謎のおじいさん。
前を走る車の後部座席の中央におじいさんがすわっていた。
う〜ん。歳は70代から80代前半ってとこだろうか。
けっこう、背の高い人らしい。
座席のシートの上にしっかり頭が見える。
髪はロン毛、その色は真っ白に薄茶かグレーが混じった感じ。
（車の窓越しでよくわからないけど）
なんか、芸術家といったタイプの人なんだろうか・・・。
おじいさんは、はじめ、じ〜〜っと動くこともなく座っていた。
ところがすこしたつとなんだかそわそわし始めた。
左右をきょろきょろ見ているようだ(それも、何度も何度も）
なんだろう・・・このおじいさん。
今度は、首を上下に振っている（それも、激しく）
な、な、なんかへんだ！・・このおじいさん。
何が変って・・動きがへんだ。
(あいかわらず 頭を左右にぶるんぶるん振っている）
こんな、機敏な動きをするおじいさんは、あんまり見かけたことがない。
あ〜〜。気になる（いったい、何者なんだろう）
ちょうど、前の車が信号でとまった（チャンスだ！）
すこしずつ車を近づけてみた。
あいかわらず、おじいさんは
元気よく頭を振り回している。
おじいちゃん、そんなに頭振り回したら頭飛ぶよ(笑）
しかし、そこまでのことしかわからないまま
前の車は、走り出した。
あ〜。このおじいちゃん近くで見てみたい。
こうなりゃ、追跡だ・・。
(だって、ここでこの車見失ったら一生クイズの答え、わかんないのと一緒だ）
その車の前にもこの車の後ろにもぜんぜん他の車がいないのに
なんでこんなにくっついて走ってるんだろう この2台(笑)
赤になれ！赤になれ！
なんたって前の車が止まってくれなきゃ話になんない。
あっ、前の信号が黄色になった・・（再びチャンス到来！)
よ〜し。今度こそしっかりと見届けてやる。
謎のおじいさんの正体を・・・・。
もう、気持ちは、ドキドキ、わくわく・・に近い
(ドキドキ、わくわく劇場と名付けよう)
赤信号で前の車が止まった。
おじいさんは相変わらず頭を振っている、それもすごい速さで・・（笑）
ひょっとしてこのおじいちゃん、ロッカーなんだろうか。
車の中爆音でヘビメタの曲が流れてるとか・・？
ならばこれはヘッドバンキング？だったりとか？
車近づけたけど。やっぱりあんまりよくわからない。
・・・とそのとき
おじいさんがゆっくりとうしろをふりかえった。
(￣◇￣;)げっ‼️ このじいさん
犬だ・・・・・。
そう、このおじいさんの正体は犬だった。
確かアフガンハウンド？ってやつ。
なんだか急にドッと疲れが出た・・。
あたしの「ドキドキわくわく劇場」は
あっけなくその幕を下ろした。
そのあとはもう、このじいさん、犬にしか見えない
(いえ、そもそも犬ですから）
てか、ここは・・どこだ？
車の後をおっかけてたからちょっと回り道になった。
「帰ろ！帰ろ！か〜えろっ！」
帰りの道すがらあたしはひっそり心の中で決めた。
「犬と区別のつかないばあさんにだけはならないでおこう」(笑)