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「イミグラン点鼻」が消えた ―それなら錠剤を「噛もう」!―

【はじめに】

 群発頭痛患者が最も多用しているであろう応急措置、それが「イミグラン点鼻薬」。
 本来は片頭痛用の処方箋ですが、鼻にプシュッと噴射することで粘膜に直接浸透し、早めに激痛を静めてくれる「唯一の特効薬」です。体感では噴射タイミングにより数分~15分程度で効果をあらわします。
 イミグランには錠剤もありますが、そちらは最短でも20~30分は必要とし、倍の時間は苦しむことになります。なお、どちらも「効いた場合」なので、効かないこともあるという恐ろしさをはらんでいますが……。
 群発頭痛患者は常にお守りのように持ち歩き、最も頼りにしているイミグラン点鼻薬。何とそれが2023年末、製造会社で不備があったため出荷停止。ほどなく再開したものの、日本に輸入されなくなってしまいました。
 
頭痛学会公表のイミグラン社2023年12月プレスリリース
https://jhsnet.net/pdf/shukka_nitsuite.pdf
 
頭痛学会公表のイミグラン社2024年1月プレスリリース
https://jhsnet.net/pdf/imiguran_zokuho.pdf
 
 しかも製造会社グラクソ・スミスクラインによると「2024年内はまず再開の見込みがない」という回答があったそうです。
 これがどんなに恐ろしいことか……!
「傷口からどくどく血が流れているが、それを止める術がない」
「癌を抑える化学療法に入ったのに、その薬も装置もない」
「米しか食べられないのに、その米さえない」
「唯一頼れる妻が失踪した」
……うーん。いろいろな喩えを考えましたが、どうもしっくりきません。
 真っ先に浮かんだ言葉が最も、しっくりきます。
 
 それは「絶望」です。
 
 厭世観を武器にした哲学者、キルケゴールは著書『死に至る病』にて、「絶望」を「死にたくても、死ぬことさえできない状態」と定義しました。
 まさに「自殺頭痛」と呼ばれる群発頭痛そのものが、この言葉にフィットしてしまいました。だって、目玉がスイカになって骨にヒビが入るような激痛が、ずっとずっと止めることができないんです。目玉に塩酸をかけられて焼かれるような、角材のカドで眼窩をグリグリとつつかれているような、出産時の痛みが永遠に続くような、発狂しそうな激痛が!
 しかし、死なないんです。群発頭痛そのもので死んだ患者は、おそらくいません。
 ただずっと「ものすごく想像を絶するほど痛いだけで、外傷も何もなく、死ぬことはないが死にそうなほどの痛みが数時間続く」のです。それが1日に、何回も。
 それこそ思い浮かぶ言葉は――「絶望」。
 これは大袈裟なことではありません。群発頭痛患者にとっては、まさに「死活問題」です。

 それでも、群発頭痛はやってきます。定期的に謎の法則で訪れるので、そこに「今は薬がないらしいから、ゆるく痛めつけとくか」という人間的な容赦はありません。
 私についても同様で、遠慮なく群発頭痛は訪れました。そういう時に限って群発期が長めで、3ヶ月に及んでようやく寛解しました。
 そう、寛解までふんばれたのです。何度もくじけそうになりましたが、死なない病で死ぬわけにはいかない。それこそ「溺れる者は藁をもつかむ」ごとく、さまざまな手段を見出しました。
 今回はせめてもの手綱になれるよう、イミグラン点鼻がなくて悩んでいる群発頭痛患者に向けて、筆を執ります。
 私のとった応急措置や考察が、少しでも役に立ちますように――。

【まずは錠剤へシフト・チェンジ!】

 イミグラン点鼻と同じくして、錠剤も出荷が制限されました。当然ですが、点鼻がないため「錠剤でもいい」と欲しがる人が急増したからです。そのため錠剤と自己注射を増強して補充していく方針となったようで、時と場合、薬局によって波はありますが、ほどなく入荷されるようになりました。
 点鼻に慣れた身として、どうしても錠剤は抵抗がありました。即効性がなく、ただ気持悪くなるだけで痛みが引かないことも多々あったためです。ましてや後発品(ジェネリック)はもっと相性が悪いように感じていました。
 しかし、背に腹は代えられない。四の五の言ってられない。そこには背どころか「腹しかない」し、四番めや五番めではなく「一番めの手段しかしかない」んだから。

