってのは広〜いボールプールみたいなモノだ。
たくさんあるボールは『感情』だ。それぞれ、外から降って来る〈何か〉に触れると、色々に反応する。
『ウケる』とか『すげぇ!』とか『なんやねんコイツ』などのボールがある。『エロ!』とかも、まぁ正直あるだろう。
人それぞれ持ってるボールは違う。同じボールをいくつも持っているかもしれないし、人が持ってるボールを持っていないこともあるだろう。
残念ながら僕のボールプールに入っているのは多分、ほとんどが『くだらん』のボールだ。
毎日色んな〈何か〉がプールに降ってきて、『くだらん』にぶつかっては灰となって消えていく。
そんなある日のこと。
今日もグネグネと感情うごめくプールに〈何か〉が降ってくる。
その〈何か〉は、広い広いプールの中にたった一つだけある『ずっと大事にしたい』のボールにぶつかる。
それが《新しいかどうか》なんて、関係あるだろうか。
ましてや、《マジョリティ》だ《マイノリティ》だなんて事は「マジで“ファッキン”どうでもいい」のだ!
…と、まぁこんなふうに思えた時、僕はとても楽になれる。
「お、これで良いんだろうな」と。
それから僕は鼻をほじる手を止めて出かける支度を始めるのだ。