見出し画像

ZOOM M4と一眼カメラのタイムコード同期

要約

ZOOM M4のタイムコード出力とデジタル一眼カメラのマイク入力を3.5mmステレオミニプラグとモノラルプラグのケーブルで接続したら Blackmagic Design Davinci Resolveという映像編集ソフトで自動同期ができるようになった。

映像と音声の同期

動画の撮影をしていると、カメラ本体での録音では大変なので、外部の音声レコーダーで録音した音声ファイルと編集時に同期して利用したいということは良くある。

特に、コンシューマー向けのデジタル一眼カメラなどで撮影していると、映像の方は思いのほか綺麗に取れるのに、音声が残念でガッカリということもある。

解決方法としては、XLR入力のインターフェースを追加するなどして高性能なマイクを使うなどがある。ただ、この方法も、カメラ側の録音機能がそれほど高い訳ではないので、設定が面倒な割に思ったほど音質の向上が望めない場合もある。しかし、手軽な割に意外と音質が良くなるので悪くはない。

しかし、これで全てのケースでうまくいくかというと、そうでもないのが悩ましい所だったりはする。典型的な例でいうと、カメラから離れた場所に音源があると、カメラから長いケーブルを伸ばしてマイクを構えるなどが必要になるが、現実的な問題としてこれでは運用が難しいのだ。こうした場合にはラべリアマイクを装備した外部レコーダーが重宝される。

筆者などは、趣味がアコースティックギターの演奏で、動画の撮影というと練習の一環としての演奏自撮りが多かったりするが、こういう場合には、高音質で録音したい。雑音だらけだったりすると聞いてられないからだ。こうした場合も外部の録音機で収録したくなったりはする。

そういう訳で、動画の撮影とは別に録音したデータを編集時に組わせて使いたい要求は一定の割合であるのだ。

こうした場合には、通常、映像データと音声データを見ながら手作業で合わせていく。当たり前だが映像のタイミングと音声のタイミングを合わせないといけないのだが、中々自動で合わせてもらえないので、面倒な作業が必要になりがちである。

何がそんなに面倒なのかというと、映像データと音声データの数が一致するとは限らない。複数のカメラを使って同時に映像の収録をしていれば簡単に映像データの方が多くなってしまう。

また、録画・録音するタイミングも完全には一致しない。カメラ一台、録音機一台という構成でも、先に録音機を起動してからカメラの録画を開始すれば音の頭と映像の頭は揃わないので編集時に合わせる必要があるのだが、これも普通なら手作業で行わなければならない。意外に面倒なのだ。

と、いうことで外部の録音機で記録した音声データと映像データを自動で同期して欲しいというニーズがある。

タイムコードを使える機材の動向

映像データと音声データを自動的に同期してくれる機能について、ニーズがあるのは前述の通りなのだが、何の予備的な準備もなしにそんなことができるかというと中々難しい。

Blackmagic DesignのDavinci Resolveという映像編集ソフトでは、音声データの波形を見て動画と音声の同期をしてくれる機能というのが一応用意されてはいるのだが、筆者などは使う気になれない。この機能は、映像データと音声データが1つづつの時には上手くいきそうな気もするが、それならスレート音(ピー音)を頭に入れておいた方が良さそうだし、そんな手間をかけた挙句、どこまで上手くいくのか分からない。波形データの比較・マッチングなんて結構大変なのだ。

それで、登場するのがタイムコードというやつだ。映像データや音声データの中にメタデータとして埋め込める時刻データというやつで、原理的にはこっちの比較・マッチングのほうは簡単である。

それで、どうやってそんなものを埋め込むのかというと、やはりそういうものに対応した機器が必要になる。ただし、ちょっと前はそういった機材はとんでもなく高価だったりしたので、一般の人(筆者のこと)には手が出なかった。

ちなみに、筆者は2011年発売のCanon XF105というビデオカメラを所有しているのだが、このカメラは業務用なだけあって、ちゃんとタイムコードの入力機能が有線でサポートされている。BNC端子を通じてタイムコードを入出力できるようになっていたりするのだが、同期してくれる相手がいなくて宝の持ち腐れだった。

しかし、ここ数年でタイムコードに対応した機材が随分と増えてきた印象がある。カメラだとNikon Z6,Z7,Z8,Z30などはHDMIでのタイムコード出力に対応しているようだ。音声レコーダーのほうも、少しずつ増えてきたようで、TASCAM DR-701DなどはHDMI経由でのタイムコードに対応していたようである。現在では、Nikon Z9などは、後述するUltraSync Blueに対応している。