 錠剤のポイントは、とにかく「すぐ使うこと」です。
 発現すると、痛みは駆け足で激痛へ発展します。「違うかも」「耐えられるかも」などと投薬に躊躇しては手遅れになり、よけいに苦しむだけです。
 薬を服用したら「効果が出るまで最低30分は見ておくこと」。それはつまり「30分間、激痛に耐えることに慣れること」。環境を変え、痛みに耐えられるよう素早く準備します。
 氷嚢となる保冷剤をいくつか準備。ひとりでいられる部屋へ移動。ライトを消す。
 悔しいものの、この激痛は「慣れます」。痛みのあまり暴れたくなったり、実際にバタバタもがくことは当然ですが、自分で何かしかの対応策を探し求めていくでしょう。やはり死活問題、自分でやらないことにはどうにもならない。
 副作用は個人差がありますが、結局は「慣れます」。
 私は今回、イミグランで今まで感じなかったはずの局所的な筋肉痛が副作用として発現し、約3か月間ずっと、右腕と左大腿部にずっと筋肉痛をこうむっていました。
 それでも身体は、むしろ精神は、それに合わせるものです。日常生活も仕事も、身体はダメージを軽減するように自然と対応して動いていました。気持悪さも仕事を休めるポイントを探したり、家では外に出たり、何かしらの対処法でしのげていました。
 そうやって総合的に「まず錠剤に慣れる」こと。
 戦う準備ができなくては、敵にやられるばかりです。自分に合わない武器でも、自分から慣れなくては戦えません。弱い武器なら、敵の攻撃に耐えられる防御力を身につけなくてはいけない。
 まずは「錠剤という武器」に慣れましょう。
 ありがたいことに、薬価は点鼻よりはるかに安いことですし……。

