世界の決済シリーズ:EU編①
銀行口座決済を簡単にするPay by BANKを開発中のBANKEYがお届けする世界の決済シリーズの第三弾はEU編①です。
序章:冬は寒い
この記事を書いているのは2024年6月。日本は梅雨ど真ん中。
北欧の初夏が懐かしい…夜11時になっても沈まない太陽、爽やかな風にクラフトビール。
お支払いは大体デビットカードで。買い物もレストランも路面電車もカード1枚で完結します。
よくキャッシュレスが進む理由として「現金の信頼性(要は偽札が多いとキャッシュレスが進む)」が挙げられます。しかし先進国の塊EUでそんなに偽札が流通しているとは少し想像しづらいです(イタリアはナポリのマフィアとか漫画の読み過ぎでしょうか)。
で、話は変わって皆さんは真冬のバルト海に入水したことありますか?
筆者はあります。
前職の共同創業者のエストニア人2人に連れられて真っ暗な港へ…外気温はマイナス15度。凍っていない海の中の方が温かい!
とかそういうのありません。本当に凍えます。寒い、しかも1日中薄暗い中で気持ちも盛り下がります。そう、北欧では冬は外に出てはいけないのです。これが実は急速にキャッシュレスが発展した最大の理由だと筆者は信じています(尚、短い夏を皆さんエンジョイするため、夏場は夏場で酔っ払って現金を持ち歩いていると危ないという反対サイドもあります)。
[今回序章が長い!]
EUの決済システムについて
EU(欧州連合)は27の加盟国と5億人を超える人口を抱えた巨大市場です。なお、ユーロを導入しているのは27加盟国のうち20カ国にのぼります(導入していないのはデンマーク、ブルガリア、チェコ、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スウェーデンの7カ国)。
この独特な市場の中で、決済システムは規制と共に発展してきました。以下に主要な決済システムと規制を紹介します。
1. SEPA(Single Euro Payments Area)
SEPAはEU全域で共通の決済方法を提供する制度で2008年からスタートしています。
手数料は国境を跨る海外送金であっても国内送金と変わらないというもので一般的な国際送金のSWIFT送金に変わってEU圏内ではリアルタイム即時決済が低コストで実現しています。
2. PSD2(Revised Payment Services Directive)
PSD2(第二次決済サービス指令)は、2018年1月13日にEU全域で施行された制度で、オープンバンキングを促進しています。主な目的と特徴は以下の通りです。
(1)オープンバンキングと第三者プロバイダー(TPP)へのアクセス:
PSD2ではオープンバンキングの概念を推進しています。すべての銀行は、APIを公開(オープンAPI化)し銀行データのアクセスと共有を容易にする必要があります。また、APIは無償で提供することが原則です。
また銀行の義務として、利用者の同意をベースに、第三者プロバイダーが銀行口座にアクセスできるようにしなければなりません。
(2)利用者保護の強化:
PSD2は、利用者保護を強化し、不正取引に対する責任範囲を明確にしました。また、より厳格な認証手続きを導入しています。
銀行にAPIを公開する義務を課すと同時に利用者保護のため、口座情報の参照(AISP)、口座からの資金移動(PISP)を行う事業者それぞれにライセンス制度を定めています。
一般的にはPSD2は、その導入時期がGDPR(General Data Protection Regulation|2016)と重なることから、利用者の主権を確保し欧州の決済市場の競争と革新を促進するために導入されたとされていわれています。
しかし、GDPRがGAFAMに対する制裁金制度と言われているように特定のプレイヤーが強大すぎる力を持たないように、独占・寡占が進まないように設定された制度だと見るのが正しそうです。
例えば決済の領域での制裁金と言えばFRB(アメリカ)がマネロン対策の不備で課すといったケースが散見されます。APIを完全公開することで取引情報が共有されマネロン対策などがEUとして強化されていくのです(国際的な金融犯罪対策機関であるFATFの本部はEUにあったりします)。
まとめ
EUの決済システムは、SEPAやPSD2などの制度により効率的かつ安全な国際送金を可能にしています。一方でEUと一括りで語るのは乱暴なのでEU編②に続きます。