次がある
もしや、そこにおられるのは、コクトクラゲ様ではありますまいか。
はてな、一体どちら様で?
村正と、正重にてございます。お久しゅうございます。
おお、あの伝説の妖刀! それにしても、ご両人とも、見違えるほどに立派になられて。
以前お会いしたときは、第二次世界大戦の際、戦火から身を守るために漆を全身に塗っておりましたものですから。
どおりで、わからなかったはずじゃ。
帝の即位礼正殿の儀に合わせて漆を剥がした次第でございます。
成る程、実はわしも79年前に藤沢の江ノ島沖で昭和天皇にお会いして以来そのお人柄に魅せられ尊敬致しておった。その後崩御されてからずっと喪に伏しておったが、風の噂で、今度お孫様にあたる御方が即位されると聞いて、こうして老体に鞭打って130メートルの海底より馳せ参じたと云う次第じゃ。これも、何かの御縁。皆で一緒にご即位のお祝いに参上致そうではないか。
コクトクラゲ様、お言葉では御座いますが、即位礼正殿の儀は、既に昨年終えられてございます。
なんと! これは一生の不覚!
そう、お嘆きなさるな。
「君が世は、千代に八千代にさざれ石も岩をとなりて、苔のむすまで」
と詠まれておりまする。次回は、この村正と正重めが、必ずやお迎えに参上致しますので、どうかご安心のほどを。
村正殿、正重殿 ! かたじけない。お二方の優しいお心使い、この、老クラゲの胸にしかと刺さり、しびれましたぞ!
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