【錠剤を使いすぎない!(1錠まるごと飲まなくてもいい)】

 今回、計算外だったのは「イミグラン錠剤の使用量が処方基準を越えてしまい、錠剤さえ処方できなくなってしまった」こと。
 医師の話では、「イミグラン錠50」で言うと1日200mgまでなので4錠まで。1ヶ月では60錠まで。それが処方できる最大限とのことです。1日に4回以上激痛に襲われる身としては「それではどうしようもない……」と「やっと錠剤に活路を見出せたのに、それさえも与えられないのか」と再度の絶望に陥りました。
 これには複数の原因があり、まずそもそも「群発頭痛でも、片頭痛と同じ対応になる」ということ。専用の薬がなく、片頭痛用のイミグランを処方されているのは、未だに「病院側が群発頭痛としての対応ができず、片頭痛として対応・処方するしかない」ということです。そのため処方そのものが、1日に何回も激痛が襲ってくる想定での基準値になっていないのです。痛みの強度および頻度に対し、処方がどうしても不足してしまいます。
 次に私の場合、なぜか食後の消化時間に合わせるように激痛が襲ってきたこと。つまり群発頭痛特有の「定時の激痛」だけではなく、激しい運動(労働)や暑さなどで血管が拡張した際の偶発的な激痛、それが「毎食後」にも襲ってくるのです。そうなると1日3食食べれば最低でも3回。そこへ定時で2、3回。さらに体温上昇による血管拡張など偶発的な要素もあれば、1日で10回近く発作が起こることさえありました。
 もうひとつの「考えてもいなかった誤算」は、発作時に「錠剤1錠をそのまま服用していた」こと。普通は錠剤をそのまま飲むでしょうから、これの何が問題かわからないかもしれません。しかし上記の多すぎる発作で毎回1錠ずつ服用していたら、当然ですがあっという間に手持ちの薬がなくなってしまうのです。
 では、どうすれば?
 気づいたのは、イミグランの「スマトリプタン配合量」。名前のあとについている数字が、ものによって異なることです。それが「点鼻が20mgなのに対し、錠剤は50mg」であることに気付くと、ふと思いつきました。
「1回に1錠まるごとではなく、半分や1/3を噛んで使用して、1錠を複数回使えるのでは?」
 点鼻は錠剤の半分未満でも、脳に近い箇所の粘膜へ投与するから効き目が早い。即効性の高い自己注射など、たったの3mg。そこへいくと錠剤が50mgなのは、効きめが遅いから多くなっているのではないか? きっとそれでも血に乗って巡れば、鎮痛に必要な量は足りるのではないか?……そんな想定のもとです。
 そしてこれは的中し、なくなりかけた錠剤を使い尽くさずキープする決め手となりました。
 実際、半分や1/3でも効き目は同等です。1錠まるごとでも半分でも1/3でも、使用量にかかわらず効きめが出るまでの時間は、同じくほぼ30分。しっかり激痛は引いてくれるし、苦しむ時間は同じです。
 痛みの大きさにより1/2や1/3、軽度の場合は1/4を噛んで飲み、残りはケースへ戻して破ったフィルムをかぶせる。そうすることで、たとえば10錠しかなかった手持ちが「半分ずつなら20回分」「1/3なら30回分」に倍加します。さすがに激痛相手に1/4では不足し、30分を過ぎても苦しみが終わらずに噛んだ残りを追加服用したこともあります。それでも1錠。
 この方法は、まず端的に薬不足を解消できます。1錠まるごと飲まなくても効く。
 嘘だと思ったらまず、錠剤を噛んでみてください。ものすごく苦くてケミカルな味がしますが、これも慣れます。
 さらに言えば噛み砕いて粉々にして服用すると、数分ぐらい効きめが早くなるように感じた「こともあります」。野草を噛むぐらい苦いですが、これも「背に腹は代えられない」と思う方へ、ひとつの提案として。
 なお、点鼻もそうですが錠剤も「予防には使えません」。錠剤の消化時間を考えて定時に合わせるように服用しても、基本的には発作は防げない。うまくいったとしても、それは偶発的に発作が起こらなかっただけかもしれない。そうして意味もなく、激痛ではなく副作用に苦しみます。あるいはその両方で。貴重な薬を減らしてしまうだけです。
 残念ですが、イミグランは最速でも「痛みの予兆」で使用すること。様子見してよくあることですが、「激痛で使用」は遅すぎて苦しいだけなので、せめて「軽度の痛みのうちに潔く使用」することをおすすめします。
 1錠まるごと飲まずに、噛んで!

