石原夏織 Starcast/わざと触れた。 行間に輝く星々は君だ。君そのものなんだ。

※2022/03/15 一部表現を修正

キミのおかげで今日がすき。

本日も石原夏織さんのニューシングルの感想を書き連ねていきます。痛いだなんて思わないで、ヤバい奴だなんて思わないで、竹ってこんなやつなんだよな・・・といつもどおりの時間をお過ごしください。

心の距離

「”心の距離”が近いアーティストになりたい」
「”心の距離”をテーマにした楽曲を」

 心の距離。それはStarcastのリリース情報において、必ず現れるキーワード。それほど強く強く、この言葉を選んだのは何なのか。彼女の中で何が変わったのか。この曲に向き合えばそれがわかる気がした。だから何度も何度も繰り返し聴いた。穴が空くほどインタビューを読んだ。それでも人の心はわからないし、こうであってほしいと言葉にすればそれは押し付けになってしまうかもしれない。でもこの感情の揺れ動きそのものがStarcastを生み出したという結論に辿り着いた。この曲が「こんな時代だから」生まれたのなら、「こんな時代」にも感謝しよう。

わざと触れた。

”夏が終わって ”恋”を迎える ah”

第一声の発声で確信した、今日こそ勝つぞ!!
演じる役では負けヒロインがすっかり定着した(?)夏織ちゃん。そんなヒロインも夏織ちゃんも大好きだけど、今日こそ勝ってほしい…。とテレビの前で唇を噛む日々に希望を与えてくれる曲がついにやってきた。

HoneWorksの楽曲は親しみやすく、メロディに若々しさ、瑞々しさを感じる。とりわけ楽曲から感じるのは文化祭、体育祭、面倒なことや、クラスの色々。(先入観もあるかもしれない)ささやかなロマンスのチャンスはたくさん。うう…古傷が…。(違う)

”好きの矢印 真っ直ぐ飛ぶのに…”

ストレートな歌詞はストレートに受け取ろう。胸を締め付けるのは思い出でも、今している体験でも、ぼうっとしてたら忘れてしまいそうになる甘酸っぱさ。いたずらっぽく、ときに戦略的に、女の子はしたたかで、単純だ。(だって歌詞の中でそう言ってるからね。他意はないよ)

1番「指先わざと触れてみたけど…」つれないね…
2番「握られてる右手はずっと このままがいいな」いわゆる事故で手つなぎ案件かな?
ラスサビ「指先わざと触れた瞬間 優しく君の指先が絡んだ」!!!

ハニワ、歌詞でこういう事するのやるってわかってても、やっぱりキュンキュンするね。胸が高鳴る。呼吸が乱れる。やったね!おめでとう!見守ってきた友だちの恋の成就を皆で祝す。ハッピーだ!

恋!が!し!た!い!!

Starcast

 先行配信で何度も聴いた。何十回も何百回も。聴けば聴くほど姿かたちが変わって見える(聴こえる)、どんな人のどんなシチュエーションにもどんなときにも、当てはまるように感じるのはインタビューにもあるように、やはり「行間」にあるのではないか。今回もとても各媒体のインタビューが良いので、「答え合わせ」はそれぞれインタビューを読んでほしい。

今日は間違ってもいいから、僕がつないだ星と星、僕の星座を披露しよう。

解釈はひとつじゃない…よね。

心の距離を点Aと点Bの距離、惑星”ボク”を中心に惑星”キミ”への距離と例えて測ってみる。何キロメートル、何光年。その星はお互いに動いている、激しく。測りたくて、「じっとしてて」って言っても、言うことを聞かない子供のように。距離を正しく測るためには、「心の距離」を嘘くさくしないためには、送る側も受け取る側もお互いに「測りたい」「測ろうよ」ってぴたりと準備をしないといけないと思っている。でなければこんなにも強く正確に作用しない。今がこの思いを届ける時だって選んでくれたことが嬉しい

”街並みが斑らに溶けてく夜”

と歌詞にあるのに、映像(MV)には一切そういった描写はない。このときボクらが想像する街並みは、ボクらそれぞれが暮らす街、暮らす家、通う学校、働く職場から見える景色に置き換わる。曲が始まって10秒足らずで、ボクらはそれぞれにもう違うものを視ている。雨模様、うまくいかない鬱屈した日々。窓の外、現実をじっと見つめる姿。ぐっと抑えた声には、我慢の色、諦めの色、そして微かな希望の色が滲んでいる。街並みを滲ませているのは本当に雨なのか?それは自分自身の気持ちが自分の見る景色を滲ませているのではないか?

”キミと同じことがいいな”

ポツリと漏れたその言葉は窓をそっと曇らせただろう。そこにキミは指でなんて文字を、あるいは絵を書くのだろう。

叶うかな、叶わないかもな。願いを祈るときに絶対に叶う!と確信を持って祈れる人は強い人。叶えたい、届かせたい、と強く願い、言葉にできる強さを持った人のそばには、魔法のように人が集まってくる。ときには辛いことや、悪いことも近寄ってくるかもしれない。でもキミを守ってくれるのも、キミの”祈り”に引き寄せられてきた人たちなんだよ。

”止めないでね、揺らし続けていてね”

キミが迷ったときは、ボクたちが助けに行く。
ボクが迷ったときは、キミが助けに来てくれる。

そこにはキミとボクの間に架かる揺るぎない「信頼の橋」が北極星のように輝いている。「もうじゅうぶん待ったよ。」「もうすぐだよ」振り子が揺れるのを数えながらも、希望を滲ませそう歌い切れるのはそのおかげではないだろうか。

