シンギュラリティーの翼
アホウドリさん、お出かけでっか?
こら、竜巻はん、えらいところで会うてしもた!、この前は、えろう御機嫌斜めで、難儀しましたがな。
ああ、あのときは、「F6」やったからな。
何ですの、それ!?
あのな、竜巻研究の世界的権威でミスタートルネードって言われてた気象学者の藤田哲也博士が、竜巻の世界基準決めはって、我々竜巻は、現在みんな、その時の気分を6段階の「藤田スケール」で、表現すんねや。
小枝が折れるぐらい腹立ってたら「F0」、列車や、トラックを吹き飛ばすぐらいむかついっとったら最高の「F6」っちゅうわけや。
どうでもエエけど、お手柔らかに頼んまっさ。今から南極まで行かなあきまへねん。
南極!? そら長旅でんな。どうしてまたそんなとこまで行きはんの?
いや、南極半島の北端沖にシーモア島て、あるんやけど、そこで、約5000万年前に亡くなったご先祖さんのお墓参りに行きまんねん。
えらい昔のご先祖さんやなあ!
ペラゴニルスっちゅうお方なんやけど、何でも翼を広げた長さが6.4メートルもあったらしい。
そらでかいな。今、飛ぶ鳥で一番大きいアホウドリのあんたの倍ほどあるやんか。 ご先祖さんは、オオアホウやったんやなあ。
大あほうやなんて、聞こえの悪いこと言わんといてんか。だいたい、ワシのこのアホウドリっちゅう名前も気に入らへんねん!
偉そうなこと言っても、人間かて、2045年には人工知能の知性が人間超えてまう「シンギュラリティー」(技術的特異点)が起きるって云う話やないか。
そうやな、「アルファゼロ」とか言う奴にはチェス、囲碁、将棋で、人間はもう歯が立たんようになってるみたいやけどな。
せやろ!? 所詮、人が持ってると思てる「自由意思」かて、脳の神経作用から生まれてくる幻想やねんから、大したことないねんて。
なんや、アホウドリのくせして難しい話しすんな、あんた! 、あんたが賢いのはようわかったから、早うお墓参り行ってき。ワシは帰って、ネットフリックスでも観るわ!