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電子決済等代行業が決済してない問題


銀行口座決済を簡単にするPay by BANKを開発中のBANKEYの阪本です。世界の決済シリーズは一旦ひと段落(本当は南米とかオーストラリアとかも調べて書きたいのですが、自分が行って体験したことのある国でないと何となく書くことに躊躇いが)、日本国内の決済について聞かれてもないことを滔々と語ります。

序章:色々なライセンス

日本には色々な金融ライセンスがあります。
例えば金融庁のHPに「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」というページがありまして。そこから抜粋しますと、

  • 預金取扱等金融機関(銀行、銀行持株会社、信用金庫、労働金庫、信用組合、系統金融機関、信託兼営金融期間)

  • 銀行等代理業者(銀行代理業者、郵便局銀行代理業者、信用金庫代理業者、労働金庫代理業者、信用組合代理業者)

  • 外国銀行代理銀行

  • 電子決済等代行業者等(電子決済等代行業者、信用金庫電子決済等代行業者)

  • 金融サービス仲介業者等

  • 金融商品取引業者等

  • 保険会社等

  • 信託会社等

  • 金融会社(貸金業者、特定金融会社等、前払式支払手段発行者資金移動業者、特定目的会社、電子債権記録機関、暗号資産交換業者)

  • 為替取引分析業者

  • 無尽業者

  • 清算・振替機関等

  • 監査法人等

とまあ山盛りライセンスが存在しています。
この他、銀行法では電子決済手段等取引業・電子決済等取扱業といった業(ステーブルコインという法定通貨に裏付けされた暗号資産の仲介を行う業者)が定義されており、これらの業を担うには資金決済法並びに銀行法に基づいて前払式支払手段発行者としての登録が必要になります。
BANKEYは電子決済等代行業というライセンスの登録をしているのですが、この電子決済等代行業が一体何をできるのかというのが今回のお話。

銀行の3大業務

銀行法(第二条2)によると銀行とは、

  1. 預金又は定期積金の受入れと資金の貸付け又は手形の割引とを併せ行うこと。

  2. 為替取引を行うこと。

と定義されています。この預金、貸付と為替は銀行の3大業務と呼ばれたりしていて、基本的には銀行の独占業務です。
一方でこの3大業務を分解して提供しようという動きもありまして、例えば貸付を業として行うための貸金業というライセンスがあったり、為替取引を業として行うための資金移動業というライセンスがあります。
で、預金だけを取り出して…というライセンスは実はなく、預金についてはまさに銀行の独占業務だったりします(ライセンスの議論においてはサービスが預金に該当するかどうかがかなり大きな論点になったりします。預金と似た言葉に預かり金という言葉もありますがこの辺りの取扱で論争が起こります)。
脱線しましたがこの記事は為替取引に注目して掘り下げていきます。

為替取引とは

さて、ようやく本題に近づいてきました。実は銀行法にも資金決済法にも為替取引は定義されていません。2001年の最高裁の判例で「為替取引」を行うこととは、顧客から、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、又はこれを引き受けて遂行することをいうと言及されて現在ではこの判例を元に議論されることが非常に多いです。
現金手渡しや現金受け渡し以外の方法で資金を移動すること、つまり送金取引の依頼を引き受けること、あるいは引き受けて遂行することを為替取引と言います。
また当然のことながら送金の依頼を引き受けるためには資金移動の前段で送金の代金を預かるといった行為が伴います。

一方で、日本では古くからのクレジットカード決済は商取引に紐づいているものとして経済産業省が所管する割賦販売法の下で発展してきました。しかしクレジットカードも消費者から加盟店に対して現金を輸送せずに資金を移動しているので為替取引なのではという疑問が湧いてきます。

決済とは

日銀のHPに決済について以下のような記載があります。

私たちは、日々、様々な経済取引(多くの場合、「お金」と「もの」や「サービス」との交換を約束し合うこと)を行っています。取引を行うと、お金を支払ったり品物等を引き渡したりする義務(取引の相手側からみればそれらを受け取る権利)が生じます。これらの義務を債務と呼び、相手方の権利を債権と呼びます。決済とは、一般的には、これら債権・債務のうちお金に関するものについて、実際にお金の受払をして債権・債務を解消することをいいます。

日銀HP:https://www.boj.or.jp/

つまり、債権債務関係をお金の支払いを通じて解消することを決済と言います。そして、決済業務そのものは基本的には商取引の一環として規制の対象外となっています(規制の対象としてしまうと商取引そのものへの影響が甚大であるため)。

電子決済等代行業とは

さて、BANKEYも登録済の電子決済等代行業ですが、日本だと圧倒的にマネーフォワードさんやfreeeさんが有名です。
ここで、電子決済等代行業について銀行法を確認してみましょう。

この法律において「電子決済等代行業」とは、次に掲げる行為(第一号に規定する預金者による特定の者に対する定期的な支払を目的として行う同号に掲げる行為その他の利用者の保護に欠けるおそれが少ないと認められるものとして内閣府令で定める行為を除く。)のいずれかを行う営業をいう。
一 銀行に預金の口座を開設している預金者の委託(二以上の段階にわたる委託を含む。)を受けて、電子情報処理組織を使用する方法により、当該口座に係る資金を移動させる為替取引を行うことの当該銀行に対する指図(当該指図の内容のみを含む。)の伝達(当該指図の内容のみの伝達にあつては、内閣府令で定める方法によるものに限る。)を受け、これを当該銀行に対して伝達すること。
二 銀行に預金又は定期積金等の口座を開設している預金者等の委託(二以上の段階にわたる委託を含む。)を受けて、電子情報処理組織を使用する方法により、当該銀行から当該口座に係る情報を取得し、これを当該預金者等に提供すること(他の者を介する方法により提供すること及び当該情報を加工した情報を提供することを含む。)。

銀行法:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=356AC0000000059

有名なマネーフォワードさんやfreeeさんは主に「二」で預金者からの委託を受けて口座の情報を提供しています。日本では「一」の銀行に対して為替取引の指示を伝達する事業者が、銀行側のシステム整備が整っていないことを背景になかなか事例が出てきていないのです。

電子決済等代行業の特徴は自社で為替取引を引き受ける資金移動業と異なり、為替取引の実行を銀行に伝達するという点にあります。原因となる債権債務関係を解消するための為替取引を電子的な方法で(銀行が)遂行するための伝達を行うことが、おそらく電子決済代行に該当するのだと思われるのですが、残念ながら今は電子決済「」代行業の「」の部分しか使われていないのが実態です。
銀行側のシステム整備の問題はありますが、BANKEYは電子決済代行業者として銀行口座決済を簡単にすることに取り組んでいきます。

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