そんな思いを胸に掻き抱きながらたどり着いたサビに高らかな歌声が響き渡る。これまで降っていた雨や雲が全て過ぎ去ったあとの澄んだ空のように。距離を測り続けていた惑星”キミ”に対してここからは生身の”君”がすぐそばにいるように感じた。肩と肩、手と手が触れ合うような距離で、星と星を指差して「あれが惑星”キミ”で…あれが惑星”ボク”で…」。君が勝手に星と星を結ぶから、むちゃくちゃな星座が出来上がっていって。君は「じゃあなんて名前にしようと思ってるか当ててみて」なんて聞いてきて。星と星をつなぐことに大きな意味があるわけじゃなくて、君と星と星を見上げながら想いを通わせるこの時間は、今だから得られた時間なんだよって言われている気がした。

2番

”雨の音が言葉を撃ち落としていく”

歌詞に負けず劣らず曲もドラマチックに進行していって、非常に強い言葉で君は葛藤を描いていく。

”何をしてるの 何を見てるの”

僕らが思うのと同じようなことを君も同じことを思っていたら良いな。そんな小さな充足感を感じながら耳を傾ける。1番までの希望に縋るような姿はもう見えず”窓の内側から願うだけ”ではなくなっている。雨が降りしきる外へ自分の足で踏み出していく。雨がやまないなら、雨の止むところまで歩いていく。雲で星が見えないなら、風を吹かして雲を追い立ててやる。希望は君が君のためにつくる。それが君の言う「大胆なルート」のひとつなんだ。鼓動のように力強いバスドラム、筋肉のように撓るベース、風に揺れる髪のように嫋やかな歌声が、頼もしいシルエットになっていく。

”傘を広げて待つよ”

メロディと共に着々と積み上げてきたやなぎなぎさんの歌詞がばばっと輝き出すのが2サビの歌詞ではないだろうか。

”世界中でただひとり バカだねと言われても 君が笑ってくれるならOK”

強がってカッコいいことを言ったあとに、はにかみながらそんなふうに微笑まれたら…。すこし収まりが悪くたって言い切りたい。OKなんだよと。あぁ、こんなに立派になって。こんなに美しくなって。

こうして強いメッセージ性を持ち、表現される”強い歌詞”に負けじとあの手この手で攻めてくるのがStarcastの総合性である。

NAOさんとダンスを踊るところは、2つの星と星が互いの引力で引き合い、加速していくふたつの惑星のように「組み技」のダンスを披露する。夏織ちゃんの得意なダンスで、この物語にさらなる価値を付与しよう。言葉で表現する以上に、身体から湧き上がる衝動を恒星のように放ってみよう。そんな挑戦が感じられる。

映像はエモーショナルなダンス、ストーリー性をもった歌詞、伸びやかな歌声から一歩引いて、その世界に誘い込むために異なる立ち位置から挑んでいる。

森の中に設けられた木製の舞台は、街の中あるいは流れ行く日々にぽつりととり残された自分自身を切り取った場所。その上で感情豊かに踊る彼女は心の動きそのものと言えよう。川の中でも、昼でも、夜でも。場所を変えて同じように踊る姿に「傘を広げて待つよ」の言葉がぴたりと当てはまる

たとえば星あかりや街並みを描きたければ、ビルの屋上から街をバックに夏織ちゃんを立たせればいい。でもそれをしない。レインボーブリッジを背に写真を撮ればいい。でもそれをしない。頑なに、森、川、暗幕と電飾を背景にすることに拘ったのは何故か?結局これは冒頭で述べたように、”街並み”や”星”、そして”雨”といったStarcastを構成する特徴的なフレーズがすべて、人それぞれ聴く人によって置き換わることを想定しているからではないだろうか。現実に街並みや星を映してしまっては、そこで解釈を限定してしまうことになりかねない。映像は「本当のことは映していない」のに、森を心のなかに、電飾を街並みに、僕らは不思議と重ねることができた。見る人によっては違うかもしれない。これは作り手とリスナーが「キミと同じこと」を考えて(願って)いられるように演出しているのではないだろうか。

衣装に関してもひとこと。「衣装の布一枚一枚が重なっていて、くっついていない」って語る夏織ちゃん。ボクの願い、キミの願いは、着る人を形づくり、彩り、そして守っている。衣装の布は様々な想いが集まり、年輪のように積層した木の皮のようだった。

インタビューで「“夏の織姫”という名前の夏織さんだったら、天の川もひとっ飛びで越えていけそうだな」という印象を抱いたというやなぎなぎさん。Starcastの中で輝いているフレーズの一つ一つは、夏織ちゃん自身が放つ輝きであったことが明かされている。僕はさらに、飛び越えるのも、飛び越えられる星そのものも、彼女から生まれたものであったら良いなと思った。

夜明け

”同じ強さで 同じ想いで 願っていたから”

答え合わせひとつ。「さぁ、次は君はどうしたいの?」と彼女はいたずらっぽく微笑みかけると、僕の手を取って駆け出した。

”答え合わせをしよう”

いつ明けるともしれない夜の先に見える景色が、二人で見つけたい答えなのかもしれない。

”きっと今夜は星の雨になる”

ああ…そうか…
もう星が降ってくるのを待つんじゃないんだね…!
君は僕の手を取ってどんどん加速していく。
星が振るように見えるまで。



さぁ、もうすぐ夜が明けるね。



※この解釈はフィクションです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?