黒い涙

僕は、ブートジョロキア。2007年にギネスブックで世界一辛いと認定された唐辛子だ。

出身地はバングラデシュ。どれくらい辛いかっていうと、あのハバネロくんの2倍、タバスコの200倍位だから大体想像してもらえると思う。主成分のカプサイシンの刺激が強すぎて取り扱いには手袋やゴーグルが必需品だ。

ある日のこと、美しい光沢のある濃い黒色の涙の雫を見つけたんだ。聞けば、東洋製罐グループが、地球と宇宙の食の課題を解決する共同プログラム「Space food Sphere」で、2040年頃には、月面基地に1000人ほどが居住することを想定しているそうだ。

今回、月面の砂と同組成の模擬土を基にしたガラスの生成に成功したんだとか。

僕が目にしたのは、とてもガラスとは、思えない深い悲しみの色に染まっていた。

何時か、僕が月へ行くことが出来たなら、僕のこの世界一のカプサイシンの威力で、本物のお月様の涙を見てみたいと思っている。

それは、きっと、もっと美しく孤独な漆黒の宇宙のような輝きに違いないから。