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「なぜ君は総理大臣になれないのか」~香川1区ナンデス~公開直前イベント~「香川1区」

私が香川1区という選挙区および小川淳也議員のことを知ったのは、今年のダースレイダー・プチ鹿島・大島新監督による「なぜ君は総理大臣になれないのか」をウォッチパーティで観てからである。この映画は、小川氏が初当選から17年にわたり取材したという、内容に惹かれて観たのだが、これはいい題材を見つけた、大島監督は「もってる」と思った。丁度2017年に、「希望の党」騒動が起き、小川氏はまさにその渦中に巻きこまれてしまい、苦悩する様子がばっちりカメラに収められた。小川氏にしてみれば二度と振り返りたくない内容だった訳で(しかもその時の選挙区では惜敗)、一言で言ってしまえば、「真摯でしっかりした政治的ビジョンを語るような人物が、否応なく周囲にふり回されることによって、彼がなぜ総理大臣になれないのかをあぶりだす」という、本人にとってはある意味残酷な内容である。だから後で出てくるように、決してPR映画ではない。とはいえ、小川氏自身や家族については、その後の行く末がやはり気になるところへ、10月に衆議院議員の任期が切れ、それまでには確実に選挙になるということと、大島監督が続編を撮影しているということをウォッチパーティで聞き、更にこのイベントの続きをぜひ香川でやりましょうという段になって、これはぜひ香川でそれを体験したい!と思うようになった。

そして総選挙投票日が10月31日に決まり、それにともなってダースレイダー氏とプチ鹿島氏が、香川1区にのりこみ、選挙戦に密着した上で投開票日の翌日にトークイベントをするという「香川1区ナンデス」の発表があると、即座にイベントチケットとホテル、便を予約。この時から、「祭」の予感があったんだろうね。しかし、対抗馬である平井氏がもともと地元有力紙の四国新聞の一族であるところに、国会中のワニ動画閲覧で話題になり、デジタル改革担当大臣(のちにデジタル大臣)に就任し、システム発注に関して恫喝ともとれる音声が公開されたり、更に岸田内閣組閣でデジタル大臣の任を1ヶ月で解かれたりと、話題にこと欠かない。さらにさらに、一騎打ちと思いきやのまさかの第三勢力、維新から町川氏が出馬。それに反応した小川氏が出馬断念を迫ると、それが報道され炎上!と、香川1区は予想に違わぬ、いやはるかに越えた「祭り」の様相を呈してきた。

そこへ最終日からダースレイダー、プチ鹿島両氏の香川上陸である。この二人は毎週金曜日、Youtube「ヒルカラナンデス(※ヒルナンデスではない)」で政治など社会をエンタメとして伝える日本では稀有な配信を行っている。政治を批判だけなら日本にもあるが、重要なのは「笑い」の要素である。アメリカなどでは普通に行われている「政治を笑うこと」が、日本ではなかなかできていない。残念なことである。そんなヒルナンデスを私は毎週楽しみにしているが、この出張版「香川1区ナンデス」では、毎晩、香川で取材したことを配信。これが祭を更に増幅させて伝える役割を果たしてくれた。なにしろ、選挙戦を取材しているだけで、毎日いろんなネタが起きるのだ。題材と、伝える能力の相乗効果によるものですかね。2日間配信で楽しんだ後、いよいよ私も香川に乗りこむ。投開票日翌日である。もちろんもう結果は出ている。意外なことに、「ゼロ打ち(開票直後に当確が出る」で小川氏の勝利が決まった後である。しかし、高松のライブ会場「sound space RIZIN'」に集まった面々(ヒルマニア)は、祭の余韻を楽しみに来ていた。ここのトークイベントは、大島新監督、さらに小川氏との共著「時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。」の著者で、選挙戦にボランティア参加していた和田静香さんも参加し、大盛り上り。この日は宿泊せざるを得なかったが、この祭をみんなと共有して楽しむことが目的だったので十分満足。選挙というものが、こんなに祭のように楽しめるというのは、今回はじめて実感できたことであった。このことは後に畠山理仁さんの著書「コロナ時代の選挙漫遊記」で再確認することになる。

