2023年5月、オーブンレンジ「BALMUDA The Range」の新モデルを発表・発売しました。2017年に発売した初代モデルから庫内の構造を見直し、あたための向上、容積の大型化を実現。ヒーター管を内蔵化し、お手入れもしやすくなりました。それと合わせデザインもアップデート。今回の「Deep Dive into BALMUDA」 では、新モデルのデザインのあり方について、担当した佐々木 紫帆ささきしほ の話を交えながら紹介します。
イノベーション本部 プロダクトデザイン部 プロダクトエクスペリエンスチーム所属の佐々木は、大学のプロダクトデザイン学科を経てバルミューダに新卒で入社 レストランを新装開店 BALMUDA The Rangeのコンセプトはレストランのような楽しさ。初代のコードネームは、ズバリそのまま「レストラン」でした。本体前面をショーアップするように照らす取手のLEDや軽快なギターの音色で奏でる操作音、モノクロ液晶にドット絵調のフォントを表示するなど遊び心は第2世代でもそのまま継承しています。本体色はブラック・ホワイト・ステンレス・ダークグレーの4色を用意。オンライン限定のダークグレーは、初代モデルよりも深い色味に変更しています。
左からブラック・ホワイト・ステンレス・ダークグレー 「カラーバリエーションは初代と同じですが、ダークグレーのみ本体色と金属色どちらも色味を少し濃くしています。そうすることで、キッチンのアクセントとしてより魅力的な存在になるだろうという意図です」(佐々木)
限定カラーのダークグレー。このモデルのみ取手やロゴにカッパー色を用いている 上質なアップデートとは BALMUDA The Range 新モデルは「クラシックさを保ちつつ上質なアップデートを目指す」というのがデザインのゴールでした。本企画が具体的に動き始めたのは2022年の初頭で、早い段階からデザインのベース案を持ち寄り、設計やマーケティングなどのチームと連携しながら、細部を調整しました。
「今回は、まったく新しいものではなく、良いアップデートをしようというのが目的でした。新モデルのデザインは、キッチン製品シリーズの”モダン”で”クラシック”な要素によりフォーカスしています。初代は“トースターの兄貴分”といった端正で、モダンな印象でしたが、BALMUDA The Brew(コーヒーメーカー)やBALMUDA The Toaster Pro(サラマンダー機能付きスチームトースター)の持つ”エレガンス”な世界観を取り入れる流れもあり、ほかのBALMUDAキッチン製品と一緒に置いた時に統一感が出るよう、意識しました」(佐々木)
よく見るとわかる違い デザインは、パッと見では気付かないかもしれませんが、よく見ると初代BALMUDA The Rangeから変わっている箇所がいくつかあります。おもな違いは3つ。上から順に説明します。
1. 取手(ハンドル)
取手の変更は、デザイン面での大きなチャレンジのひとつ 「はじめはドア全体を大胆に変更する案も出ましたが、お客様に広く認知されてきたレンジの基本構成はそのまま残したほうがいい。そこにさらにクラシカルな雰囲気を持たせてみようと、キッチンやインテリアに用いられる取手の要素をヒントに膨らませていきました 」(佐々木)
パイプを曲げたような形状を採用(手前は着色サンプル) 「取手の太さは強度や設計の実現性だけでなく、ドアのデザインとのバランス検討に苦慮しました。華奢に見えると、実際の強度が十分でも頼りない印象を与えてしまいます。逆に太すぎると見た目がゴツくなってしまうので、ちょうど良いボリュームに調整しました。取手の仕上げはブラックモデル、ホワイトモデル、ステンレスモデルでは共通となっています。どの本体色と合わせても目指した印象が同じになるようにしています。金属表現はCGでシミュレートしても実物のサンプルで見るとまったく印象が異なります。細かいパラメーターで色の差を付けたモックアップを実際に当てて、最終的に目で見た感覚で決めていきました」(佐々木)
CGで検討したのちサンプルを作成し、実物の扉に取り付けてチェック 2. 窓枠
新しいモデルは、奥行きのある窓になりました。
表面から一段溝があり、もう一段奥にガラスが設けられている 「初代の端正な雰囲気を維持しつつクラシックな印象を出すため、窓枠に一段奥行きを設けました。レンジは窓が大きいので、トースターと同じような手法で奥行きを出すと表現が過剰になってしまいます。段を増やしたり傾斜にするなどのの検討段階を経て、端正さとクラシックさを両立した今の形状に決まりました。」(佐々木)
この窓枠のデザインに関しては開発時、ステンレスモデルでの再現に課題がありました。
ステンレスモデル実現のため別途、作成した窓枠の検証用モックアップ 「ほかのモデルはドアの素材が樹脂なので型に材料を流して成形・量産するのですが、ステンレスモデルは板金のため“曲げ”で成形しなくてはなりません。緩やかな段差と小さい角で表現した窓のデザイン形状を、曲げによる成形で実現するのは困難でした。実現できないのであればステンレスモデルを諦めたほうがいいのではという意見も出ましたが、開発チームがデザインの要求に向き合って現場で奮闘してくれ、最終的に満足のいく品質に仕上げることができました」(佐々木)
無事、日の目を見ることになったステンレスモデル 3. ダイヤル、ボタン
本体下部のダイヤル、ボタンは周囲を縁取りしたようなデザインになりました。
モード選択ダイヤル スタート / OKボタン 「取手のデザインが決まったあと、それに似合うダイヤルとボタンを考えました。初代のダイヤルは金庫のような形状と金属調塗装仕上げのため少しカジュアルな雰囲気がありました。今回は高輝度なメッキリングを合わせることで、キラッと輝き上品な仕上げになったと思います。ダークグレーモデルは取手に合わせ、ここもカッパー色になっています」(佐々木)
ダークグレーモデルのダイヤル部 角皿もアップデート 付属品の角皿は、フッ素加工からホーロー製のものに変更しました。庫内サイズに合わせて面積が少し広く、底は浅くなって使い勝手が増しています。
付属の角皿は光沢のあるホーロー加工のものに(右は初代付属の角皿) 「角皿の底は当社マーケティングのスタッフやシェフと相談して、少し(約10.6ミリ)浅くすることになりました。せっかく広くなった底面積を有効的に使えるようにとの意図です。ほか、デザイン面では自社ロゴの凹凸を若干強めています。ホーローは表面をガラス質でコーティングしているため厚みと光沢があるので、浅い凹凸だと埋もれてしまうためです」(佐々木)
ロゴの見え方も立体サンプルで徹底的に検証する 引き続きわくわくを 「新モデルのデザインはどうあるべきだろうということを、キッチンシリーズ全体を俯瞰してチームで深く考えました。何を変え、何を変えないべきなのか……。デザインが決まったあとの量産までの道のりには、品質と実現性のバランス取りに多くの課題がありました。妥協せず、ひとつずつ向き合った結果、素敵な魅力を持ったBALMUDA The Range 2世代モデルとして、上質なアップデートに仕上げることができたと思います」(佐々木)
キッチン空間にいるだけでわくわくする──そんな思いを込めたBALMUDA The Rangeの第2世代として、最良のアップデートを突き詰めた新モデル。製品を詳しくご覧になりたい方は、ぜひ公式サイトへお越しください。
次回、「Deep Dive into BALMUDA」 では、BALMUDA The Lanternの誕生秘話を紹介する予定です。