オヤビッチャの憂鬱

此処は、大阪海遊館、水槽のなかでスズメダイの一種として生きてます。

うちの名前は、オヤビッチャ。和名は、「親美姫」    沖縄方言の「あやびっち」から来てるらしい。うちの鱗の縁取り模様がまるで綾が走ってるみたいやから、この名前がついたらしいねんけど、まあ、清純派では、ないけどビッチでもないで。見てのとおり白黒ハッキリさせへんと気持ち悪い性格やけど。

親美姫なんて、うちの親見たらびっくりするで。なんてことない普通の食べてみたらちょっとイサキに似たような、おさかなさんや。そんな訳で、うちも自分が美人でないことは、ようしってる。でもな、本当に美しい人は、他の人を美しい気持ちにしてくれる人やで、ってお母ちゃんいうてたわ。

ほんとのこというたら、うちかて美人に生まれたかった。そんで、広い世界に羽ばたいて見たかった。いくらダーウインが生物は進化するいうてもスズメダイは空飛ぶ雀にはなれへんのは、わかってる。

でも、何も、志を高く持たなあかん合理的な理由はあらへんと、うちは思う。生き物にとって一番重要なのは、「生き延びる」こと。せやから、その為に、失敗を避けるっていう生き方は、臆病に見えるかもしれへんけど、堅実な選択っていうのは、生き延びるために万全を期すっていうことやから、それは全然ありやと思う。

この、日本っていう国は、世界の総陸地面積の1%以下の大きさしかないのに、全世界に起こる災害の約20%がこの国に集中して起こってるらしい。

道理で、みんな心配症やと思ってたけど、生き延びる為には当然なんやろうな。

うちの、この愚痴もなんや何時もとおんなじで全然代わり映えせえへんな。

うちらの話す「言語」は、動物の種みたいなもんかもしれへん。進化して成長出来るかもしれへんし、衰退して絶滅してまうこともあるやろな。

「種の起源」でダーウインは、「神の存在を否定するという意味における無神論ではない。」って言ってはるけど、彼は晩年キリスト教への信仰をどんどん失って行ってしまっいはった。

でも、うちには、何となくわかる。ダーウインは、神様の存在を死ぬまで信じてた。

進化し続けることも、衰退して絶滅することも、そのことに何の意味もないんやったら、ただ生き延びる為だけに生まれて来たんやとしたら、うちは、明日もまた生き延びてやる。

生き延びて、生き延びて、最後の一匹になっても生き延びてやる。




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バナナ
なんと、ありがたいことでしょう。あなたの、優しいお心に感謝