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世界の決済シリーズ:EU編②


銀行口座決済を簡単にするPay by BANKを開発中のBANKEYがお届けする世界の決済シリーズの第四弾は前回に続いてEU編②です。

序章:ラーメン

筆者は海外に行くとその土地の食べ物を楽しむタイプなのですが、海外で日本食を楽しむタイプの方は意外といます。
国民食であるラーメンはEUでも人気で、筆者はいろいろありましてロンドン、コペンハーゲン、タリンでそれぞれ地元の「ラーメン」を楽しんだ経験があります(ヘルシンキのヴァンター国際空港には熊本の味千ラーメンがお店を出していたりします)。
日本だと最近はキャッシュレスで決済できるラーメン屋さんも増えていますがまだまだ現金決済中心なので、お酒を飲まずにラーメンだけで1000円札で足りないと「贅沢したなぁ」という気持ちになってしまいます。
一方少なくとも筆者が経験したヨーロッパのラーメンは1杯2000円を超えていましたが、贅沢をしたなぁとはなりませんでした。キャッシュレス恐るべし。

なお、現地製造のカップ麺がとにかく口に合いませんでした。日本から冷食を何とか輸出できないかと企んだことがあります。

さて、本題。本記事では、筆者が実際に体験したEU各国の消費者の決済手段について書き連ねようと思います。

イギリス

イギリス(と言ってもロンドン)は、フィンテックの中心地でもあり、強烈にキャッシュレス化が進んでいます。ポンド紙幣を持たずに普通に滞在できます。

  • デビットカード:最も普及しているとされている決済手段はデビットカードです。Apple PayやGoogle Payにも銀行が発行するデビットカードが多く登録されています。

  • クレジットカード:クレジットカードも広く利用されています。AmexやJCBは使えないことが多いです。特に大きな買い物や旅行の際に利用されることが多く、日本ほどではないですがキャッシュバックやポイントプログラムを提供しています。

  • モバイル決済:基本的に非接触決済(タッチ決済)のインフラが整備されており(メトロもクレジットカードのタッチ決済で乗れます)、Apple PayやGoogle Payなどのモバイル決済の利用も急速に普及しているとされています。また、デビットカードやクレジットカードを登録しておけば最適な還元が受けられるカードを自動的に選んで決済できる仕組みを提供するスタートアップなどもいます。

背景:イギリスでは長らく銀行が決済を牛耳っていました。デビットカードが圧倒的なシェアを有している背景です。一方で、PSD2(Payment Services Directive 2)に際して英国政府は主要銀行に対してオープンバンキングの推進を強制し、オープンバンキングが最も推進されている国とされています。これにより、銀行間でのデータ共有が促進され、新たなフィンテックサービスが登場するだけでなく、フィンテックサービスを銀行が取り入れて銀行サービスの改善も進んでいます。

ドイツ

ドイツは伝統的に現金主義が強い国で、日本のキャッシュレス決済比率が低いという主張をするグラフで大体日本の右側に登場します(最下位争い)が、近年はキャッシュレス決済も増加しています。

  • 現金:依然として多くの消費者が現金を好んで使用していますが徐々にキャッシュレス比率は高まっています。第一次世界大戦後のハイパーインフレの経験、ナチス時代のゲシュタポ(秘密警察)等、過去の歴史からも非現金決済(信用決済)に対する抵抗感が戦後80年経っても強いとされています。

  • ECカード:ドイツ特有のデビットカードで、広く普及しているとされています。VISAやMasterのネットワークを介さないため手数料が低く加盟店にも広く受け入れられています。

  • クレジットカード:他国に比べて利用率は低いものの、オンラインショッピングや旅行時には利用されます。なお、AmexやJCBはほとんど使用できません。

  • オンラインバンキング:オンラインバンキングを利用した即時振込(SofortやGiropayなど)も、ドイツで特に人気があるようです。これは、消費者が銀行口座から直接支払いを行う方法で、安全かつ迅速です。

背景:ドイツでは、BaFin(連邦金融監督庁)が金融市場の監督を行っており、消費者保護と金融システムの安定を重視しながらEU全体での規制とも調和させているとされています。一方で消費者、生活者の視点では特にプライバシーコントロールに対する強い意識もあり決済の匿名性が重視される傾向があります。

デンマーク

 デンマークは、キャッシュレス化が最も進んでいる国の一つです。

  • デビットカードとクレジットカード:デンマークでは、ほとんどの消費者がデビットカードやクレジットカードを日常的に利用しています。Dankortという国内独自のデビットカードが広く普及しており、ほとんどの店舗で利用可能で、手数料も低く抑えられています。

  • モバイル決済:デンマーク最大の銀行であるDanske Bankが開発を進めたMobilePayというモバイル決済アプリが非常に普及しています。MobilePayは、銀行口座と連携しているため、簡単かつ安全に支払いを行うことができます(裏側のインフラはDankortです)。

  • オンラインバンキング:オンラインバンキングも広く利用されており、消費者はインターネットを通じて簡単に取引を管理できます。

背景:デンマーク政府はキャッシュレス社会の推進に積極的であり、デジタル決済の普及を支援するための規制を整備しています。デンマーク中央銀行は、電子決済の安全性を確保するためのガイドラインを策定し、消費者保護を重視しています。また、デンマークはEUのPSD2(Payment Services Directive 2)の規制にも準拠しており、フィンテック企業の参入を促進しています。また、デンマークでは600万人の人口に対して59の銀行がありますがリーマンショック以降の長期の景気低迷期に支店窓口の大胆な削減を進めました。それを機に一気にキャッシュレス化が進んだとされています。なお、デンマーク国内の通貨はユーロではなくデンマーククローネです。

まとめ

EUの主要国では、キャッシュレス決済の普及が進み消費者の決済手段は多様化しています。またイギリスのようにOpen bankingによって銀行が提供するサービスがグレードアップしたといった事例も出てきています。歴史的な背景なども踏まえると消費者の行動変容は簡単ではありませんが、あの手この手を尽くしているという点は共通している部分かもしれません。ではまた。

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