【カルシウム拮抗薬を利用すべし】

 早めに手を打つべき手段は「カルシウム拮抗薬」です。
 これは片頭痛の予防薬として用いられるもので、群発頭痛においても激痛の予防に使用されます。商品名で言うと「ベラパミル」または「ワソラン」。食後に服用することで、痛みの発生を抑止する役目がある……とされています。
 というのも、効果に確実性がない。発作の記録をつけていくと確かに服用中は痛みの頻度や強度が落ちている。ように感じる。だから役立っている。ような気がする。
 いろいろと断言できないのは、やはりこれも「基本的に片頭痛の薬」だから。しかし実際、服用期間中は少しだけ楽になります。場合によっては定時の激痛発作を抑止してくれることもありました。
 しかし、残念な副作用がひとつ。
 たしかに発作を抑制できるものではあるのですが、なんと「群発期間そのものを伸ばしてしまう」という諸刃の剣なのです。
「じゃあ意味ない。早く終わらせたいから使わないぞ!」と決め込んだ群発期は、記録を見ると激痛が多くありました。転じて、カルシウム拮抗薬を使用した群発期は激痛が少なく、しかし群発期そのものが長い。作用も副作用も、たしかに効果があるのです。
 そこでおすすめは、「群発期に入ったばかりの初期に使用し、痛みの対処スタイルやサイクルなどが把握できてきたら服用をやめる」というもの。群発頭痛は初期の方が激痛が多く、次第に痛みのレベルは落ちていってやがてすぼんで消える、ということが多く感じます。
 そのため変な喩えですが、産後の大変な時期は祖父母(=拮抗薬)の手を借り、いろいろを把握できてきたら夫(=スマトリプタン)の助けだけで対応する。そんなイメージでどうでしょうか。ということは「夫が育児をしない家庭」は「スマトリプタンのない群発頭痛」と同じわけですね。恐ろしいことを考えてしまいました。
 脱線終了。
 カルシウム拮抗剤「ベラパミル」「ワソラン」を食後に服用するのが基本ですが、他にもバルプロ酸ナトリウム(=デパケン)も群発頭痛に効果ありとされています。アミトリプチリン(=トリプタノール)は群発頭痛には効果がないものの、片頭痛を抑止する力は強いとか。
 それらを使いましたが、すべて「効果があったような、ないような。しかし痛みのメモではたしかに効果があるような。そしてしっかりと群発期そのものは伸びる」というのが、個人的な感慨です。
 それでも痛みに慣れない初期の大きなヘルプにはなるはず。そのため迷わず、群発期の初期にまず処方してもらいましょう。突然の群発期突入でまず痛みを抑えるスマトリプタンのことしか考えられなくなりますが、使えればきっと辛さもイミグラン使用量も軽減されるはずです。

【それ以外にも自分なりの対処法を探そう!】

 群発頭痛患者の誰もが、激痛が襲ってくる発作時に何か軽減できるものはないかと足掻くことでしょう。
 きっとどれもが効果がなく、あったとしても「気休め」程度でしかないのですが、それこそが激痛を乗り越えるために必要なことも多いので、ここに個人的な方法を紹介します。

(1).リドカインが配合された市販の点鼻スプレー(霧が晴れる)
 これは昔から言われていたこと。成分に「リドカイン」を含む点鼻スプレーは、言わば粘膜作用の麻酔薬なので、群発頭痛にも効果があるというのです。
「というのです」ということは……そうですね。体感では「発作の激痛には対応できない」と感じました。数回のプッシュでは何の意味もなく、過度に使用すると少しは効くように感じるものの、副作用でフラフラになってしまう。少なくとも、激痛を消すほどの力はない。
 それでも「軽度の初期症状や、発作に伴う気持悪さや霞がかったような気分には効果がある」のは事実です。むしろ明確に「頭の中に霧がかった感じが、一瞬でクリアに晴れていく」ことさえあります。
 これは併用するといいかもしれません。「できればイミグランを使いたくない」というときに使用し、モヤモヤが消えればラッキー。消えずにジワジワとした痛みに発展したら、急いでイミグランを使用。個人的にはそうした「ふるい」にもなりました。
 個人的にドラッグストアの点鼻スプレーは安いうえにリドカインの配合量が高く、「プラセボ効果のない群発頭痛に自分でかけるプラセボ効果」としても助かりました。

(2).フリスク
 もはや「溺れる者は藁にもすがる」ですが、群発頭痛の発作にもいくつかタイプがあり、そのひとつが「鼻腔周辺まで痛む」もの。
 その兆候として鼻がムズムズしたりするのですが、フリスクで鼻の不快感が一気に霧散することがありました。あくまで「ことがありました」なので、気を紛らわせる程度にお考えください。

(3).炭酸
 同様に、気を紛らわせる程度ではありますが、群発期にはとにかく炭酸飲料を飲みました。それも「飲んで幸福感のある、味つきの炭酸水」を。
 やはり鼻から抜ける感じがフリスクと同様で、効果が「あるように感じる」ので気休めになります。またお酒好きの方にとっては断酒せざるを得ない群発期に「少しでも飲んでいる気分」を味わえるので、そうした意味でも有用です。

