清水健太さん×神戸里奈さん対談!Vol.2
清水健太さんへのロングインタビュー、前回はジゼルの舞台でのお話でした。
今回は子ども時代の話 ローザンヌを目指すまでの貴重な体験談です!
神戸> ちょっと子供の頃に戻ってお伺いします。何歳からバレエをはじめましたか?
清水> 10歳です。
神戸> どんなきっかけでしたか?
清水> 姉がバレエをやっていたから。で、その当時まだDVDもない時代だったんですが、バレエの発表会があって、たまたま、パドドゥだったのかな?男性で、バルシニコフとか、熊川さんとか、佐々木大さん、小島直也さんとか、黄金のスターたちが編集されているビデオを見たんです。その時に、これやりたいこれやりたい!ってなったんです。
神戸> 自分からバレエをやりたいって思ったんですね。それまで運動やほかのスポーツはされてましたか?
清水> 習い事はしていませんでしたが、基本全般スポーツはできるほうでした。運送神経が良かったんですかね。少年野球からスカウトされるくらい肩もよかったし、コントロールも結構よかったんですよ。
神戸> その頃はお稽古事としては、他には何か?
清水> 何もやっていなかったかな。でも、バレエもやめると思っていました。
やりたいって言って始めたけど1年でやめると思ってましたよ。周りも自分も。
神戸> でも10歳で初めて11歳、12歳と続けてその3、4年後にはローザンヌに出ているということですよね。
清水> ローザンヌは16の時ですね。
神戸> その辺りはどういう経緯だったんでしょうか?
清水> 12歳ぐらいになった時にコンクールに出始めて、同年代の子がダブルトゥール回っているのを見て、あ、すげ~カッコいい!自分もやりたいって思って、その11歳から12歳の頃の1年間ですごいメキメキ上手になったんです。
神戸> なるほど、運動神経の良さもあるし、見て学ぶ力もあったんでしょうかね?
清水> 見て学ぶというかね。年に3回か4回かコンクールで会えるでしょ、そしたらリハーサル室で男ばっかだから遊んでいるじゃないですか笑
その技やりたいんだけど教えてよ!みたいな。
神戸> 確かにね、男性同士はそういうのがありますね。
清水> すごい良い時代だったなって思うけど。そうやってそこで教えてもらって、稽古場持ち帰って練習するみたいな。
そうすると先生が褒めてくれるの。
あ、ダブルトゥールできるようになったの?みたいな、それもすごい嬉しくて。
神戸> 男性同士ならではですね。同年代の人達から学べたっていうのも自分もやっていこうという意識に繫がったんですね。
清水> それこそ、遅沢祐介なんかはその時からすごかったからね。全部のコンクール取っていたからね。
神戸> 背も高くてね。
清水> そう。シニアの人だと思っていました(笑)。
神戸> 同世代に、良いダンサーというか、今も活躍しているダンサーが出ているっていうのは大きいかもしれないですね。
清水> 僕らの世代は多いですね。
続いてはコンクールの話題です。
清水さんがプロを目指す子供達に考えて欲しいことは・・
神戸> ところでコンクールの審査員ってされたことはありますか?
清水> ありますよ。湘南バレエコンクールとかエスポワールとか。
神戸> 子供達にどうやってプロになっていくか、精神的な事も含めて実際にプロになった人は子供の時にどんな意識でやっていたのかということを伝えたいと思っているのですが、大事にしたほうがいいことや、自分は10代のころどんな風に過ごしていたとか、その辺りをお伺いしたいと思います。
清水> 中学校2年生かな、ローザンヌをテレビで観てこれ受かったら仕事になるかもって、漠然と思ったんです。
それで目指そうって思ったけどその反面バレエ漬けの生活に切り替えていくことになって友達との時間が全くなくなっったんですね。それが少し嫌だった時期でもありました。だからどこかで辞めても良いかなっていう気持ちもありましたね。
神戸> 14歳の時点で。
清水> 楽しいことしてたいなっていうのがちょっとあって、でもそこで何故バレエを選んだのかあんまり覚えてないんだよね。
神戸> ローザンヌ出ようっていうのは自分の意思だったのか、それとも周りの先生からも勧められて?
清水> いや、自分の意志ですね。
ローザンヌは準備期間にお金いっぱいかかりますし、うちは裕福でもなかったのでそれも親戚に工面してもらって、みたいなことしないといけないの知っていたから、出たいって言いづらかったですね。最初父は反対でした。
そこで子供ながらに、これは頑張んなきゃダメだなって思ったんだと思う。楽しいものは見て見ぬふりをして、バレエに専念するみたいになったんだろうなって。
それで、親父もなんとなくOKしてくれました。だからその時ローザンヌに落ちていたら普通の一般人になっていたでしょうね。
神戸> そこの危機感というか、時間のリミットがあったからこそ頑張れたんですね。
実際受かった後は嬉しかったですか?
清水> ローザンヌで賞を取れたっていうことより表彰式の前の日に夜中までずっと遊んでたっていうことの方が嬉しかったですね(笑)。楽しんでましたね。
楽しめるようになったのはローザンヌの舞台がきっかけかな?
