「思い出のマーニー」の思い出
宮崎駿 思い出のマーニーを観た
地上波でたまたまやっていたし、そう言えば以前娘が原作と全然違うから見ない方がいいとか言っていた記憶もあり、逆に興味が湧いた。
確かに設定は日本だし、ところどころ原作を思わせる風景が現れる。
原作を訪ねて
今からおよそ25年前。私と夫と娘はイギリスのノーフォーク地方のいわゆるプチホテルにいた。
日本から直接メールで予約して辿り着いたそのホテルは可愛らしく、こじんまりしていて、おもてなしが素晴らしかった。日本からの予約だということで、なぜかシェフはワサビを使った料理をアレンジして作ってくれたらしい、というおまけ付き。
ノーフォークの片田舎まで来てワサビを食べなくても、と一同思ったけれど、なによりその心づくしへの嬉しさが勝ってしまった。なんと気持ちのいいところなんでしょう。
シェリー酒が振る舞われ、小部屋で他の宿泊客とディナーを待つなんて初めてで、ドキドキしたのを覚えてる。
日本から?
あなた方もバードウォッチングに?
ここで日本人に会うのは珍しいわ
と口々に話しかけられる。
私たちはバードウォッチングではなく、湿っ地に、思い出のマーニーの雰囲気を味わいに来たのだと上手く言えるほど英語が流暢でもなかったから、スマイルして返したことを思い出す。
マーニーとの出会い
娘がまだ言葉を話す前からずっと寝る時には読み聞かせをしてきた。最初は絵本から始まったが、幼稚園くらいになると児童書を章ごとに区切りながら読んだ。
エルマーの冒険とか、ビバリークリアリーのヘンリーくんシリーズとか、ミヒャエルエンデのモモとか。
そんな中にマーニーがいた。
イギリスのノーフォーク地方にある湿っ地。文章で綴られる表現がなんとも言えない雰囲気を醸していて、決して陽気ではない、何かを暗示するかのような湿っ地を舞台に「わたし」がマーニーと出会って成長していく、そんな話。
マーニーとはいったい誰なのか、なんなのかはっきりとは明示されない。それが原作。
娘に読んだ時期はおそらく幼稚園年長さんくらいだったかもしれない。あんまり面白かったから家族全員が読んで、結果的に『いつかマーニーの場所に行ってみたい』と言っていたことが数年後に実現した。
原産国イギリスのラブラドールレトリバー(犬)にとって非常に重要なブリーダーさんを5箇所訪ね歩くためにイギリスに渡った時、ちょっとルートとは外れるけどノーフォークに行ってみようということになった。
当時でも日本人の観光客や現地で仕事をする人もたくさんいただろうに、「ここに来る日本人は珍しい」と言われる場所。
原作ではそういうところが舞台なのだ。
映画の感想
モチーフは原作に近いものだったけれど、中身は原作よりずっと具体的で見える化したものだと思った。「わたし」に起きたことは、通常ではあり得ないし不思議なことだけれど、ちゃんとお互いに繋がりを作って安心感で終わっているなあと。
ジブリっぽい。
「わたし」は根無し草ではなくて過去からちゃんと繋がっていて、そして今に感謝していることを実感できるようになっていく。壮大なストーリーになっている。
この作品はこれでいいんだなあ。比較してみちゃうと違うけど、作品として面白かったし。
そしてもう一度原作を読んでみたいなと思った。
あの湿っ地で繰り広げられる物悲しさとか怖れとか喜びとかを味わってみたいからかな。
余談ですが、昔読んだ児童書を紐解いてみるとめちゃくちゃおもしろいということに最近気がついてしまって、大草原の小さな家シリーズにハマりそうで怖いなと思っているところ。
最後までお付き合いくださりありがとうございました。