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日中シンクロの考え方(応用編)
この記事は以下の記事の続きです
背景をぼかしたい!
前回(https://note.com/bamtex/n/n36114ae2a175)では、日中シンクロの基本的な考え方を投稿しました。なぜ基礎編だったのか、応用があるからです。一眼カメラのように、センサーサイズが大きく、大口径(F値の小さい)レンズを使える場合、ボケを生かした表現ができます。露出について、この記事で詳しく語ることはしませんが、F値を小さくすると、ボケが大きくなるとともに、取り込む光の量が増えます。ここがポイントです。図1をご覧ください。
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F8で撮影をしていたのですが、撮影者さんは「背景をボケさせたい!」と思いました。そこで、F値を2.8に小さくします。F8→F2.8にすると、取り込む光の量は3段分、つまり2^3で8倍になります。するとどうなるか、露出は8倍になるため、画像1の4段目のように、なります。背景の露出は800になることは直感的にわかると思いますが、被写体の露出は450になりました。なぜかというと、ストロボを当てる前の露出が8倍されるからです。これにストロボの露出(50)を足すことで、450になります。
シャッタースピードを上げられるか
ここで、適正露出にするにはどうすればいいかを考えます。全体の露出を下げるために方法は2つあり、ISO感度を下げるか、シャッタースピードを速くします。
今回はISO感度をベース感度(これ以上は拡張感度にしないと下げられない)とすると、シャッタースピードを下げないといけません。
被写体の露出はストロボで調整できることを考えると、背景の露出に合わせます。800→100にしたいので3段分シャッタースピードを上げます。すると、図2のようになります。
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適正露出にできました。めでたしめでたし。
と言いたいところですが、ここで違和感を感じた人は勘がいいです。「おかしいぞ?」と感じた人は、前回の記事をきちんと覚えていてくれているということです。どこがおかしいかまでわかる人はこの記事を読み進める必要はありません。
この一番下の段で、どこがおかしいかというと、シャッタースピードです。別の記事(https://note.com/bamtex/n/nc26684e1ed4e)で、同調速度という概念を書きましたが、覚えているでしょうか。方法論だけでいえば、ストロボを使用した撮影は同調速度(今回は1/200とします。)以上のシャッタースピードでは撮影できません。(ハイスピードシンクロは考えないものとします。)
※閃光速度や同調速度の関係で実際は400+50になりませんが、同調速度が無限に速く、閃光速度が無限に短い場合とさせてください。グローバルシャッターを搭載したカメラでは450になります。
ここでどういった機能が求められるかを考えると
・シャッター速度を落とさずに
・露出を下げる
という機能が必要になります。その課題を解決するのがNDフィルターです。NDフィルターは簡単にいえばサングラスのようなもので、レンズに取り付けることで、全体の露出を下げることができます。
リンク
NDフィルターはND○といった種類があり、○には2^nの数字が入ります。例えばND8とあれば、全体の露出を1/8、つまり3段分下げることができます。
今回はF値を3段分明るくしたので、3段分減光できるND8のフィルターを使うことを考えます。
NDフィルターを活用する
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NDフィルターはレンズを通す光を減衰させるため、ストロボ光も減衰します。なので、露出は図3の3段目のようになります。すると、背景の露出は100になりましたが、被写体の露出が足りていません。今ストロボの光量は1/32なので、NDフィルターで三段分下がった補正をするために、ストロボの光量1/32→1/4(3段分)強くします。図4をご覧ください。
ストロボの光量で調整する
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これで、被写体、背景ともに露出を100にできました。めでたしめでたし。
作例
以下に作例をいくつか上げていきます。
※現像をしているので御了承ください。
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いかがでしたでしょうか!
今回は簡略化して概念を理解しやすくするために、同調速度や閃光速度については考慮せずに考えました。日中シンクロのポイントは、最高同調速度以下のシャッタースピードで、ストロボを使うことです。実際のストロボは、光量に限界があるため、ここまでうまくいかない場合も多いですが、案ずるより産むが易し、どんどん練習してみましょう。
前回の記事でも書きましたが、とにかく練習することに勝る上達方法はありません。ただし、概念を知っているか上達速度に大きく影響します。
追記
NDフィルターの選び方ですが、基本的にはND8かND16を買うのが良いと思います。多少画質に影響があってもいいのであれば、可変式のNDフィルターもお勧めです。特に練習では露出の関係を掴むのにいいかもしれません。
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