9.バイバイ、またね

次の日、14:00過ぎに手術室への入室コールがかかった。

病室を出る際、よいよこの子ともお別れかと思ったら、また涙が溢れてきた。

車イスで行くかと聞かれたが、首を横にふった。

どんなに辛くても自分の足で歩いて行きたかった。

手術台に上がっても涙は止まる気配なく、どんどん溢れてきた。

手足を固定された私の代わりに手術室のスタッフが「悲しくなっちゃうね」
と言いながら涙を拭き続けてくれた。

手術は静脈麻酔で眠った状態で行われることになっていた。
でも、最後まで私は眠らなかった。

ぼんやりとした意識の中で、お腹の子が出ていくのを感じていた。

バイバイ、またね。また戻っておいで。

そうして私は見送った。
最期まで見送ってあげられて良かった。

手術してからのお腹の空っぽ感が凄かった。
内蔵の1つがなくなったような、お腹がスースーする。
全然お腹も膨らんでいなかったのに、確かにそこには命があったことを、私に感じさせていた。

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