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905日目 自尊心
2024年 4月 27日 (土)
●数日前、美容院で髪を切った。
普段は床屋でばかり髪を切っているおかげで美容院のオシャレ空間には緊張しっぱなしだったが、その甲斐もあって新しい髪型は結構周囲からの評価が高い。
それは良いのだが、一つ問題がある。顔そりをしてもらえなかったことだ。
床屋と違って顔そりができない美容院で髪を切ってしまったのでしょうがない話ではあるのだが、清潔感をそこの顔そりだけに頼っている自分としては、その機会を逃したのは大分痛い。
どこかで顔そりだけのメニューを頼めば解決なのだが、しかし顔そりだけをやってもらうとなるとどこも数千円はかかってきてしまうらしい。もちろんその技術にケチをつける気はさらさらないのだが、それでも貧乏性の自分にはその金額は手を伸ばしづらい。
色々調べて、そして見つけた、顔そりだけを700円でやってくれるらしい理容室を。
ただ、本当に700円の顔そりのメニューだけを受けてくれるかどうかは不安な所だった。そんな値段で顔そりだけの客で溢れたら商売あがったりだろう。予約ついでに電話をかけてみた所、ひとまず顔そりだけのメニューは行えるようで、無事今日の昼頃予約を取ることもできた。
これで一安心とはならないのが自分だ。確かに顔そりだけできることは分かったが、それが700円で済む確証はまだ得られていない。
自分の見間違いで値段を勘違いしている可能性は非常に高く、かといって電話越しにいくらですか?と尋ねて下品な人間だとも思われたくないという自尊心が働いてしまうため確認を取ることもできない。
予定以上の値段を請求されても勉強代と割り切ることに決めて、ええいままよと理容室の扉を開ける。
そこまで広くない店内で、二席ある椅子は既に埋まっており、しばらくの待ち時間。自分の前に髪を切っていた人がお会計の3500円をすべて100円玉で支払っていたのがめちゃくちゃ気になりつつ、席に通される。
ここの理容室、レトロな見た目と裏腹にキャッシュレスにもかなり対応していてペイペイまで使える手厚さだったのだが、それをすべて蹴って35枚の百円玉でカット代を支払っていたあの人の正体はいったい……。
お寺の人だろうか。賽銭で髪を切っている、とか。
お坊さんならスキンヘッドにするだろうし、メニュー表を眺めてみたところただの全剃りは3500円もしないようだったので、その可能性はなさそうだ。
自分の番が来た。顔を剃ってもらう流れはこれまで他の床屋で味わったのと何ら変わりはなく、そして顔そりだけのメニューは思った以上に一瞬で終わってしまう。
途中、どうして今日はうちに来てくれたんですか?的なことを訪ねられる。自分の居住地は先ほどの電話で伝えたため、少し距離の離れた所から顔を剃りに来たことはバレているのでその質問は必然だろう。問題なのは、自分が値段の安さに惹かれて遥々ここに来ているのがバレたくない、ということだ。安いメニューに惹かれて遠いところからご苦労なこってと思われたくない、そんな等身大の自尊心が働いて、気づけば「この辺に住んでる友達と会うついでなんですよ~」なんて嘘を平然と吐いてしまった。自分は噓つきだ。
あっという間に顔の毛を取り去って、いざお会計。
料金は700円だった。前情報通り、いやぁ素晴らしい。
今後もここで顔だけ剃りに来たいのだけれど、何度も繰り返し顔そりだけで利用してしまうのも申し訳ないので、しばらくの利用は控えよう。理容室だけにっ!!