振込とか振替とか(振替編)
銀行口座決済の当たり前を変えるPay by BANK開発中のBANKEYの阪本です。
今回は聞いたことはあるけど説明しろと言われると少し難しい振込とか振替の用語について全2回の2回目。振替編です。
序章:綱渡りの資金繰り
またまた銀行員2年目の話。
社会人2年目になるとお給料から住民税が引かれ始めます。すると1年目よりも若干資金繰りが悪化。クレジットカードを上手く(?)使いながらギリギリでいつも生きていました(銀行員はお給料が良いというのは都市伝説です!特に5年目くらいまでは完全な風説の流布です)
さて、毎月10日はクレジットカードの引落日(大体、4日、10日、27日が多い印象)。カード代金が引落し出来ないとどうなるか皆さんご存知ですか?
結論から先に申し上げますと最初は3日後くらいに電話がかかってきたり、おハガキが届いたりします。で、3ヶ月ほど(期間は会社による)滞納すると見事に「リスト」に掲載されます。
ある月の10日のこと、某家電量販店のクレジットカードは給与口座ではなく学生時代に使っていた口座を引き落とし口座に指定しておりました。で、そのカードで買い物をすると忘れずに同額を振込で資金移動するようにしていたのですが、たまたま入金するのを失念しておりました。
朝10時頃、そう言えば今日はカードの引き落とし日だということに気づき、入金するのを失念していたことを思い出す。
10時半頃、こっそり抜け出しインターネットバンキングで振込を実行(当時のガラケーでも使えたのです!)、入金を確認。
14時頃、遅めの昼食後に口座を確認、あれ?引き落とされてない。。。
猛烈に焦る私。敬虔な銀行員として貸したカネは返してもらう&借りたカネは返すをモットーとしており、引き落としがされないというのはポリシーに反する(というかリストに載ったらどうしよう、ああーどうなるの私の人生。もう終わりだーくらいに思ってました。当時)。
急いでカード会社に電話。
オペレータ「どうしましたか?」
阪「すいません。入金が遅くなってしまいまして、今日の引き落としがされていないのです。今、残高は入っているのですが」
オペレータ「そうなのですね。朝イチで残高が不足していると引き落としできないんですよ。」
阪「どうすれば良いですか?」
オペレータ「現時点では引き落としの結果がわからず遅延損害金等も不明なのでなんとも申し上げられないのですが」
阪「そこを何とか」
オペレータ「では、お振込頂いて処理する形ではどうでしょうか?」
阪「それでお願いします」
オペレータ「ではお振込先はみずほ銀行XX支店の普通預金XXXXXXX、XXカードとなります。行き違いで請求が行くこともありますのでご注意下さい」
的なやり取りで、15時までに振込を完了させました。入金、ご利用は計画的に。
振替について
前回、銀行振込について書きました。この記事。
その中で、プロセスを次のように分解しています。
この分解と対比しながら振替についても整理していきたいと思います。
でも、その前に振替ってなんだろう。
振替とつく言葉には振替休日、振替輸送といったものがあります。素人的な理解ですが、振替は振替前と振替後とが必ずセットになっています。
銀行では振込・振替とセットで語られたり、口座振替という言葉があったり、自動振替や引き落としといった言い換えもあります。
これらについても前後で整理すると少しすっきりします。
まず、振込・振替ですが、振込とセットで語られる「振替」は本人名義(あるいは本人が管理する家族等)の口座間での資金移動を意味しています。これは出金口座(振替前)と入金口座(振替後)の両方について依頼者である本人が把握できることから、出金は見えるけど入金は見えない振込と区別して使われています。ただ、この振込・振替の振替は基本的に振込と同じプロセスです。
口座振替(自動振替、引き落とし)も同様で、資金の行き先は本人名義の口座ではありませんが、行き先が固定で決まっている銀行口座間の直接の資金移動を指します。今回の本題はこちら。
少し脱線すると、銀行内部の事務処理は一旦全部「振替」です。振込の依頼を受けると口座から代金を振替(資金を確保)して、別途振込の電文を処理します。プロセスの話に戻ってきました。
口座振替のプロセス
振込と同じように分解してみます。
[ケース]X銀行のAさんの口座から100円を口座振替でY銀行に口座をもつBさんが回収する
依頼:Y銀行に口座をもつBさんはX銀行(あるいは決済代行会社)を通じてX銀行に対してAさんの口座からの口座振替とBさんへの支払を依頼する
資金確保:X銀行はAさんの口座から100円を確保(引落)する
通信:X銀行とY銀行との間で引き落とし結果をやりとりする
資金決済:X銀行とY銀行との間で資金を清算する
入金:Y銀行はBさんの口座に100円を入金する
1つ目の依頼は、よく見るあれです。事前にAさんの口座に対するBさんからの請求については残高があればいつ何時支払ってもOKですよ(更に銀行は責任を負いません!)という「口座振替依頼書(紙)」に印鑑を押して提出しておいた上で、Bさんは三菱UFJファクターやみずほファクター、三井住友カードなどの決済代行会社を通じて(あるいは銀行に直接)請求依頼を行います。振込では代金を支払うAさんが依頼者でしたが、口座振替では代金を受け取るBさん(請求者)が依頼者になります。
2つ目は口座に十分な資金があれば銀行は定められた引き落とし日に資金を確保します。この資金確保の手続きですが、銀行によって(あるいは依頼者と銀行との契約内容によって)朝イチ一回勝負のこともあれば、一度残高が不足していても引き落としが出来るまで1時間おきにトライしたり、残高が入金されたら即時で引き落としがかかったりと色々なパターンがあります。
昔筆者が使っていたクレジットカードと引き落とし銀行の契約は朝イチ1回勝負でした。
3つ目の通信は2つに分かれます。1つは引き落としの結果のお知らせで依頼が遂行されたかどうか、もう1つは銀行間の資金清算のデータです。少なくとも後者は全銀ネットでやりとりされることが一般的です。このプロセスでは実際のところX銀行のAさんの口座からY銀行のBさんの口座に振込をする処理と実質的に変わりません(が、資金清算のタイミングが振込とは異なるため別のプロトコルになっています)
4つ目は、振込の場合には先にBさんの口座への入金処理でしたが、口座振替の場合には先に銀行間の資金清算が実行されます(@日銀当座預金)。立替払いなし。この部分のプロセスが振込と異なるために全銀システムには振込とは独立して口座振替のためのプロトコルが用意されています。
最後の5つ目はY銀行は実際に資金を受け取ってからBさんの口座に入金を行います。
終わりに
銀行振込と口座振替。なんとなく言葉も似ているし、よく分からないですよね。ただプロセスを分解すると微妙に異なる点はありながらかなり似通ったプロセスだったりします。これらを敢えて分け続ける必要はあるのでしょうか?むしろインターネットによって相互に通信することが容易になった世の中においては、支払側からの依頼に基づく振込と受取側からの請求依頼に基づく口座振替というところを一体的に扱えないものでしょうか?
実際に世界ではこれらが一体的に扱われはじめています(請求払い=Request to Pay)。次回はそのあたりを。ではまた。