UltraSync Blue登場

タイムコードもHDMI経由での利用だとマイナーなままだった印象なのだが、この状況に大きなインパクトを与えたと見えるのがATOMOS/Timecode SystemsによるUltarSync Blueという製品で、Bluetoothによるタイムコード同期ができるようになるというものであった。最初にこの製品に対応してタイムコード同期する製品として登場したのがNINJAなどのATOMOS社のレコーダーだが、現在ではNikon Z9などは標準的にBluetoothを通じてUltarSync Blueとのタイムコード同期をサポートしているらしい。

録音機のほうも、TASCAM Portacapture X8やZOOM F3などがUltraSync Blueとの同期をサポートするようになってデジタル一眼カメラとの同期サポートが時々ネット記事や動画で取り上げられるようになった。

ただ、この方法でUltraSync Blueとの同期を使った撮影をしようとすると、利用できるカメラはごく限られてしまう。当然だが、録音機やUltraSync Blueなどに比べれば、カメラはずっと高価な機材だ。撮影できる映像に不満がなければ既存の機材をそのまま使い続けたいという要望は尤もなもので、タイムコードによるポストプロダクション作業の自動化による恩恵は分かっていても、そんなものの為に現在の機材を買い換えられるかと謂えばなかなか難しいだろう。

この状況はTimecode Systems社側も理解していたのであろう。UltraSync Blueと同期するUltraSync Oneという機材を用意している。この機材を通じてUltraSync Blueと同期すると、UltraSync Oneは3.5mmステレオミニプラグから音声データとしてカメラにタイムコードを送信することができる。カメラ側はマイク入力端子でこのデータを受け取り、記録する。この場合、カメラ側は通常の音声データは収録することができず、タイムコードだけが記録されるが、新しくカメラを買い換えることに比べれば、ずっと安価にタイムコード収録を行うことが可能となる。

それでも、UltraSync BlueとUltraSync One、接続用のケーブル(必要なケーブルは接続対象によって異なる)などを買いそろえると10万円コースなので、判ってはいても、なかなか手が出ない向きも多かったのではないだろうか。かくいう筆者もその一人だ。

その他のタイムコード利用例

UltraSync Blue以外のタイムコード同期の例としては、iPad(iPhone)、ZOOM F6, Sigma FPを利用した同期の例が動画で紹介されていた。これは、iPad(iPhone)のアプリを使ってタイムコードを生成し、ヘッドホン出力端子から出力してZOOM F6(録音機)とSigma FP(カメラ)と同期するというものである。

ZOOM F6もSigma FPも、3.5mmステレオミニプラグによるマイク入力端子からタイムコードを受け取って同期することが可能で、同期するタイムコードをiOSアプリで出力する。ZOOM F6とSigma FPのマイク入力端子にiOSからオーディオケーブルを繋いで逐一同期していき、それらが終わったら、任意のタイミングで録画・録音を行うことができるというものだ。

この方法のキモは、ZOOM F6もSigma FPも一旦同期してしまえば、タイムコードのマスターになるiOSデバイスからは接続を切ってしまって大丈夫という点で、撮影・録音時はタイムコードの親機であるiOSデバイスは必要ない。

この方法の欠点は、撮影・録音の度にiOSとの同期をやり直すのが基本になるので、ここをどう考えるかでこの方法の評価は変わるだろう。前述のUltraSync Blueによる同期はBluetoothによる無線通信で同期が行われるので、最初の設定は手間がかかるのだが、一旦設定が終わってしまうと撮影時の手間は少ない(殆どないはず。同期が取れてから撮影するように気をつけるくらい)。

ZOOM M4のタイムコード機能

ZOOM M4はマイク付きのポータブルPCMレコーダーで、32bit float形式による録音が可能だ。タイムコードを扱う機能は多分にオマケなのかも知れないが、有線でのタイムコードの入出力に対応している。Bluetoothによる無線同期には対応していない。

このタイムコードの入出力端子は3.5mmのステレオミニプラグなのだが、有難いことにヘッドホン/イヤホン端子やラインアウト端子などとは別途用意されている専用端子だ。

