星空の下で
山の上の公園のベンチで見上げた空は
満天の星が広がっていた
数分に一度、星が流れるたびに
ほらまたと君が指さす
願い事を三回唱えるなんて無理だねと
口ずさむ君に
何を願いたいの?と聞く
そっちは?と逆に聞かれる
星空が包む二人の間に無言が流れる
僕の願い事は今この瞬間だ
“二人きりで星を見に行く”
まだ恋とか愛がどんなものか
経験がない未成熟な僕は
叶ってしまっているのを君に伝えることが
恥ずかしいと言うこともあるが
この時間を終わらせてしまう気がして言えなくて
結局二人とも胸の内を内緒にしたままだった
次の夏
病床で君はまたあの公園で星が見たいと言った
また元気になったら連れていくよと約束した
約束はちゃんと守れたけど
僕は一人だった
お母さんに渡された一通の手紙には
あの夜聞けなかった君の願い事が書いてあった
都会の夜空は明るいから星が見えない
星空と呼ぶには寂しい空かもしれない
だから僕は前に進むために
この街に来たのかもしれない
あの夜君に思いを伝えていたら
君の願い事も叶ったのにという後悔を
時の流れが薄めてくれる日が来たときに
もう一度
山の上の公園のベンチへ花を持っていくよ