しかし、祭はまだ終わらなかった、次が、その選挙を題材にした映画「香川1区」の公開である。公開前夜に、ポレポレ東中野でトークイベントが開催されるというので、参加してきた。ゲストは大島新監督、水道橋博士、ダースレイダー氏。ここで、映画の予習ネタを仕入れて本番にのぞむ。この日は終了後にダースレイダー氏の著書「武器としてのヒップホップ」の本人による即売会があったので、並んでいたところ私の直前で本が売り切れてしまった。ので、代わりにダースさんが福岡の「ダメヤ」とコラボしているカレーを買い、その箱にサインしてもらった。これはこれで貴重だと思う。その際に、「香川1区ナンデス」での四国新聞から得たファックス回答をネタに作られたTシャツ(105枚のみ販売)を所持していることを伝えたところ、よろこんでいただけた。

そして公開当日。ヒューマントラストシネマ有楽町にて映画鑑賞。ここは、小川氏がその後代表戦に出馬した際に、毎日青空対話集会を行った場所のすぐそば。内容の感想は…まず、今回の映画は、自民党の強さを撮りたいと大島監督が語っていたが、それを強く感じた。選挙戦で全陣営を追うのは普通のことだが、情勢が厳しくなるにつれて、平井陣営からは次第に敬遠されるようになる。これを、前夜の水道橋博士は、スターウォーズのダースベイダーに例えていたが、まさに最初の取材の時は大人の対応だったのに、だんだん変貌していって、取材担当の前田プロデューサーに対し妨害したり、警察を呼んだりするようになる。その変遷がばっちりカメラにおさめられていて、それが映画での面白かったことの一つ。
それはともかく、それでも監督は引きさがらない。それだけでなく、個別に取材をして自民党が強い重大な根拠2つをつかんだ。それは本作の重要な告発ポイントになっている。

  • 「平井を励ます会」が、会員組織にチケットを強制購入させている。しかも、購入が10人なのに対し、参加要請は3人。3人の参加とすると、参加しなかった残り7人分は寄付として計上しなければならない。

  • 所属組織が、期日前投票の確認を投票所のすぐそばのビルでしており、投票を終えた有権者が続々そのビルにすいこまれていく。そこで、ちゃんと組織の推薦候補に投票したかを確認する作業が行われていた。

公開前日のトークで大島監督は、「映画が公開されたら訴えられるかも」と言っていたが、おそらくこのあたりではないか。こんなことが、全国で行われているとしたら、それにより、多くの自民党僅差勝利が生まれているとしたら。

とはいえ、やはりこの映画はメインである小川本人を対象にした「ネタ」が面白い。大島監督は小川氏をして「変わり者」と評していたが、いい題材を見つけたものである。先の、維新立候補騒動のくだりもばっちり裏側が暴露されている。小川氏の焦りが伝わってきて、このあたりが本作もPR映画ではない証左なのだが。ちなみにこの時にうっかりやってきた田崎史郎氏がそのターゲットになってしまうあたりは笑いどころ。

面白くはあるのだが、前作から見ている我々には感動も用意されている。今回、2017年の選挙で破れた小豆島は重点ポイントと認識され、選挙戦がはじまってから政策秘書の坂本氏が移住して自ら演説でまわる様子が描かれ、なるほど勝利の裏にはこんな地道な展開があったのかと感心させられた(今回は小豆島でも小川氏は勝利した)が、最終日に小豆島にやってきたのは娘たち。なにしろ前作の最初は、お母さんと離れてしまうといっては泣いてしまうような子供だったのが、今やもう立派な戦士である。その姿を見ているだけでこちらはもう涙が…更に、当確の後の、長女夕菜氏の挨拶が立派すぎて、こっちも涙腺崩壊。続けて観てよかった。

ということで、140分という長さはまったく感じされなかった。むしろ、もっと長くてもOK。最初の版は4時間あったというが、4時間でも観ていられる。で、本作は、先に行った祭が起きる過程と瞬間をとらえた。香川1区や東京8区のように、祭は起こせる。それを全国に起こすための種が、まさにこの映画なのだと思った。はたして種は全国に蒔かれ、花を咲かせるのか。

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