醜いあひるの子

あーあ、このまま僕も親みたいな働きアリになっていくのかなあ。

また、アリタロウ君のぼやきが、始まった。ダメよ、硬直マインドセットは。

ああ、アリコちゃん。   だって、何かすごいことをやってのけるのは、生まれつきの才能や資質がある奴だけだよ。

世界中の40%が、アリタロウ君みたいに思ってるんだから、そう考えるのも無理は無いけど。もっと、しなやかマインドセットになって、自分の可能性を信じてみてもいいんじゃない?

それに、アリタロウくん、あたしみたいに毒のギ酸がないし、触角だって、ピンと長く真っ直ぐに伸びてるし。あたし、そんなアリタロウくんが、大好きよ。

アリコちゃん、ありがとう!  僕、頑張って、立派な男になって、きっと必ずアリコちゃんを幸せにするから、それまで待っててね。

ねえ、アリコ、最近アリタロウくんと一緒のところ、全然見ないけど、何かあったの?

ああ、アリサちゃん。実は、アリタロウくん、アリガタツユムシだったの。

アリガタ、なにそれ!?

子供のときは、アリそっくりなんだけど大人になったら、キリギリスの一種のアリガタツユムシになっちゃうのよ。体も大きくなって、服装も派手なミドリ色になっちゃて。何より、羽があるから、   何処へでも行けるでしょ。きっと、もう、あたしのことなんか忘れて、どっかで、かわいい子と遊び廻ってるにちがいないわ。   やっぱり、生まれつきの才能や、資質って大事なのね...

そんなことないって!   あっ、アリタロウくんが凄い勢いでこっちに飛んでくる!

アリコちゃん、俺、受かったよ!

えっ、   アリタロウくん、受かったって何、どうゆうこと!?

キリギリスオーケストラのオーデイションに受かったんだ。あんまり自信無かったから、アリコちゃんには、受かるまでは内緒にしてたんだ。

そう、おめでとう。それで、お別れ言いに来たの?

違うよ!  ぼくと一緒にイギリスに行ってくれないか?

えっ!  でも、あたし、どうせただのアリだし...

今度は、アリコちゃんがカチコチ硬直マインドになってるよ。君と一緒だったら僕は何だって出来る。だから...

アリタロウくん!!

あーあ、アリサまだ、ここにいるんですけど。熱々のラブシーン、どうもありがとう。でも、続きは、二人っきりぎりすでやってね!