グリーン・ナイト

アーサー王にまつわる叙事詩の一つが原作らしい。私は未読だが、そのおかげ?で、この映画は途中までは普通に観ていたのだが、最後の最後で、「あーやられたー」となった。

物語の主人公はアーサー王ではなく、甥のサー・ガウェイン。彼はアーサー王伝説でも有名な、高潔な騎士ということらしい。だが本作での彼はぐうたらで女好きで、いまだ顕著な功績を成し遂げてもいない。そんな人物として描かれている。たぶんこの物語はそのような人物でないと成立しえなかったはず。宴会に全身緑の騎士があらわれ、ゲームをしようと言う。一撃で騎士の首を斬り落としてみせろと。ただし。成功したら、今度は1年後、斬った者が首を斬られることになると。これをガウェインは引き受けるのだが、たいした覚悟もなかったに違いない。1年後、彼は騎士との約束の地に旅立つのだが、この過程が、大自然(これとてもイギリスとは思えない)や巨人などとともに美しく描かれる。これだけでもかなりいい感じ。元の叙事詩はあの『指輪物語』のトールキンによって小説化されたそうだが、『指輪物語』の映画化『ロード・オブ・ザ・リング』にも劣らない、ファンタジー表現だ。

問題はここからだ(ネタバレあり)。いよいよ緑の騎士のところにたどりついたものの、いざ首を斬られるという段になって、彼は怖気づく。その後、帰路に立った彼は、王になり、愛人に子を生ませるも、それを彼女からとりあげる。しかしその息子は戦士してしまう。彼自身も追い詰められ、いよいよこれまでか…というところで、さっきの緑の騎士との場面に戻る。つまり、このまま帰ってもこの後いいことはないと悟った彼は、今度こそ首をさしだす。そこで、緑の騎士は、「よくやった」ということを言って終わり。

つまりこれ、「胡蝶の夢」パターンですね。このパターンは知ってはいたけど、つい騙されてやられたという感じ。原作が元々こういう話だったのか?は未読なので分からないけど、見事な出来でした。

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