30,オルドスの夏休み
8月中旬にオルドスに戻った。粗末な部屋だがホッとできる。新学期までに旅の疲れを取っておかなくてはならない。オルドスは高原になっていて東勝は海抜1500mほど。夏の気温はせいぜい30度くらいまでしか上がらない。乾燥していてとても気持ちいい。
新学期までの10日間をボクは地元の友人とともにのんびり過ごした。昼間はバドミントンや外でやるビリヤードなどに興じた。
ある日、カシミア工場の友人たちと自転車に乗って釣りにいった。自転車で埃っぽい道を1時間。釣り場に着いた。といってもただの養殖池。鯉がいるらしい。見張りのおじさんにいくらか渡すとそのまま釣り場になる。釣れた魚はその晩の夕食になった。
オルドスは年間降雨量、200ミリから300ミリの乾燥地帯である。降る時は集中豪雨になる。わずか30分くらいで、乾いた土地が泥沼と化す。普段は水が流れていない「川底だけの川」に水が流れ込み、泥を運んで黄河へと流れ込むのである。そしてまた、乾燥が続き「川底だけの川」に戻る。
だから水は地下水に頼っている。雨が少ないので慢性的な水不足の状態が続いている。毎年、7、8月に雨が集中するらしいが、この年はあまり降らなかった。そしてよく断水になった。日本の水不足の時のように何時から何時までと時間を決めた断水ではなく、突然水が止まる。断水になる場所もバラバラである。
ある日、旅行社の友人のうちで、夕食をご馳走になることになっていたが、行ってみると、2日も断水が続いているという。もう飲む水もないと言っていた。そこで2人で水を求めて、まず、井戸に直接行ってみたが、出ない。仕方なく、何軒かのうちを回って、少しずつ水を分けてもらい、バケツ1杯分の水になった。それで料理を作ってもらったのだが、何だかとても寂しい思いをした。
このような状況なので、ここの人たちはとにかく水を大事にする。洗い物をするとき水を流しながらゆすぐということは絶対にしない。たらいに水を張って、洗剤を入れる。そこに洗い物を漬けて洗う。汚れが大体落ちたところで2つ目のたらいに移し、そこでゆすぐ。少々洗剤が残ったり、洗い残しがある場合は布巾でふき取る。衛生面では問題があるが、ここではそれだけ水は大切だ。
ボクも使った分だけ水を汲みに行かなければならないという不便さもあって、水は大切にしていた。1回分の洗濯は洗面器2杯分の水でOK。もしここの人が日本人と同じように毎日風呂に入り、生活用水を「湯水」のように使ったら、地下水はたちまち干上がってしまうだろう。人々が豊かになるに連れて、砂漠化とともにこの水問題もますます深刻になることは間違いない。
8月下旬、日本から中高生を対象にした「モンゴル体験ツアー」の一行、約20名がオルドスにやってくるという情報をつかんだ。その日は事前にホテルで待ち伏せして、彼らの歓迎会に地元の関係者とともに参加。そのままスタッフとしてツアーに同行させてもらうことになった。
日本から来た子供たちはしばらくボクのことを「日本語が上手なオルドスの人」と思いこんでいたという。うれしいやら悲しいやら。
3日間のツアーの内容はとても豊富で砂漠にモンゴル式テント「ゲル」を自分たちで組み立てて、そこに泊まったり、馬やラクダに乗ったり、牧民と交流したりした。
ボク自身にとっては貴重な経験ができたし、新学期に向けて、いいリフレッシュができた。そして、2年目の活動に向けて、色々なヒントを得ることができた。