(4).冷やし方のコツ
 群発頭痛と何年も戦っているうちに、ネットにはいろいろな情報が流布されてきました。未だに「群発頭痛が整体だけで完治します!」なんて吹聴している「スポンサー広告」も絶えませんが、以前より「本当の情報」や「体験談」が拾いやすくなっています。これはサカナクション山口さんが群発頭痛を公表してくれたことにより、群発患者の多くが声を上げた効果だと感じます。本当にありがたい!
 そのうちに得た方法を。
 氷嚢(代わりの保冷剤)で痛覚を鎮めるのは、どの痛みでも鉄則。それは群発頭痛も同様。その場所がどうしても患部の眼窩周辺だけになってしまいがちですが、実はキモが「痛む側の首」。つまり左側の眼窩が痛むのであれば、首の左側を冷やす。これは私も以前「血が滞るようなイメージで」首やら胸やらを冷やしていたものの、最も効果的な手段。やはり頭部に至る血液は、すべて首を通過します。
 さらに言えば「耳の裏側から根本」も有用です。そのため左の眼窩が傷む場合は「患部と同時あるいは交互に、左耳の裏側から根本を通過しつつ首の側部全体を冷やす」ということができれば、無暗にいろいろな箇所を冷やすよりも激痛をいくらか軽減できそうです。あくまで経験上。

(5).横になるより座る
 これも体感ですが、群発頭痛は「寝てはいけない」。
 寝ると血流がよくなるためか? 痛みが増強するように感じます。耐える場合は座って血液の流れをタテに持ってきて、遅くする。それだけで痛みの程度もかなり違うと体感しました。
 以前は「横になってひたすら耐える」をよしとしていましたが、座って氷嚢で冷やすだけで痛みがだいぶ違うと感じました。10年以上も戦ってようやく、ですが……。

(6).エアコンと扇風機、音楽そして光
 エアコンの風向きを調整し、最強の直風を浴びつつ扇風機の直風も浴びる。そうして血流をわざと悪くして血管の拡張を鈍らせ、痛みを軽減しようとしました。また発作時は感覚が鋭くなって音と光を強く感じるので、部屋のライトを落として真っ暗にする。音は無音、ではなく、逆に自分の好きな音楽をイヤフォンで聴く。
 これの効果はわかりません。逆に冷えた体が血管をよけいに拡張させるかもしれないからです。それでも膨張した血管を引き締めているイメージになりました。光はまさしく、消えていたほうが楽になります。音はコンディション次第で無音のほうがいいとは思いますが、小さい子供がいるので好きな音楽を敏感に感じたほうが気休めになりました。
 そうして毎回、その環境を作って他の対処も同時にしていて落ち着いていったので、私の場合は対応デフォルトのひとつになっています。

(7).喫煙
 これも断言ができない対応法のひとつ。
 以前も「とかくこの際に禁煙をすすめる『お医者さん』が多い」と記しましたが、禁煙がすすめられる理由は「ニコチン接種が血管を収縮させて拡張させるため」。
 じゃあ、急性期に接種したら血管が収縮して痛みが収まるんじゃないの? そう思い、あえて発作中に部屋でも使える加熱式たばこを服用しました。ほら、エアコンかけてますから。
 逆転の発想ですが、実際、体感では「多少は影響がある」と感じます。薬を飲み、部屋と体を冷やし、トドメに血管を引き締める。換気さえすれば部屋に臭いもこもらない。ニコチンの量も微量なため、やはり気休めのイメージではありましたが、実際に出先の緊急対処法として効果を感じることも多々ありました。
 イミグラン不足で敏感になっているためかもしれませんね。

