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【新SO開発記】 No.6 租特法リサーチ(その2) #新SO
<バックナンバー>
No.1 法改正のポイント&チーム結成
No.2 コンセプト
No.3 論点&リサーチ事項
No.4 契約書 & 要項の叩き台作成
No.5 租特法リサーチ(その1)
新租特法第29条の2第1項第2号の改正点
さて、どこが変わったのかよくわからなかった新租特法第29条の2第1項第2号でしたが、財務省に問い合わせ、とうとう謎が明らかになりました(ご担当者様、ありがとうございました。)。
なんと、やはり2号そのものには改正はありませんでした。
二 当該新株予約権の行使に係る権利行使価額の年間の合計額が、千二百万円を超えないこと。
しかし、ここで用いられている
「権利行使価額」
の定義が第1項柱書但書の改正によって変更されています。
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第二十九条の二第一項ただし書中「次項において「権利行使価額」という。)」を「次項第三号において「権利行使価額」という。)(当該特定新株予約権に係る付与決議の日において、当該特定新株予約権に係る契約を締結した株式会社がその設立の日以後の期間が五年未満のものである場合には当該権利行使価額を二で除して計算した金額とし、当該株式会社がその設立の日以後の期間が五年以上二十年未満であることその他の財務省令で定める要件を満たすものである場合には当該権利行使価額を三で除して計算した金額とする。以下この項(第三号を除く。)及び次項第三号において同じ。)」に改め、同項第六号を次のように改める。
改正案だけだとわかりづらいので、つまりどうなったのかという改正後の但書の法文を示すと以下のとおりです。
ただし、当該取締役等若しくは権利承継相続人又は当該特定従事者(以下この項及び次項において「権利者」という。)が、当該特定新株予約権の行使をすることにより、その年における当該行使に際し払い込むべき額(以下この項及び
次項において「権利行使価額」という。)次項第三号において「権利行使価額」という。)(当該特定新株予約権に係る付与決議の日において、当該特定新株予約権に係る契約を締結した株式会社がその設立の日以後の期間が五年未満のものである場合には当該権利行使価額を二で除して計算した金額とし、当該株式会社がその設立の日以後の期間が五年以上二十年未満であることその他の財務省令で定める要件を満たすものである場合には当該権利行使価額を三で除して計算した金額とする。以下この項(第三号を除く。)及び次項第三号において同じ。)と当該権利者がその年において既にした当該特定新株予約権及び他の特定新株予約権の行使に係る権利行使価額との合計額が、千二百万円を超えることとなる場合には、当該千二百万円を超えることとなる特定新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益については、この限りでない。
読みづらい!
読みづらすぎますが、順番によく読んでいきましょう。
第二括弧書
まず、「権利行使価額」を定義する第二括弧書があります。
ただし、当該取締役等…が、当該特定新株予約権の行使をすることにより、その年における当該行使に際し払い込むべき額(以下この項及び
次項において「権利行使価額」という。)次項第三号において「権利行使価額」という。)
ここまではわかりやすいかと思います。
第三括弧書
しかし、この次になんと第三括弧書が連続して挿入されているのです。
(当該特定新株予約権に係る付与決議の日において、当該特定新株予約権に係る契約を締結した株式会社がその設立の日以後の期間が五年未満のものである場合には当該権利行使価額を二で除して計算した金額とし、当該株式会社がその設立の日以後の期間が五年以上二十年未満であることその他の財務省令で定める要件を満たすものである場合には当該権利行使価額を三で除して計算した金額とする。以下この項(第三号を除く。)及び次項第三号において同じ。)
これは弁護士から見てもなかなか珍しい規定方法です。
括弧書の次に連続して括弧書が来ることはほとんどありません。
そしてこの第三括弧書は再び「権利行使価額」の定義をしています。
しかも2種類も定めています。
つまり、「権利行使価額」の定義は今回の改正によって3つに増えたのです。
権利行使価額の上限が増えたのではなく、権利行使価額の定義が3つに増えた、という建付になっているのです。
「権利行使価額」の定義のまとめ
以上をまとめると以下のとおりになります。
1つ目の定義
租特法第29条の2第1項及び第2項第3号においては、「権利行使価額」は
当該取締役等…が、当該特定新株予約権の行使をすることにより、その年における当該行使に際し払い込むべき額
を意味します。
2つ目の定義
設立後5年未満の会社の場合は、租特法第29条の2第1項(第3号を除く)及び第2項第3号においては、「権利行使価額」は
当該権利行使価額を二で除して計算した金額
となります。
3つ目の定義
設立後5年以上20年未満の会社でその他の財務省令で定める要件を満たすものである場合は、租特法第29条の2第1項(第3号を除く)及び第2項第3号においては、「権利行使価額」は
当該権利行使価額を三で除して計算した金額
となります。
小括
このように、第1項柱書但書の「権利行使価額」の定義が変更されているため、2号そのものには改正がなくとも、2号で用いられている「権利行使価額」の意義に改正がハネてくる、という理屈のようでした。
更なる疑問
ただし、このような説明にも疑問がないわけではありませんでした。
というのも、注意深い方であればお気づきになったかもしれませんが、第三括弧書はよく読むと「権利行使価額」の定義を定めているものとは読めません。
第三括弧書はあくまでも「その年における当該行使に際し払い込むべき額」にかかっています。
ただし、当該取締役等若しくは権利承継相続人又は当該特定従事者(以下この項及び次項において「権利者」という。)が、当該特定新株予約権の行使をすることにより、その年における当該行使に際し払い込むべき額(以下この項及び
次項において「権利行使価額」という。)次項第三号において「権利行使価額」という。)(当該特定新株予約権に係る付与決議の日において、当該特定新株予約権に係る契約を締結した株式会社がその設立の日以後の期間が五年未満のものである場合には当該権利行使価額を二で除して計算した金額とし、当該株式会社がその設立の日以後の期間が五年以上二十年未満であることその他の財務省令で定める要件を満たすものである場合には当該権利行使価額を三で除して計算した金額とする。以下この項(第三号を除く。)及び次項第三号において同じ。)と当該権利者がその年において既にした当該特定新株予約権及び他の特定新株予約権の行使に係る権利行使価額との合計額が、千二百万円を超えることとなる場合には、当該千二百万円を超えることとなる特定新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益については、この限りでない。
むしろ、第三括弧書においては
「当該権利行使価額を二で除して計算した金額」
などと「権利行使価額」という用語を使ってしまっています。
定義語の中に定義語を含むことは典型的なトートロジーであり許されませんので、第三括弧書は素直に読めば「権利行使価額」の定義を定めている訳ではないことになるように思われます。
そうだとすれば、結局2号にハネてくる改正はないことになってしまいます。
この点はもう一度問い合わせをするなりして確信を得ておく必要があると感じました。
皆様はどう思われますでしょうか。
というわけで、租特法リサーチ編はもう少し続きます…!
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(文責:弁護士 五十嵐将志)
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