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#9 劇団四季オーディション受験。2回目の本選

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控え室に入ると、ずいぶんと人が減ったように感じた。

予選の時には、稽古場の控え室はクラシックボーカルの受験者でいっぱいで、待ち時間中に高らかな声で歌う人たちがあふれていた。

同じ高音を何度も繰り返す人や、発声練習に集中する人、携帯電話で課題曲を聴き込む人、録音したピアノの音に合わせて自分の声を調整する人もいた。

まるでオペラのような大声で外国語(おそらくイタリア語)を歌い上げる人たちがいて、控え室全体が鳥たちのさえずりのように賑やかだった。

しかし、今はクラシックボーカルの人々はほとんどおらず、高音を響かせる声は激減した。

代わりに、私と同じ『ライオンキング』の「サークル・オブ・ライフ」を歌う人が増え、地声で力強く歌う姿が目立つようになった。どうやらクラシックボーカルの人たちは予選で落ち、ポピュラーなボーカルの人たちが次のステージに進んだらしい。

控え室に最初に入ったときは、元気な鳥たちのさえずりのように、あちこちからさまざまな歌声が響き渡っていたが、時間が経つにつれて少し静かになってきた。

発声練習を一通り終えたあと、私は床に敷いたヨガマットの上に腰を下ろし、お茶を飲んで一息ついた。そして、周りをぐるりと見回す。

待ち時間が長いため、控え室にいる受験者たちの顔はすっかり覚えてしまったが、誰が合格するのかはまったく見当がつかない。

それでも、なんとなく印象に残る人はいる。

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