それまではとても緊張していて。ローザンヌに出てから、もう楽しんじゃえって思えるようになりました。
神戸> すっごい明るくて、ここがゴールじゃなくて失敗しても成功してもどっちでも良いんだよ、みたいな雰囲気がすごくありますね、ローザンヌって。
清水> そう、だからそれが凄く居心地が良かったのか、あの年から、舞台に出てもあんまり緊張ってのはなくなったかな。もちろん緊張感は持っているけど、怖気付くとか失敗したらどうしようとか考えなくなりましたね。
神戸> 緊張してガチガチになっちゃって、普段の成果を見られないことより悲しいことはないですしね。
仕事になってからも特に、ガチガチになるとかはないですか?これは責任あるなとか。
清水> ピンチヒッターで、例えばリハーサルが2日間くらいしかないとかだと、やっぱり踊り込む時間がない分不安になるし大丈夫かなって思うけど、それ以外は結構リハーサルもちゃんとやるタイプだしあまりそういうことはないですね。
神戸> そうですね、清水さんが焦っているっていうところを見たことないかも。現場でも舞台でも。いつも余裕そうですよね。それがものすごく自信家に見えた時がありました。
清水> 自信はないですよ。
神戸> 普段通りの自分のままで楽しめば良いなみたいな感覚で舞台に立つ感じですね。
清水> 簡単にいえば開き直っている部分があるかな。もうこれだけやったんだし、なるようになるだろうみたいな。
神戸> そういう気持ちは子供達に持って欲しいですね。
そこまでの努力はするけど、もう出たとこ勝負でしょうがないでしょみたいな。
コンクールの審査員も経験されているということですが、コンクールというものに対してはどう思いますか?
清水> 数が増えすぎていることに関して、どうなんだろうなって思う部分と、数が増えたことによって場数が踏めるチャンスが増えているのは良いなって部分があります。
日本人はミーハーだから賞をもらうことばかり重要視しちゃうんですけどね。
賞がつくことじゃなくて、それを与えてもらった後、自分がどうなりたいのか、自分がどうなれるのか、そういうヴィジョン持っている子がどれだけいるのかな?っていう心配がちょっとありますね。
神戸> 1位を取るためとか、この子より上に行くため、というのが目的だと結局そのあとに目標がないままに終わってしまう。
清水> 賞を取ることで一個達成されてしまうからね。
神戸> プロのダンサーになれるかどうかは、賞を取ること以上に、踊りたい、あの劇場に立ちたい、あそこのオーケストラと共演したい、というところまでの思いがあるかどうかで、変わってくるものだと思います。
清水> 僕らの時はそんなにコンクールの数はなかったですしね。
僕は国内のコンクールって、ローザンヌの準備として舞台を踏んでおこうかなっていう感じで受けただけだから、今はYAGPとかもありますけどちょっと質が違いますねローザンヌとは。
神戸> 私もローザンヌが目標でした。
ローザンヌはバレエをやり続けて良い可能性があるかどうかをジャッジしてもらうみたいな感覚で行ったので、落ちたらそれこそバレエをやめたほうが良いし、受かったら続けてて良いよみたいな感じでしたね。
清水> そうですね。ああいうコンクールがもっと増えれば良いんだけどね。ローザンヌみたいなね。
神戸> ローザンヌはワークショップがすごく、楽しかったですよね。バリエーションを教えてもらうにしても、あなたはその踊りに対してどう思う?とか、あなたが思うその役はどういう感じ?っていうのを、逆に質問されたりして、決めつけられたものをするのではなくて一個人として育ててくれるんだなっての感じられたのが嬉しかったのを覚えています。
清水> 自分の生徒がコンクール受けたいんですけど、とか言ってきたら、どう答えますか?
神戸> 何を目指してやるかを聞いてからにするかな。コンクールに出るのであれば、どういう目的でコンクールに出るかというのが大事ですね。
清水> そうだよね。そこだと思う。
神戸> 別にね、趣味でやってて本当に一人で踊ってみたいんですっていうんだったら、その小さなコンクールで、ある程度ちゃんとその子なりの練習をして、見せられるくらいの踊りになっていけば、別にプロにならなくてもコンクールに出て良いと思うんですね。その子にとっては目標があるから。
でもプロになりたいですって言って、そのレベルじゃ無理だよね、ってなったら、1年2年は待った方が良いって言うかもしれないし、自分の意志でどうしたいか、それがないと無理かなって思う。
清水> そうだよね、そこなんだよね。
神戸> みんなやっているから出るもんじゃないですしね。
清水> 留学もそうですね。最近はとりあえず留学したい、私は留学していました、という事実を作りたい子が多くなりましたよね。
もちろん経験のためというのもありますが、僕らの時代の留学ができる、したい、という価値観と今って全然違うと思うんです。
今は海外旅行いきます、みたいな感覚で行けちゃうから。僕たちの時はそんな気持ちでは行けなかったよね。
神戸> それこそ先生の推薦がないと個人的にオーディションを受けに行ったところで受け入れてくれない状態だったところも多かったですね。
清水> 今は間口は広がっているのかもしれないけれど、その分自分がどれだけ意志を持って目標をはっきりさせて臨めるか、ということが必要になってくると思います。
今回のインタビューはここまで!
いかがでしたでしょうか。
次回は清水さんの留学時代のお話、さらにマイアミシティバレエ時代のお話もお伺いします!
お楽しみに♪
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元東京バレエ団ダンサーでバレエ専門トレーナーの中谷広貴がプロデュース。一流のダンサー、そして専門家達が集結して立ち上げた究極のバレエ情報noteです。