ここにステレオミニ端子のオーディオケーブルを接続して利用するのだが、Sigma FPのようなカメラであると、マイク入力端子に接続して同期すれば、後は録画/録音時にはM4と接続する必要がない。取扱説明書を読む限りではBlackmagic Micro Studio Camera 4K G2なども同様に利用できる。Panasonic GH-6 などでは、外部フラッシュとの同期用BNC端子に接続してタイムコードの同期を行うことができる。こうした、カメラ側で外部のタイムコードに対する同期機能を持っていると、その機能を利用して同期を行うことができる。

筆者のように、そんな機能を備えたカメラを持っていない場合には、外部マイク入力端子にM4のタイムコード端子からケーブルを繋いで音声トラックにタイムコードを記録して利用する。この場合には、撮影中はカメラとM4を常時接続しておく必要がある。また、カメラ側で撮影した映像ファイルには通常の音声は記録されない。

Davinci Resolveによる同期作業

上記のような方法で撮影・録音されたデータをパソコンに取り込んで、編集する作業をポストプロダクションというが、Davinci Resolveでは、この作業は以下のように行う。

  1. Davinci Resolveを起動したらプロジェクトマネージャー開くので、新しいプロジェクトを作成して編集画面を開く。

  2. 編集画面を開いたらカットページになっているので、画面下の方の「メディア」ボタンをクリックしてメディアページを開く。

  3. メディアページの左下にあるメディアプールに利用する動画ファイルと音声ファイルを登録する(ドラッグ&ドロップで良い)。

  4. 音声トラックにタイムコードを記録している場合には、該当する動画ファイルを選択して(複数同時にできるはず)右クリックメニューを開き「オーディオトラックからのタイムコードを更新」を選択する。

  5. 同期させたい動画ファイルと音声ファイルを選択して、メディアプールの左にあるビン(メディアファイルのグループ)一覧の中から現在のビンをポイントして右クリックし、右クリックメニューから「オーディオの自動同期...」を選択する。

  6. 表示されたダイアログで同期手段としてタイムコードが選択されていることを確認して「同期」ボタンを押す。

これで、同期が終わったら、動画ファイルのプレビューを再生すると音声ファイルから同期された音声トラックが挿入されており、以降の作業ではこの動画ファイルを使えば、同期済みのメディアとして利用することができる。

トラブルと解決策

実際に、ZOOM M4と手許にあったCanon XC10やCanon EOS Kiss X7iなどで試してみた。これが、同期が上手くいかない。散々、試してみて、どうもタイムコードが動画ファイルの右チャンネルに保存されているのが不味そうということに気が付いた。どういう訳だか、ステレオオーディオケーブルでZOOM M4とカメラを接続すると、タイムコードが右チャンネルに入るようなのである。

この右チャンネルにタイムコードが入った動画ファイルをどうにかして使えないかと試行錯誤したのだが、一応、Tentacle Timecode Tool(Windows版)というソフトを使って、一旦動画ファイルを変換すれば、上記の手順でDavinci Resolveで同期できることを確認した。

あるいは、何とか、動画ファイルの音声トラックを左右入れ替えたものを用意してみてはどうかと思い、これも試した。入れ替えてしまえば、あっさり上記の手順でDavinci Resolveが使える。しかし、左右のオーディオチャンネルを入れ替える作業はやってみたら思いのほか手間がかかって面倒であった。

もうちょっとなんとかならないものかと懊悩した。要するに、タイムコードのデータはちゃんと記録されている。その記録先が動画ファイルの右チャンネルなのが不味いのである。左チャンネルに記録できれば良いではないか。

それで、ステレオオーディオケーブルで、左右チャンネルを反転して接続して繋いでくれそうなクロスケーブルはないかと探してみたのだが、どうも、そんなものは存在しないようだ。ステレオミニプラグからRCAのオス端子に変換してくれるケーブル2本とRCAメス端子の中継アダプタを2つ使えばそういうことができる気がするのだが、ちょっと大袈裟な感じがする。

と、いうことで、ステレオミニプラグからモノラルミニプラグに変えてくれるケーブルを調達してみた。こういうのはクロスケーブルとは違って、あっさり見つかる。

それで、このステレオミニプラグからモノラルミニプラグに変えてくれるオーディオケーブルでEOS Kiss X7iのマイク入力端子に接続して録画・録音したデータを作成してみると、動画の左チャンネルにタイムコードが録音される。Tentacle Timecode Toolとか使わなくても、Davinci Resolveだけでタイムコードによる音声ファイルの同期を行うことができた。

