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後輩へのアドバイスを頼まれた、普通の音大生
「脱寮」
—寮から出て一人暮らしすること。または卒業に伴う卒寮のこと。
寮から出ることを『脱寮』と呼ぶぐらい厳しい寮に住んでいた学部時代。
同じ門下同士で愚痴を言い合い、同期と夜までこっそり練習して怒られ、まさにアオハルな寮生活でした。
実技試験も近づき、寮生が必死に練習する1月。
試験前のピリピリしたレッスンでサブの先生に声をかけられます。
「あなた寮生よね?同じ門下の子にちょっとアドバイスしてくれない?」
人に教える、ということを頼まれるのはとても久しぶりのことでした。
音大生に指導の機会はほぼ無い。
頼まれたのは2つ下の後輩。
曲はメンデルスゾーンの厳格なる変奏曲。
私が後輩と同じ学年の時に弾いた曲であり、大学院の試験でも弾く予定の曲でした。
「あなた同じ曲弾いてるんだから何か言ってあげられることがあるわよね。」という先生の計らい。
人に伝えられるとちゃんと定着している証拠だって言いますよね。
ピアノ講師の応募は、指導経験が必要であることが多いため、学生でピアノ講師をしようと思うとなかなか難しいんです。ちょっとしたものでも、人にアドバイスする経験は貴重なものでした。
普通の自分が音大生を教えられるのか
相手は音大生。指導内容も高度なものが要求されます。
自分にそんな上手な子にアドバイスできるのか。
とりあえず先生のレッスンを真似して、まずは一回通して弾いてもらうことに。
すると意外や意外、出てくる出てくる気になるところ。
楽譜に書き込んでいきます。
”すでに上手に弾けている人”に、普通の私が伝えられることなんてあるのかと思っていたけど、ちゃんと自分の中で思うことってあるんだ。と再確認でいた時でした。
言葉にする難しさ
さて、思うことはいろいろあっても、言葉で伝えなければいけません。
上から目線になりたくも無いけど、身内に遠慮するのも違う気がする。
その時の自分は、言うことは言う。でも喋り方はいつも通りにすることを選択しました。
どのぐらい伝わったかは実際わからないけど、後輩の顔は明るく、とても納得しているように見えました。
フラットに話せる。
それが自分の伝え方、指導の一つになる。
そう感じた時でした。
音大生だからこそできる。仲間と弾くこと。
音大生だからこそ、こうやって時間を合わせてお互いの演奏を聴くことができます。
人に演奏を聴いてもらったり、何か言ったりすることはちょっと気を使うような気がするけど、誰かいないとできないこともたくさんあります。
今や東大など音大以外の大学出身のピアニストも多い中、音大に行く大きなメリットの一つがここにあります。
仲間ができること。
音大在学中のうちに、専攻・学年関わらず様々な人と繋がることで、卒業後も何かと助かります。
ぜひいろんな人と関わって、一緒に弾いて、お互いのリスペクトを持ちながら意見を言い合ってみてください。そして、それができる人を見つけてみてください♩