ふるさとにカエル
「日本にカエル」 本日は福岡県太宰府市と筑紫野市にある国指定史跡 宝満山の山頂よりお送り致します。
解説は「宝満山ヒキガエルを守る会」名誉総裁のヒキガエル先生、実況は私、富山めぐみ製薬のケロリン桶がお送り致します。
いやあ、こうして山頂におりますと、この宝満山も結構な見晴らしでございますね、先生ッ!
確か標高829メートルありますかな。
こんな高いところまで、本当にカエルが登ってこれるんでしょうか、あっ、次々にヒキガエルたちの姿が見えてまいりました!
例年ですと5月中旬ごろから麓にある2つの池から1万から多い時は10万匹が登山に参加しますが7月初旬に無事登頂出来るものは、せいぜい100~1000匹がいいところという事ですが、やはり高低差、約600メートル、2.5キロもある道のりは、かなり過酷なものなんでしょうねえ?
今年はコロナの影響で開催が危ぶまれましたが、お陰様でこのヒキガエル登山が太宰府市の市民遺産になりまして、保護団体並び多くの関係者のご尽力を賜りこうして今年も無事に開催できて、ほっといたしております。
先生、どうしてこの様な登山が始まったのでしょうか?
はっきりとしたことは、わからないのですが、遠い昔、宝満山の麓にある2つの池にたくさんのヒキガエルが住んでいたのですが、池のカエルがお互いに、いがみ合っておったそうです。
ところが、運命のいたずらか、その中の悪いライバルの娘に別の池の若者が一目惚れしてしまったのです。
あっという間にそれぞれの一族の知るところなって、もはや駈け落ちするしか道は無いと二匹は皆の大反対から逃れるように、この山頂に身を隠したのです。それから3年、二匹は厳しい環境のなかを愛の力で乗りきってきたのですが、どうしてもふたりの子どもが欲しくなった。そうは言っても山頂には肝心の水がない。ご存じのように、我々両生類は、水がないと、どうにもなりません。
二匹は、意を決して生まれ故郷の麓の池に戻ることに致しました。帰って見ると、なんということでしょう!? あれだけいたヒキガエルが一匹も見当たらない。水辺の大岩に一体何があったのかと訪ねましたら、実は二匹が、池を去ったあと、二つの池のカエルたちは、お互いにお前たちのせいでこうなってしまったと二匹の駈け落ちをきっかけに、更に争うようになってしまい、それをご覧になっていたカエルの神、我々は、畏敬の念を込めて御(み)カエル様と呼んでおりますが、そのミカエル様が大きな八又のオロチを下界に送られて、そいつが全てのカエルを食べ尽くしてしまったということでした。
二匹は、自分達が原因で起こった悲劇に驚愕致しましたが、罪滅ぼしに二匹で力をあわせて、沢山の子どもをつくりました。
そして、最初のおたまじゃくしが立派に成人したとき、お礼にその子ガエル達をつれて、命拾いをしたこの山の頂に御カエル様の祠を建てて以来、こうして、毎年巡礼の登山が繰り返されておるということでございます。まあ、我々ヒキガエルにとりましてはここは、再生の象徴、我に帰る、生まれたふるさとに帰る場所と言えるのでないかと思っております。
そんな、物語りがあったんですね!
まあ、人間の登山者がカエルを踏みつけた靴のまんま山登りするので、そのカエルの匂いにつられて登ってるんじゃないかって言う学者さんもおられますが、あながちそれも間違っていないと私は思っております。
こうして、道なき道を命をかけて登って来るカエル達を見ておりますと、「もともと地上に道はない。歩くカエルが多くなれば、それが道になるのだ。」という言葉が浮かんでまいります。踏まれても、転がり落ちても、この山頂目指して登っていって途中で命果てた、先人の努力と情熱によって、この巡礼の道が今に続いていることを思いますと、その思いはしっかりと後世まで引き継いでいかなければと思っております。
ヒキガエル先生、お話ありがとうございました。わたくし「ケロリン桶」は、富山めぐみ製薬が販売している鎮痛剤ケロリンのロゴが入っている黄色い風呂桶なわけですが、ご覧のとおり、食品衛生法上の食器ではありませんので、最近巷の居酒屋等で流行っている、私の中にレモンサワーをいれて飲んで、ゲロッピーとなっている方々に、是非とも、この宝満山の巡礼登山をお薦め致します。
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