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小学生ハンドボールクラブを作るのに必要な3 + 1つのもの:+1とは

これまでチーム立ち上げに必要なものとして、ヒト・モノ・カネについて述べてきました。もう一つ、必要なものがあります。それは、とてもありきたりですが「理念」です。「このクラブで何をしたいのか」ということですが、もっと限定すると「このクラブでどんな子供に成長させたいのか」ということです。

明確な理念がない状態でチームを運営すると、気に入った子ばかりに声をかけたり、練習頻度が年によってバラバラだったり、練習メニューが場当たり的だったり、練習と試合とで指導者の態度が変わったり…と、子供も周囲の大人も混乱するようなチームになってしまいます。

指導も運営も始めたばかりの時は難しいと思いますが、自分の中の軸を確認しておくことは大事だと思います。

そもそも指導は子供のためではなく指導者のためのもの

「子供の成長のために指導をしている」というのがジュニアの指導者の大義であり、指導者講習会でも言われます。ですが本当にそうでしょうか。自身でクラブを立ち上げてまでするモチベーションの根源はずばり「やりたいから」ではないですか。つまり指導者(私含め)は、「自分のため」に指導をします。
自分の教え方で子供が変わっていき、上手になるのを見るのが楽しいのです。育成ソシャゲと同じで、自分が育てたキャラが小学生ハンドボール界という空間で勝利することが、楽しいのです。指導方針を巡って指導者同士でよく対立しますが、それは自身が育てたキャラを横取りされるようなものだからでしょう。

子供にクラブが合わせるのではなく、利用者がクラブを選ぶ

では、自分はどのように子供を育成していきたいか、ということです。これは、その指導者が「何を大事に思うか」ということにかかっています。ある指導者は、何がなんでも勝利を目指していました。試合で勝て、試合で勝てなかったら礼儀で勝て、という感じです。保護者への要求も多く、賛否がはっきりしていました。ですが、練習でも試合でもその態度にぶれはなく、その理念に賛同する家庭が加入していました。

私は、当初のクラブでは「とにかく小学生と一緒にハンドボールを楽しみたい」というところから始まりました。ですが練習を重ねるうちに勝利だけを望むような雰囲気になり、結局私の中で育てたいのか勝ちたいのか、どっちつかずとなってしまいました。その反省から、次のクラブでは、「うちにくるとこういう子供になります」ということを最初から明確にしました。

  1. ボールを自由にあやつれるようになる

  2. からだを自由に動かせるようになる

  3. 自分の気持ちを相手に伝えられるようになる

です。この目的のためには、大会参加は不要というかむしろ害悪になると考えました。大会に参加したい、子供をビシバシ鍛えて欲しい、という家庭もあったかもしれませんが、それを望む場合は他のクラブを紹介しました。

三つ目のクラブでは、ハイブリッド型で行なっているところです。これからどうなるかはわかりませんが、自分の方針や態度は明確にしており、それに賛同する方々に選んでいただけています(深謝)。

理念のあるコーチの指導-勝っても負けても

かつでの強圧的一方的な指導の反省から「子供に合わせた指導」「Players First」というのが求めらていますが、理念がはっきりしない指導者はこれを誤解しがちです。「この子はできるから試合で使えるようどんどん教えよう」「この子はあまりできないから、これくらいのことだけやらせておけばいいだろう」となりがちではないでしょうか。これは大きな間違いです。子供の能力に合わせなくてはならないのは「強度」であって、「機会」ではないからです。

指導者の理念の有無を知る方法があります。それは「声がけが試合と練習で同じかどうか」です。練習では声がけが不十分なのに、試合になると豹変する指導者は多いです。目指す子供像があれば、練習ー試合を通じて声がけが一貫します(柔らかいか厳しいか、の違いはありますよ)。入ろうか迷っているクラブがある場合、もし機会があれば、練習と試合の両方を見学させてもらうと良いです。

私が駆け出しのころ、他クラブの力のある指導者から、いくつか言葉をいただきました。
「勝っても負けてもこれくらいできる子供にしたい」
「勝ちを狙うと勝てなくなる」
というのが印象に残っています。試合でも練習でも常に怒鳴っているタイプの指導者で私の理念とは180度異なりますが、練習に一貫性があり、軸のある人の言葉だと思いました。

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