ブラッシュアップライフはドラえもんか、アベンジャーズか

先に申し上げておくと、私はバカリズムさんの大ファンであり、彼の脚本ドラマは全部見ている。加えて、私は安藤サクラさんの大ファンであり、彼女の出演作は気付く限り観るようにしている。そんな私がバカリズム脚本、安藤サクラ主演の『ブラッシュアップライフ』を期待しないはずもなく、期待に違わず面白いのである。何が面白いかというと、いわゆるループものを描いていながら、普通の人の普通の日常を通した人生を主に描いているというところである。第1回が顕著で、終盤近くになってようやく主人公麻美が死んで、ループに入るという徹底ぶり。つまり、このドラマの主題はそこじゃないと、言っているようなものである。

しかし、しかしだ。私は同時にループものやタイムリープものの大ファンでもあるため、このループはどういうものか考えざるを得ない。そしてめっちゃ気になる。気になるので、最終回を控えたこの日に、とっとと考察してみたいと思うのであります。
(以下、当然ながらドラマのネタバレ、設定バレがあります)
主人公の近藤麻美は、ある日突然交通事故で死んだ際に、来世は人間ではなく、アリクイか何かに生まれ変わると言われ、その代わり、同じ人生を誕生からやり直せると告げられ、そちらを選択することにする
…という設定なんです。これはいわゆるループものですね。しかしそうすると、時間軸はどうなってる?という疑問になる。時間軸が単一の世界とは、たとえばドラえもんがそうだが、タイムマシンで過去に遡り、過去を改変した上で現在に戻ってみると、現在は改変された過去が反映された形に代わっている。この場合、いわゆるバタフライ・エフェクト、つまり大昔で蝶一匹を殺してしまった影響が長年積もり積もって、現在が大きく改変されてしまうことが起きる(レイ・ブラッドベリの『雷の音』なんて怖い小説もありました』し、もっと問題なのは、例えば自分の親を自分が生まれる前の過去で殺してしまったら、自分はどうなるというタイムパラドックスが起きてしまうことである。タイムパラドックス問題を解決するのが、多世界解釈である。この世は多くの世界で成りたっており、また、ある行動や事象の変化によって、世界(時間軸)が分岐するという考え方だ。この解釈をとれば、過去で親を殺した瞬間に世界が二つに分岐するため(殺した世界が、元の世界から分岐)、パラドックスは起きない。この解釈をとりいれたのがゲーム『STEINS;GATE』だったり、『アベンジャーズ/エンドゲーム』だったりする。

では、『ブラッシュアップライフ』は、一体どっちの解釈なのか。実は、観測者が麻美一人である限り、過去改変を行った後の世界が元と同じ時間軸なのか、違うのかは観測できない。だから、どっちでもいい。
このままだったら問題はなかったんだけど…第7話にて、主人公の同級生が「自分もやり直している。(麻美が4周目で)自分は5週目だ」と打ち明ける。
えっちょっと待ってくれ、観測者が二人になってしまったではないか。しかも、麻美の4週目と真里の5週目は同じ時間軸らしい。ということは結局、時間軸は一つしかないのか?でもちょっと待ってください。時間軸が一つしかないとすると、麻美の4回のやり直しは、すべて誕生日から始まるんだが、それに時間的な順番なんてあるの?麻美本人はその順番を認識できてるかもしれないが、それと真里のは同期できるの?
(観測者が複数でも、彼らが一斉にループを繰り返している場合は、やはり時間軸が一つしか観測できないから問題にならない。『MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』がそうですね。

考えれば考えるほど分からなくなってしまうのだが、最終回を控えて更に重大な問題が…この世界、途中で死んでしまった人は、人生をやり直せる。ということは、このドラマ世界に存在する人たちのうち、何割かはやり直してる可能性があるよね。ところで、第8話で、友人の夏希と美穂は飛行機の事故でなくなっていることが明かされる。あれ?ってことは、この二人もやり直してる可能性なくない?

まあどうなるか、この疑問は最終回で解消されるのか、見守ることにしましょう。

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