地面師たち

話題のドラマを、遅ればせながら(ほぼ)イッキ見した。本ドラマは実際に起きた地面師グループによる不動産詐欺事件を下敷きにしたフィクションである。モデルの事件と場所を変えていたり(五反田→高輪)、金額が微妙に違ったり、会社名もちょっと変えていたりする(積水ハウス→石洋ハウス)が、その他はわりと実名を使っていたりして、日本のドラマにしてはがんばっている。そして、実在の事件に基づいているということは、この詐欺は最終的には成功することが想定される。が、それでも、物語終盤で地面師達には思いもよらぬピンチが続々と起き、こちらをハラハラさせる。ハラハラ?そう。この話では彼ら地面師たちが主役であり、いくら犯罪であっても我々は彼らにいつしか感情移入してしまっている。つまりこれはピカレスクものだ。先日感想を書いた『ソウルの春』よりも、より明確にそうだ。その要因としては、地面師を演じる役者達が魅力的というのもある。ピエール瀧さんや小池栄子さんなど、私の好きな演技派ばかり。特にピエールさんの演技は物真似が出るほど印象的だ。「もーえーでしょう!」
また、チンピラ役のアントニーもいい。私はすみません、こんなにアントニーに演技ができるとは思っていなかった。あと、敵役(騙され役)だが、山本耕司さん。いつもは冷静さを失わないのだが、今回は騙されてうろたえる滅多にないお姿も見れる。

しかし、あまりにも犯罪者寄りに描いてしまうのはまずいという判断か、親玉のハリソン(トヨエツ)は詐欺を成功させるためなら殺人も厭わない、いわばサイコパスな、思いきり悪い奴として描かれる。私はこの設定がちょっとリアリティラインを崩してしまっていると思う。まあ、リリーフランキー演じる刑事は殺され、その仇討ちで池田エライザさんが犯人を執拗に追うという動機になっているし、ハリソンを悪くしないと綾野剛さんと最後対峙が生まれないので、気持ちは分かるのだが。全体としては十分楽しめたのだが、ここはちょっと惜しいところ。

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