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売れ残りでも大満足 -ゲームマーケット2024秋 体験記-
0.売れ残りました!
番次郎書店、バンちゃんと申します。先日開催されました「ゲームマーケット2024秋」に出展し、ボードゲームのクイズ集や4コマを頒布する、小さな個人サークルです。
参加された皆様、大変お疲れ様でした。
私は先日、X(旧Twitter)にて、こんなポストを綴りました。
https://x.com/hyacper/status/1858069082433626533
番次郎書店、撤収しました
— バンちゃん|番次郎書店 (@hyacper) November 17, 2024
やるだけのことはやりました。完売にならない量を持ち込んだので今回の結果は満足です。
帰ったら明日の4コマと出勤の支度をして早めに寝ます
お会いできました皆さまありがとうございました pic.twitter.com/hndqxdUbit
少し含みのある言葉であることに後で気がつきました。ご心配をおかけしました。
結果から先に書きますと、大多数の持ち込み数が売れ残りました。
でも、すごく気分が軽く明るい気持ちで帰宅できました。
決して負け惜しみでも強がりでもなく、本当に笑顔で、ホクホク顔でした。
その顛末を記載したいと思います。
1.去年の話から。
1.1 完売することの不安
https://note.com/banjiro_shoten/n/nd7924739b3d0
昨年の体験記は上記のnoteに記載しました。
昨年秋、私は出展7年目で初めて「持ち込み新刊すべて完売」を達成できました。
しかしながら、完売できた瞬間は本当に気が重く、達成感よりむしろ不安だけが募りました。
先の記事の言葉を引用します。
14時30分を回った頃、予定数だけ持ち込んだ4コマの新刊は売り切れてしまい、続けざまに新刊のクイズ本も売り切れてしまった。 実は、普段の反応を過小に受け取り、新刊の2冊とも注文の数を本当に少なく見積もっていた。 完売の報告は嬉しい反面、完全に自分の「読み間違え」とも言える。もっと自分の作品に自信を持つべきだったと反省した。
達成感、と書きましたが、この時の僕は「今回、もし完売できないようなら潔く創作をあきらめよう!」とまで心に秘めていました。完売と言いつつ、頒布した数は過去最低でした。
資金面ももちろんですが、何より制作中につきまとうネガティブな心の声に、幾度となく心を追いやられたことが理由のひとつです。
完売はたしかに嬉しかったですが、それは臆病者の性格があらわになったに過ぎず、少し時間をおいて「もっとアグレッシブに考えても良かったのかも」と思い直しました。
何より、拙著を求めてブースに立ち寄ったにも関わらず「完売なんです……。」と伝える申し訳なさ、そして残念そうな相手の顔、それら罪悪感に耐えきれなかった悔しさは想像以上のものでした。機会損失、なんて大仰な言葉を使わずとも、気持ちの面で心をすり減らしました。
「今年(2024年)は、絶対に完売しないぞ!」
と、周りのサークルの気持ちに反するかのように、僕は出展が決まった夏頃から、独り、そんな誓いを立てたのでした。
1.2 神頼み
今更ながら「完売を目指さない」にしても、イコール「適当に処理する」ではなく、やるべきことは全力を尽くす、その上で、持ち込む量を倍増する、と計画した上で、当日までの動きをまとめ、作戦を練ることにしました。
昨年は新刊の入稿締め切りが1ヶ月以上前だったため、入稿後に紹介動画や各地の試遊会などで積極的に新刊をアピールできました。
今年は締め切り2週間前の印刷所を探し、締め切りギリギリまで中身の作品を洗練させることにしました。
入稿後の広報期間はわずか2週間、事前試遊会は満員御礼、ポスターやチラシ、お品書きを作るとなると動画制作に時間を割くこともできず。
制作者も広報担当も自分ひとり、分担するわけにもいかない。
そして変なプライドを持ち合わせたため、この時期の「ゲムマオススメ教えて自薦他薦問いません」のポストにも(余程の理由がない限り)リポストを控えました。
そうなると残りは「神頼み」しかなく、僕は「一日三善」と称し、一日3つ以上の「徳」を積むことにした。ゴミを拾い、献血に向かい、電車で席を譲り、買い物のお釣りを募金箱に入れる、など、直前まで善行を積み上げることに専念しました。
1.3 当日の大作戦
大きな広報活動もできないまま迎えた当日の作戦はこうです。
・新刊をアピールすること
「新刊あります?」「オススメはどれですか?」と聞かれたとき、一番創作に時間を割いた新刊を「こちらです!」とお勧めできるように。
