宮本浩次バースデイコンサート at 作業場「宮本、独歩。」ひきがたり
2020 612 宮本浩次バースデイコンサート at 作業場「宮本、独歩。」ひきがたり
配信ライブ、いやー良かった!楽しかった!
『夜明けのうた』から始まり、『孤独な旅人』がやけに染みる。
先日、CSの音楽チャンネルで放送していた1997年の「ポップジャム」、エレファントカシマシ『孤独な旅人』。世の中を全然信用してなさそうな、現状に全然納得いってなさそうな顔で、1997年の宮本浩次は歌っていた。
あの時代のヒリヒリする感じも良いが、2020年の『孤独な旅人』はこんなにも表情豊かに歌い上げるのかと、グッときて涙してしまった。この曲の行き場もなくどこかに向かっていく感じが好きすぎる。
『going my way』では弾むような歌が不安定なギターを追い越していき、曲終わりに「不発でした…」とボソッと言ったのに笑ってしまった。
ひたすら男くさい『獣ゆく細道』も良かったし、優しく歌い上げる『赤いスイートピー』から一変して『珍奇男』『デーデ』へとなだれ込む狂気のギャップにもやられた。
作業場(スタジオ)には宮本浩次ひとりで、複数台のカメラが遠隔操作で動いていた。テレビ画面で見たらもっとダイナミックに感じられたのかもしれないが、部屋を暗くしてスマホ画面で見ていると、どこか覗き見しているような感覚がある。
これってもしかしたら自分しか見てないんじゃないか…この世界には自分しかいないんじゃないか…自分は今どこにいるのか…と何とも不思議な気持ちになってくる。
ライブを誰とも共有できない寂しさと、どうしようもない諦めの果ての日常。ネットによって世界は広がったのか、コロナによって世界は狭まったのか。繋がっているようで繋がっていないような、浮き彫りになる孤独感と共に画面の向こうを見つめる。
MCでは、何も反応がなくて不安そうな言葉や考え込むような顔を見せながらも、宮本浩次のテンションはコンサートそのものだった。縦横無尽に作業場を動き回って、自由自在に歌いながら扉を開けて奥の部屋へ行くと、スタッフらしき人の姿が見切れる場面もあった。
いつの時代でも「旅に出ようぜ」と歌い続ける宮本浩次に元気づけられ、しかし旅に容易く行けない世界になってしまったことに物悲しくなり、そもそも昔から旅に容易く行くようなタイプじゃなかった自分を思い返し、『旅に出ようぜbaby』を聴きながら笑う。
最後は、振り絞るように歌う『昇る太陽』、高らかに歌い上げる『ハレルヤ』と、そこには一点の曇りもなく、晴れ晴れとした世界が広がっていた。日々に漂っていた閉塞感や孤独感はどこへやら、楽しさと胸の高鳴りしか残らない。
「みんないい顔してるぜ。全く見えないけど」「ライブでまた会おう」
「宮本、独歩。」のライブ、今回そもそもチケットが取れなかったというのに、再開できたとしてもキャパは大幅に減少し、今後ますますチケットは取れなくなり、誰もがそう簡単にライブを見に行くことはできなくなるだろう。
でもまあ、絶望したってしょうがないし、なるようにしかならないし、この時代を生きていくしかないし、今を楽しむしかない。
『ハレルヤ』の歌詞が耳に残る。
「強くもなく弱くもなく まんまゆけ」
ゆくしかないよな。
ロックンロールと
胸の高鳴りと
いつかライブで会える日を夢見て。