夫婦坂のシケモクババアの話
あなたはご存じだろうか
上池台四丁目2番と中馬込一丁目1番の境から環状 7号線をはさんで
北馬込一丁目12番と13番の間を上る坂道、その名も夫婦坂(めおとざか)を。
その向かい合う様子を夫婦に例えてそう呼ばれるようになったこの坂で、
私が遭遇した恐怖体験を今日は書こうと思う。
詳しい場所は以下のサイトを参考にして貰いたい
http://yj.pn/JucMbS
恐怖体験はこの坂のセブンイレブン前で起きた。
夜の24時か25時ぐらいであったと思う
夫婦坂にあるセブンイレブンからいい気分で買い物を終え、店から出た時であった
店の目の前に喫煙スペースがあるのだが
そこで一服しようと思った矢先、突然見知らぬ人物の声が聞こえた
「すいまへん、あのすいまへん」
見ると顔の窶れたお婆さんがそこにいた
唇が尋常ではないぐらいに荒れており、
赤い血の塊が唇に付着している。
私は内心、恐怖で体が震えそうになったが平常を装った
するとそのお婆さんはこう言った
「300円ありまふ?300円欲しいんでふよね。300円ありまふ?」
酔っ払っているのか呂律が回っていない
するとそのお婆さんはすぐ隣のマンション前にある、飲み物の自販機を指さしてこう言った
「あそほで買いたいんですよね、300円足りないんでふよね。300円ありまふ?」
(300円が足りない?飲み物の自販機は300円も必要ないぞ?この人何言ってんだ?)
心の中でそう思ったが、あまり相手の気に触れると危険なので
私は優しくこう言った
「え?ジュースなら120円とか150円とかで足りますよ?
300円で売っているんですか?」
するとお婆さんは少し困惑した表情を浮かべ、無言で考え始めた
しばらくするとまた元の表情になり、少し強めの声で私にこう言った
「……煙草ありまふ?煙草一本欲しいんでふよね。煙草ありまふ?」
その言葉を聞いて私の頭の中のスパコンが計算しだした
300円…煙草一本欲しい…ババア300円ゲット…一箱買える…
ババア逃げる…ババア一銭も払わずに煙草独り占め…ババア上機嫌で煙草吸う…
ババアの一人勝ち…300円渡した私に百害あって一利無し……
私は喫煙所でその婆さんにこう告げた
「煙草は吸いません」
その婆さんは度肝を抜かれた顔を一瞬見せると、さらに強気な声でこう言ってきた
「じゃあ300円は?300円ぐらい持ってるでひょ?」
私は片手に結構でかめの買い物袋を持ちながら、こう答えた
「お金は持っていません」
婆さんは苦虫を噛み潰したような顔をしてそそくさと去っていった。
私も去ろうとしたその時、コンビニから20代後半ぐらいの男性が出てきた
その男性は煙草を一本取り出し、口にくわえながら喫煙所に歩いて行く
するとコンビニの陰から先程のババアがスッと現れ、その男性にこう言った
「煙草ありまふ?煙草一本欲しいんでふよね。煙草ありまふ?」
男性もそのババアの異様な空気に最初驚いていたが、
大人しく煙草を渡した
「あぁ……はい、良いっすよ」
ババアは煙草を一本貰うと、ニタ~っとしながら
「ウィ~~ッす」
そう言って足早に去っていった。
今考えてみるとあれは
妖怪シケモクババアだったのではないだろうか
私にはそうとしか思えない
今度遭遇したら、こん棒でケツを思いっきり叩いてやろうと思う。