・チラシもアピールする
思わず手に取ってもらえるような、工夫を凝らしたチラシを作り、どんどん手渡していくこと。
![](https://assets.st-note.com/img/1731983728-LWAEV8BkYm2pz1sajCn6u7Tq.png?width=1200)
・ポスターやお品書きには大きな文字と数字をどんと乗せる
精微なイラストではなく、アイコンのようなイラストで遠方から視認できるようデザインしました。
![](https://assets.st-note.com/img/1731983764-XJ13zxPCWqBLwRGiDbMv92da.jpg?width=1200)
・興味を持つ方に顔を向ける
これは当日Cygnusさんからも「SNSではなく、今興味を持ってくれる方の方に顔を向けなさい」とアドバイスを頂戴した。たしかにネガティブな言葉、対応は多かったが(まして目の前が、世界中から報道陣の押し寄せるオインクゲームズやBーCAFEなどの人気エリアだったが故に、取材陣や海外来賓のあらぬ対応が。。。)僕はなるべく周りの声を気にしないよう、ボタンを押しに来てくださった方、購入された方の方に意識を傾注しました。
1.4 応援の声
応援の声を軽く見てはいけない、と痛感できたのは、参加の前に通販で購入されたにも関わらず来場しブースに立ち寄った方、テストプレイ会で何度もお世話になったにも関わらず、御礼の品を一切受け取らなかった方など、多くの方から励ましの声を頂戴できたからです。
持ち前の単純な性格ということもあり、疲労する中、なんとか笑顔の表情だけは作ることができました。
1.5 先に反省点
元気な声で閉会のアナウンスが流れる時間となり、結果、持ち込み数の半分くらいを持ち帰ることとなりました。
疲労する頭では予約の確認すらできないだろうと、事前の予約を取らず、予約しなくとも購入できるだけの体制で構えたことも功を奏したのかもしれません。
反面、同じ日に「コミティア」「デザインフェスタ」が開催され、昨年購入された方の中にはそちらに向かう方もいらっしゃったのではないか、と見積もりの甘さを実感しました。
2.手元に残ることで生まれる「余裕」
具体的な数は控えますが、頒布できた数は昨年完売した数より数冊少なめで、これに通販で頒布した分を加えると、わずかに超えるくらいでした。金額的な話はまだ整理ができていません。
その一方で、気持ちは、というと、冒頭に挙げたように、すごく気持ちに余裕が生まれたのです。強がりでもなんでもなく、もっと想像するような「あーあ売れ残ったよ」などのネガティブがあるかと思いましたが、そんな気持ちは一切湧きませんでした。
簡単に分析すると、
広報に時間を割かず創作に時間を費やしたおかげで、広報する際の「みんな見て!」の気持ちが薄れ、「目立たない中で手に取ってくださること」への感謝の気持ちが勝ったのではないか。
買いたくても買えなかった来場者の気持ちを斟酌せずに済んだこと。
「もう無い、次はどうする?」の不安があった昨年と異なり、「まだ手元にある」という安心感が、次なる頒布の手段を考える余裕を生み出せたのではないか。
柄にもなく小難しい分析となりましたが、要は「安心と余裕が生まれた」に尽きるのではないか、と結論づけました。
そんなことを考えながら、自衛隊が行軍するかのような重量の荷物を背に乗せ、それとは反するような明るく軽い気持ちで、意気揚々と帰宅の途についたのでした。
3.現在の気持ち
もちろん、今回の話を、100や200の完売で盛り上がるボードゲームイベントに当てはめられるとは考えてもいません。100冊も売れたら自己歴代トップセールスの私の本など、規模も方向性もまったく異なる話です。
今もまだ、ただでさえ狭苦しい僕の寝床をさらに圧迫するかの如く、持ち帰った新刊、既刊のダンボールが、次なる機会を今や遅しと待ち構えております。
今回の話を端的にまとめると、
完売を目標にしないことで、イベントの次の頒布先を考える余裕が生まれたこと。
欲しいときに入手できなかった相手に対する罪悪感、自己嫌悪、などのネガティブな気持ちを受け止めずに済んだこと。
例年以上に創作へ時間を割いた分、手に取る方への尊敬の念が増したこと。
何より「売れ残ったこと」に対し、卑屈に考えず、むしろ前向きに考えられる余裕が生まれたことが、自分にとって予想外の収穫でした。
次なるイベントでは、今回の経験を元に、さらに多くの方の手元に迎えられますよう。
そのためにも、今の創作にこれまで以上の愛情を傾注することが、僕にとって当面の目標であります。
ここまでお読みいただきありがとうございました。