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ディジュリドゥは生きている? 2


ディジュリドゥはどう作られるのか?

オーストラリアでアボリジナルの人々がどんな風にディジュリドゥを作るのか、まずはその環境を見てみましょう。

オーストラリアのトップエンドでは、主に乾季(5月~10月)にディジュリドゥが作られることが多いです。湿度が80%以上になることもある雨季(11月~4月)にくらべ、気温も湿度も低い乾季は作業面においても、木が水を吸っておらず木材加工の面でもディジュリドゥ作りに適した季節といえるでしょう。

[乾季のトップエンドのブッシュ]ブッシュは日本語では疎林と訳され、「樹木がまばらに生えている林」という意味で、日本の鬱蒼とした森とは違った雰囲気です。地面に陽の光が当たっているのがわかります。

ブッシュでカットされたユーカリは含水率100~200%で、放置すれば1時間後には小口面からクラックがスタートします。ブッシュで樹皮をはがしてシェイプまで進める時もありますが、1日置いた翌日に加工をスタートすることもあります。そんな場合でも樹皮と白太の間は水でビチャビチャになるほどの生材状態です。

[木材の乾燥プロセス]木の繊維は内腔とその外側の細胞膜で構成されています。内腔の中を流動する自由水と、細胞膜と結合した結合水がどのようなプロセスを経て乾燥していくのかがわかります。外気とバランスが取れた「気乾状態」にまでいたれば、ディジュリドゥにとって安定した状態と言えるかもしれません。生木から気乾状態までを急速に進んだ場合、クラックが起こりやすくなります。

一般的に、洋の東西を問わず木を楽器作りに用いる場合は、適した含水率になるまで木を寝かせます。アボリジナルの人々は木を寝かせることはほとんどしません。狩猟採集という半移動生活の中では、一つの楽器を一生使い続けるという感覚ではなかったからなのかもしれません。

完成したディジュリドゥはどうなるのか?

樹皮をはがして不要な厚みを削って完成したディジュリドゥは、かつてはそのままか、オーカ(顔料)でペイントされて使われてきました。現在ではクラックをふせぐために木工用ボンドを塗った後に、オーカかアクリル絵の具でペイントされることが多いです。

木工用ボンドを塗られたことで木材表面からの水分の揮発は、生木の状態よりもゆるやかになります。これによって急激な乾燥を避けることができるようになり、ぼくらの手元に届くことになります。

[カビだらけになったイダキ]バブルラップの中で黒カビだらけになったイダキ。水洗いしても、木工用ボンドの中でカビが発生しているためカビを取り切ることができませんでした。できたてのイダキは生材状態(50%)と繊維飽和状態(30%)の間くらいの含水率じゃないかなと思われます。

ですので、できたばかりのディジュリドゥは外気とバランスが取れて含水率が安定する「気乾状態(15%)」になるまで時間がかかります。今までに送ってもらったディジュリドゥが、バブルラップの中で黒カビだらけになったことが何度かありました。

それを機にEarth Tubeではオーストラリアから届いた楽器をすぐに販売することはせずに、日本の外気の湿度と平衡を取る「気乾状態(15%)」になるよう、エアコンを使わない環境でしばらく自然乾燥させるようになりました。

次回「ディジュリドゥは生きているのか?3」でこのシリーズ最終回になります。


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