(8).叫ぶ!
 最後に、やはり「病は気から」。
 発作による激痛時、群発頭痛を『はたらく細胞』さながらに擬人対応し、荒々しく非難する言葉を呪詛のように吐き出すことで発散することが増えました。
「いつまで続くんだ馬鹿野郎!」
「なんで俺だけこんなに苦しまなきゃいけないんだよ!」
「痛ぇよ、消えろよカス!」
「薬のんでんだろ? とっとと失せろクソ野郎!」
……ありとあらゆる思いつく言葉を(小さめの声で)叫んでいるうちに、プラセボ効果のない群発頭痛でも、やはり「気休め」にはなるものです。
 自分は悪くない、悪いのは群発だ。そういうふうに自己肯定できるのもプラスかと思います。
 だって僕らは、何も悪いことはしていない。カルマとか知らない。なのにリアルな痛みが自分にだけ降り注ぐんですよ?
 すべては群発のせいです。自分のせいではありません。だから叫んで、自分を取り戻すのです!
 生きるために叫ぶんです。死にたいは、生きたい。「死にたくなるほど痛い」は「本当はそんな痛みをなくして、死にたい気持を消して生きたい」です!

【煙草と食事は影響する?】

 前述の煙草(ニコチン)ですが、体感では発作を鎮めるのに役立ったと記しました。
 しかし同時に、悔しいながら発作を引き起こしたこともあると体感しています。アルコールほど明確ではありませんが、喫煙後に発作が起こった「トリガー」になったように感じたことが何度かあります。
 ただアルコールと違うのは、アルコールは「なかったはずの発作も起こしてしまう」のに対して、煙草は「いずれ起こる前にウズウズしていた発作を、喫煙を契機に前面に出した」感じ。つまり「どのみち発作で痛むものが、煙草を喫ったらすぐに発動した」という感じです。
 そのためトリガーではあるかもしれないけど、アルコールのように不要のものさえ起こすわけではなく、いずれ痛むものを早めに作用させる感じでした。それなら「禁煙の理由」としてはまだ不充分というのが私見です。

 また以前は「気の持ちようで、ほぼ無関係に感じた」食事に関してですが、なぜか「炭水化物を摂取すると痛みが強くなる」おかしな傾向になっていました。
 炭水化物の消化のため血管が拡張し、痛みに発展しているような……?
 そのため仕方なく炭水化物(米、麺、パンなど主食)を極限まで減らしていると、痛みは軽くなる。ごはんを増やすと、急に痛みが大きくなる。蕎麦を食べると、消化スピードが遅いので激痛が遅れて始まったりする。そうでもなかったりもする。
 さらには「頭痛を起こす食べ物」「頭痛を抑える食べ物」も「群発とは別物」と思っていたのですが、多少なりとも関係はあると感じました。というのも、私の場合「何かしらの頭痛が群発頭痛に発展する」ことが多いのです。片頭痛が群発頭痛になったり、緊張頭痛が群発頭痛に、空腹の頭痛が群発に、などなど「すべての頭痛が群発頭痛に発展する」難儀な状態だったのです。それじゃイミグランの錠剤も足りなくなるでしょう?
 好きで間食にもよく食べるサラミを食べたあと「ツーン」と痛んだのは、本当に食と頭痛の相互作用があると感じてショックでした。サラミは頭痛を呼ぶ可能性があると言われてますからね。それと同時に、好物でもリスクヘッジとしてピタッと止めました。これは酒と同じですね。
 また頭痛にいいとされるアーモンドも積極的に食べました。一般的な頭痛と群発頭痛は別物だと思いつつも、やはり藁にもすがる想いで。効果があったのかはわかりませんが。
 アンテナをいかに立てるか、ということですよね。自分を楽にさせるため、積極的に。

【整体はやはり効果あり!】

 そんな中でも、確実なものを最後に。
 整体や柔道整復師のマッサージ、つまり「ホンモノ」は効果があります。前述の「群発頭痛は整体で治りますスポンサー広告」は、たしかに効果があるので逆に厄介なのです。

 まず前提として、患者さんならご承知でしょうが「群発頭痛は、治りません」。
 そのため「整体で治るよアピール」している整体師は、知識がないものとみなして利用を控えたほうがよさそうと切り捨てます。本当に群発頭痛を知っていれば「おさまります」という表現になるはず。つまり正しくは「整体をすると、その群発期の激痛は止めることができるかもしれない」ということなのです。
 次の群発期は、年齢的に感じなくなるまでずっと必ずあります。だって「発作がない時期を、寛解期と呼ぶ」わけですから。言いたくないけど転移や再発がある癌細胞と同じです。
 そのため、群発頭痛を「治す」ことはできないのが現状です。ましてやそれが、薬物的な化学療法でも解決していないのに、人為的な整体だけで可能なわけがありません。

