「建前と本音」2024/09/23
4‐1
・一人暮らしをしている。
土曜日の昼間、宅配便の予定などないのにインターホンが鳴り、話を聞くと電気料金に関する説明だったため、ドアを開けた。
・わたしはこの家に引っ越してきたばかりだった。なので今話している人も、用件は電気の契約確認なのだろうと話し半分に聞いていたのだが、話がまとまった頃に新たな契約書を提示された。
そこでようやく「あぁこの人は今契約しているプランを乗り換えさせようとしているんだ」と合点がいった。
・その日は暑かった。
アパート中を訪問していたのだろう、彼のうなじには汗が滲んでいた。
契約書を提示される際、「立ち話もなんですから」と半ば強引に玄関先に侵入され、ドアが閉まる。
・結局、わたしと彼には何かが起こる余地も無かったのだが、時折「何の関係もなかった異性が家に立ち入る恐ろしさ」を感じるのは女性だけなのだろうか、と疑問に思う。
もしわたしが屈強な男性であれば、気難しい話し方をしていれば、彼も「暑いから一旦家に入らせてもらおう」と思わなかったのではないか。
・わたしは男性用トイレの実物を、リゾートバイトをするまでしっかり見たことがなかった。
世の中の半分が呆れるほど見たことがある光景を、残り半分は深く知らないなんて、不思議なことだと思う。
・わたしは動物を飼ったことがないから、犬や猫を飼うのに毎月どれくらいの金銭的負担が生じるのか知らないし、何をすると犬(猫)が喜ぶのか、散歩にはどれくらい時間がかかるのかも知らない。
・スーパーのペット用品の棚を素通りする時、ドラッグストアの離乳食を見る時、自分の世界は狭いなぁと思う。
視野を広げるという意味も含めて、一度ペットを飼ってみたいと思うのだが、そんな理由で飼われるペットの方が可哀想だという葛藤もあり、実行には移せていない。
4-2
・7月から徐々に就活を始めた。
関心がありそうな業界の説明会を受け始めたものの、ビジネス特有の建前に辟易してしまう自分がいる。
「地元のネットワークを広げる」という名目を掲げながら、やっていることは自社のビジネスモデルを広げることであったり、「人々の生活を豊かにする」ためには、自社の製品を販売することが近道であったり。
わたしは性格が悪いので「感染防止対策」として公共の場に置いてある手のドライヤーが運転を停止していたことも「資源を守ろう」とエコクリーニング制度を導入していたホテルのことも、ついつい疑いの目で見てしまう。
・服の丈がどんどん短くなっているのも、トレンドという名の「服の省エネ化」だと思っているのだが、杞憂だろうか。
4‐3
・復学を機に、以前アルバイトをしていた塾に復帰した。
・就活も大方目途が立ち、大学卒業を控える友人が多数いるものの、友人関係はこれからも対等だと思っているし、わたしが卒業してもなお大学で勉強中の友人もいる。
なので大学生にとっては「たった」1年のことなのだが、塾生たちにとってはそうではないようで、わたしの中では小学6年生くらいの子が高校受験を目標に勉強に励んでいたり、中学生の頃に在籍していた子の大学推薦が決定していた。まるで浦島太郎のような気分だった。
・大学1年の後期に、わたしが最も熱心に(教師も人なので、どうしても熱量に差が出てしまう)指導していた生徒が中学3年生になっていた。
・彼女は小学6年生の夏に塾にやって来た。いじめを受けて学校に通えていないが、いじめっ子と同じ中学に行きたくないと受験を決意。見事第一志望に合格し、不登校になりかけながらも、家庭で英語を学習していたことが幸いし、英語の授業と部活動の時間が楽しみで、通学を再開したという。
・塾長との面談内容をまとめた紙を見ると、将来の夢に「教師」と記載があった。
わたしの人生において彼女の存在は、日本の学校教育について疑念を抱き、フィンランドの教育に関心を持ち、留学するというプロセスに大きく関与している人物なので、彼女の夢にわたしという存在が多少なりとも関わっていればいいな、と思うひと時だった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?