なぜプロ野球選手はFAで巨人に行きたがるのか?
今年もストーブリーグに入り、FA戦線が本格化してきました。国内での注目は広島・丸、西武・浅村、炭谷、オリックス・西あたりの動向でしょうか(2018年11月9日現在)。メジャーでは岩隈の去就に注目が集まり、トライアウト組では阪神・西岡やヤクルト・成瀬、巨人・中井あたりの有名所が次の所属先を探しています。
FAと言えば、常に中心にいるのが巨人です。最近はソフトバンクや楽天あたりも積極的にFA戦線に参戦していますが、今年も丸や炭谷への巨額な準備金が報じられるなど、補強に余念がありません。
その賛否は置いておいて、ここで巨人の歴代のFA獲得選手を見てみましょう。
1993年 落合 博満 内野手 中日
1994年 川口 和久 投手 広島
広沢 克己 内野手 ヤクルト
1995年 河野 博文 投手 日本ハム
1996年 清原 和博 内野手 西武
1999年 工藤 公康 投手 福岡ダイエー
江藤 智 内野手 広島
2001年 前田 幸長 投手 中日
2005年 野口 茂樹 投手 中日
豊田 清 投手 西武
2006年 小笠原 道大 内野手 北海道日本ハム
門倉 健 投手 横浜
2009年 藤井 秀悟 投手 北海道日本ハム
2011年 村田 修一 内野手 横浜
杉内 俊哉 投手 福岡ソフトバンク
2013年 大竹 寛 投手 広島
片岡 治大 内野手 埼玉西武
2014年 相川 亮二 捕手 東京ヤクルト
金城 龍彦 外野手 横浜DeNA 2015年 脇谷 亮太 内野手 埼玉西武
2016年 森福 允彦 投手 福岡ソフトバンク
山口 俊 投手 横浜DeNA
陽 岱鋼 外野手 北海道日本ハム
2017年 野上 亮磨 投手 埼玉西武
総勢24人です。2位のソフトバンクが13人ですから、いかにずば抜けた数字であるかがお分かりでしょうか。他にも小久保裕紀を無償トレードで獲得したり、グライシンガーやクルーン、ラミレスを始めとした国内他球団で活躍した外国人選手を獲得したりと、「強奪」のイメージをほしいままにしています。
「球界の盟主」とされる巨人は押しも押されぬ日本一の人気球団であり、総年俸でも常に上位の金満球団でも知られます。現役期間に限りのあるプロ野球選手は短期間でいかに稼げるかが人生を左右しますから、より年俸の弾む球団へ行きたいと思うのは当然です。人気があって、東京に住めて、お金ももらえる巨人に行きたくなるのは必然だと言えます。
と、こんな当たり前の話をするために筆を執ったのでは元巨人担当記者の名が廃ります笑。他球団の選手が巨人に行きたがる本当の理由は、年俸や人気面での好条件だけでなく、引退後の再就職を斡旋してくれる点にあります。
「コーチ手形」と言えばわかりやすいでしょう。今年も村田や杉内が引退即コーチに就任しました。相川も一軍バッテリーコーチに招聘されました。昨年も片岡、一昨年も金城が引退即コーチに就任しています。さすがに今季限りで切られてしまいましたが、江藤や豊田も長年、指導者として君臨していました。
お分かりだと思いますが、FAで獲得する際の契約条項には、年俸や起用法以外にも、引退後の待遇についても記載があるのです。これはもちろん発表なんてされませんが、ある現役コーチがこっそり(堂々と?)教えてくれました。極端な話、FA移籍後に活躍しようがしまいが、指導者としての実績があろうがなかろうが、チーム内の人望があろうがなかろうが、彼らには引退後のお仕事が約束されているのです。
これはFA選手に限ったことではなく、トレード等で獲得した選手には、コーチにはなれずともスカウト等の球団職員として第二の人生を約束してくれるケースが多いのです。
巨人主催のアカデミーや野球教室を覗けばわかりますが、一軍クラスで活躍した元選手が1~2名に加え、聞いたこともないようなマイナーな元選手も必ず付いてきます。元プロ野球選手でも引退後に野球関係の仕事に就ける人は限られていますから、マイナー選手にもこうした仕事を与えることで、お金に困って犯罪等に走らないようにさせるリスクヘッジをしています(最近は現役選手が・・ですが)。
このFAをめぐるコーチ手形がチームを弱小化させている向きもありますが、巨人は引退後の扱いの手厚さに関しても12球団一だと言えるのです。
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