 その前提で、整体をすると全身の血流がよくなり、とどこおることが少なくなります。そうすると自然、不用意な血管の拡張を防ぐことができ、発作が起こることが少なくなるのです。
 群発頭痛の発作は「血流のとどこおり」。
 これはたとえば「消化のために血管を拡張させる」のと同じだと、体感しました。体は通常と何か違うことが起こると、それを修正するために動く。つまり「動きすぎると」「暑いと」通常に戻すため血流をよくして修正しようとし、血管が拡がる。
 群発頭痛の厄介なところは、なぜか「定時の発作がある」ことですが、これも「その時間になると、何らかの原因で血管が拡張している」ことには違いありません。寝ている間にある、身体の調節時間ではないかと感じます。
 それらを起こりにくくすることで、発作を減らすことができる。あるいは、拡張の具合を弱め、痛みの程度を弱体化することができる。
 それが「全身の血流を整える」ということだと感じました。
 そのために、整体が役立ちます。患者自身のストレッチでは、やはり限度がありますから。

 では、どんな整体師を選べばいいのか?
 以下はあくまで私見と体験談です。
 まず「群発頭痛は治る」と宣言する整体師は、個人的には控えたいです。前述の理由に加え、インターネットで閲覧できるページには患者の感想や具体的なプランなども掲載されていますが、その真実味以前に、ほぼ「何度も定期的に通院することが前提」。本当に効果がある整体師だったとしても、近所に住んでいる方以外には現実的ではありません。はっきり言えば、商売がチラつきます。
 次に、よくある「もみほぐし2,980円」のような施設は、整体師ではないのでNG。あれは「マッサージ」であって、柔道整復師のような免許取得者でなくともアルバイトでやっています。そのうえ個人的な経験ですが、整体を謳っているので利用してみると単なる「強めのマッサージ」で、それを告げると「ボキボキ鳴らすのは古い整体です。今はこうなんです」と言われました。さらに当然のごとく、今後の通院プランの相談までされたので利用をやめました。揉み返しのおまけ付きで。
 これらの「もみほぐし」は基本的に「筋肉疲労を軽減する」ものです。柔道整復師や理学療法士のような資格や知識がなくともできるので、基本的にマニュアルにのっとっています。アルバイトの方が働きながら勉強し、資格を取得する足掛かりによく使用されている「疲れた人の疲労感を一時的に軽減する、もみほぐし」です。
 おすすめは、やはり「柔道整復師」。これは「ボキボキ鳴らす整体」も、そうでない町の整骨院(接骨院)でも同様です。
 いわゆる「整体」のイメージがある「ボキボキ鳴らす整体」は、そうやって体幹を矯正するため、当然のごとく身体がまっすぐになり、血流がよくなります。町の整骨院は担当によりますが、基本的に身体のしくみを徹底的に勉強しているので、素人がやりがちな「患部だけ」はしない。程度の差こそあれ、必ず全身を整えます。
 しかしどちらも「群発頭痛を知っているか」は大きなポイントかもしれません。私の場合、どちらの担当でもその存在を知っていたので、「効果があるかはわからないけど、こうしてみたらどうだろう」という対応策をいくつも教えてくれました。これは「本当に学習して知っている人」だからこそ、できること。その基準として「柔道整復師」という資格があるように感じます。
 あくまで個人的な経験ですが、「正しい」整体や整復をしてもらうと、一気に痛みが軽減されます。痛さが減ることもあれば、回数が減ることもある。しかし1回だけではなく、複数回通うこともたしかに必要。