接続はZOOM M4側にステレオ端子を、カメラ側にモノラル端子を挿入してみた。これで、左チャンネルへの入力になるようだ。全てのカメラでこの方法が使えるかどうかは分からないが、こんな方法で何とかなるなら有難いのではないかと思う。

最後に(ぐちともいう)

タイムコードのオーディオデータを動画ファイルの左チャンネルに入れておかないといけない...みたいな話は、Davinci Resolveのマニュアルにも記載がないし(筆者は見つけられなかった)、中々気が付けないポイントだと思う。ZOOM M4のほうのマニュアルにも、そんな感じの記載はないし、やってみて、色々試してみないと分からなかった。

筆者のように、カメラ1台、レコーダー1台のような構成で十分なユーザーには、ZOOM M4とデジタル一眼カメラによる動画撮影と音声収録は結構有難い。ZOOM F3を買って、32bit floatデータによる音声収録ができるようになったものの、動画の作成にはあまり役に立たなかったのは、手作業で動画と音声ファイルの同期をとるのが面倒だったからだ。

TASCAM DR-60markIIというのも結構前に買っていて、一時は、このレコーダーで録音したデータとデジタル一眼カメラで撮影した映像を手作業で合わせていたこともあるが、面倒なのでやらなくなった。

タイムコードによる同期ができることに気が付いて、色々検討したものの、F3+Bluetoothアダプタで UltraSync Blue に同期をとっても、カメラの方はUltraSync Oneなどでタイムコードを流してやる必要があり、前述の通りこの構成ではタイムコードの同期だけの為に10万円くらいの出費が必要になる。

ZOOM M4とオーディオケーブルによる接続で、デジタル一眼カメラなどを利用できるのであれば、ZOOM M4も含めて実質3万円くらいで済んでしまうし、機材がそんなに増えなくて済むのもありがたい。

前述したが私が動画を撮影する目的は、趣味のアコースティックギターの練習の一環として、自分で演奏する様子を録音したり、録画したりして、聞き返す、見返すということをすることである。色々試してみたが、楽器の演奏が趣味で録音しているので、音声収録はやはり高性能なものが欲しくなる。意外だったのはカメラもデジタル一眼系のカメラが良かったことである。

ギター演奏の自撮りということで色々試した。ソニーのHDR-MV1とかも買った。これは意外に良かったが広角レンズの魚眼歪が辛かった。HDR-AS300というアクションカムも意外に良かった。このカメラは意外なことに内蔵マイクで音が良く録れた。ただ、アクションカムなので映像は今一つだった。古くはZOOM Q2HDというのも買った。これも映像が残念だったので使わなくなった。業務用のビデオカメラであるCanon XF105, XC10, XC15などは、仕事の都合で買っておいた機材だが、慣れてしまうとやはり一眼系のカメラに映像は及ばない。コンパクトデジタルカメラも試してみたが、やはり音声も映像も今一つだった。スマホも手軽だがコンパクトデジタルカメラより劣る。

結局、楽器の演奏を自撮りするとなると、音声の方も必死になって聴くし、映像の方も演奏の具合を確かめるために細かいところを必死になって見返す。音質も画質も高いものが欲しくなるのはこういう理由なのだ。結果、練習の一環として撮影しているだけにしては、随分と凝った機材を使うことになった。それでも、動画撮影用に新しいデジタル一眼カメラを買うかと謂われると躊躇する。EOS Kiss X7iなどは写真趣味のためにかなり前に買ったカメラである。海外出張に行く用事が毎年あったので、行く先々で写真を撮ったりしていた時期に買い揃えた機材なのだ。持っているものの有効活用という一面もあってこれらを使っているが、ギターの演奏自撮りのために新しいカメラを買うかと考えれば、新しいギターの方が欲しくなる。目的と手段をはき違えないかぎり、こんな感じだろうとは思う。

普段は、ギターの演奏をしながら、録音だけをしていることが多い。録画しても、こんな外部レコーダーで録音したデータと同期した映像を作成することは少ない。たまに手間をかけた動画を作成したくなることはあって、上記のようなことをして動画を編集・作成したりもするが、そこまでして作った動画でも、どこかに発表することも(少なくとも今のところは)ない。楽しみの中でやることなので、どこか緩い感じなのだろう。

本稿が誰かのお役に立てれば幸いです。

いいなと思ったら応援しよう!