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ディジュリドゥとフィールドレコーディング ー 録音機材小史

1. はじめての録音機材は「MDレコーダー」

ぼくが一番最初にオーストラリアに渡航したのは2000年で、ディジュリドゥの音を録音するのに選んだ機材は当時隆盛をほこったMDレコーダーでした。プラスチックケースの中にCDに似た録音媒体が入っていて、テープレコーダーからデジタル録音できる画期的なメディアでした。

[MDディスク]SONYが開発したミニディスク。iPodやCD-Rが登場するまでは自分で編集できるメディアとして活躍しました。ぼくはもっぱらHHBのプロフェッショナルミニディスクでした。小さすぎてラベルに文字を書くのがかなり厳しかったことを記憶してます。

それまでは本格的なフィールドレコーディングをするには、デンスケと呼ばれた大型のカセットレコーダーやナグラに代表されるオープンリール録音機が使われ、グレイトフル・デッドのファン「グレイトフル・テーパーズ」がライブ録音をし、数々のブートレグLPが発売されたのは音楽ファンには広く知られています。

重くてでかい機材が手の平にのるMDレコーダーと、オーディオテクニカの安いステレオマイクと組み合わせて、バッテリーと単三電池1個で駆動するこの機材は、画期的に便利でした。

その時に持って行ったMDレコーダーはキャサリンで出会ったアボリジナルに請われて、マイク付きで彼のディジュリドゥとクラップスティックと交換したのでした。

[2000年にMDレコーダー&マイクと交換したディジュリドゥとクラップスティック]名字は失念してしまったがセドリックという名前のアボリジナルの方で、かなりの凄腕のペインターでした。このクラップスティックは今だにぼくのメイン楽器です。


2. DATレコーダーの導入

翌年2001年、北東アーネム・ランドのイダキマスターD. Gurruwiwiを初めて訪れることが決まり、よりグレードアップした機材としてDATレコーダーと単一指向性のステレオマイクRODE NT4を買い、勢い勇んで現地を訪れたのでした。

[SONYのDAT WalkmanとRode NT4]エヴァンゲリオンの碇シンジくんが使っていたS-DAT(架空の機材)はぼくが使っていたSONYのTCD-D8と似ています。電池を入れるとズッシリと重く、スマホ5台分くらいの重量感と、マイクも重かったので機内持ち込み荷物は一眼レフカメラ&レンズと録音機材とPCで激重でした。

MDは軽くて便利だったんですが、ディジュリドゥを録音するには音域が狭く、あまり納得できる音質ではありませんでした。また、せっかく録音したデータがディスクエラーなどで飛ぶってこともありました。

DATの優れた面はCDのサンプリング周波数44.1khzを超える48khzでデジタル録音できる点と、磁気テープが比較的安全という点でした。

ですので、イダキマスターと出会った初期の音源はすべてDATで録音し、今でも保管してあります。

思い出深いのは彼の兄のソングマンAlfred G. Gurruwiwi(故人)のもとへ連れていってもらった時の録音です。彼はイダキを持ってくるのを忘れて、なんと歌の伴奏をすべてマウスサウンドのみでやったんです!

あまりの出来事に興奮したぼくは終始彼の口元にマイクを向け続け、マウスサウンドを30分ほど録音したのでした。


3. リニアPCMレコーダーへ

アーネム・ランドでDATでフィールド録音して、日本に帰ってその音を聞いて学びなおすというパターンは長く続きました。けれど決定的なのがデジタル録音しているにも関わらずパソコンに取り込みにくいという点で、主にアナログな使い方しかしてなかったというの難点でした。

そこにICレコーダーをより発展させたリニアPCMレコーダーが登場。マイクが内蔵してあり、外付けでステレオマイクも接続でき、フィールド録音に打って付けの機材で、すぐにこちらへアップデートしました。

プロではないので、本格的なマルチトラック録音はしませんし、記録用で音質の良いものと考えれば安価で入手できて軽量で小回りがきくリニアPCMレコーダーを持ってオーストラリアに行くのはおすすめです。

[Zoom H1 essential]現行のPCMレコーダーの最安値、定価12,500円で内蔵スピーカーまで付いていて、マイクロSDXCカードは1TBに対応してるので、容量を気にせず録音しまくれます。MDに比べるとスーパー便利な時代になったなぁ~。

スマホで録音するという方法もポピュラーですが、やたら音が圧縮されますし、スマホのメモリーも食うので、フィールドレコーディングにはぼくはあまりおすすめじゃないです。

PCMレコーダーの導入により、USB接続でパソコンに簡単に取り込むことができてすごく便利になり、録音してきた音源をデータ化しやすくなりました。しかしその後、PCで波形を見ながら編集作業をする中で、ある驚くべきことに気づくのでした…….。


次へ続く


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