【結論:乗り切るしかない】

……と。
 いろいろ書いてきましたが、結局は「自分なりに解決策を見出し、乗り切るしかない」。
 いつだって群発はそうなんです。痛くても完全な回避方法などなく、検索しても自己流の方法が載っていればいいほうで大体は医院のPR記事。周囲に助けを求めても、群発頭痛に罹患していなければ痛みの大きさも何もかも、わかってもらえるはずがない。当事者じゃないんだから、それは仕方ない。ただし本当に苦しいときに「そんな漫画みたいに苦しいの?(笑)」と嘲弄する人を遠ざける、ふるいになったりしますが。
 だから結局、自分なりの解決策を探すしかないのです。長年の患者さんであれば「いつものように」と言えば、わかる感覚でしょうか。
 
 ただ、はっきりわかったことがあります。
「イミグランは、浸透すれば効く」
 すごく感覚的ですが、容量の問題ではなく、用法。
 これまでの文章の中で最もイミグラン不足の回避方法に使用できるのは「錠剤を噛む」ことだと思います。というか、それしかないと思います。じゃないと薬がなくなるから。
 それで少ないと効かないかというわけじゃなく、1/4や1/3でも半分でも激痛が収まる。こともある。1錠でも収まらないこともある。
 思えば、点鼻薬もそうでした。1個を使用すれば激痛が収まるかといえば、決してそうでもない。短く終わることもあるし、2個連続で使わないと収まらないこともあった。
 それはコンディションや環境など、状況によるものが大きいと思います。50歳が見えてきた私は、きっと年齢的なもの(=群発頭痛は50代以降は落ち着くとされている)もあります。ですが仕方のない局面になると、イミグラン不足に「慣れてきた」のです。
 自分なりに、自分の体や傾向を何となく把握し、薬の使い方や状況を変えた。これはきっと、群発頭痛患者が自然とやっていることだと思います。
 そうして自然と出てきた方法が、むしろ唯一の解決策――「錠剤を噛む」だったのです。

 イミグラン点鼻薬は、公式に「年内の再供給は難しい」とコメントされています。
 その「2024年」が、もうすぐ終わる。来年になったら供給が再開されるのか? それもわかりません。
 それにしても、製造上の不備から1年も供給されないのはおかしいと思いませんか? 今後はもしかしたら、日本に点鼻薬は入ってこないかもしれないと考えたほうがいいのかもしれません。
 流れてこない藁には、すがることもできない。
 いつも最悪の状況を考えなくてはいけない。哀しいことですが、生きるためには「慣れ」が必要です。
 患者は、生きなくてはいけない。死ぬことはない激痛でも、死にたくなるほど痛くても、生きなくてはいけない。むしろ、生きたい。だから解決策を探しているはず。
 イミグラン錠はもちろん、ステロイド、あるいは自己注射だってある。解決策がないわけじゃない。食事療法も整体も、できることは何だって!
 そうして、一番大切なのは「負けない心」なのだと実感しました。
 これは寛解期に入ったからこそ言えることで、また群発期に入ったら絶望に近い心境になるかもしれませんが……。
 
 いつも思いますよね。
「どうして自分だけが、こんな」と。
 でも、考え方を変えてみましょう。
 
「辛いのは、今だけだ。これが終われば大丈夫」
 
 どうしても、くじけそうになりますよね。自暴自棄にもなりますよね。
 それは仕方ない。私だってなります。
 でも、育児期間中の私は、群発期を育児期間と同じだと考えることにしました。文中でそんな例示もしましたね。
 多くのよろこびの中に、多くの大変さが詰まっている。でも、大変なのは今だけ。そう思うことで、きっとやり過ごせる。
 だって、群発期を脱した後のお酒、うまいでしょ? 育児中に落ち着いた時間に飲むお酒、ホッとするでしょ?
 きっとそういうことだと思うのです。
 
 だからイミグラン点鼻薬がなくても、きっと大丈夫。乗り越えられる。
 辛いのは今だけ。そう思うことは、それこそ人生と同じ。
 この先には、きっと光があるはず!……どうか、がんばりすぎずに、がんばりましょう。

 アレタソノミヲカンジナガラ。

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