【今日コレ受けvol.016】最近の悩み?
昨年人生で初めて入院をした。生死に関わるような深刻な病気ではなかったこともあって、初めての体験に不安よりワクワクの方が10倍優っていた。
最近は(といっても初めてなので昔との比較はできないのだが)、患者のメンタルケアや、治療と仕事との両立などの生活サポートが手厚い。ソーシャルワーカーさんから「不安ですか?」と尋ねられ、「いいえ、全然です!」と食い気味に返事をして、「そういう方は珍しいですよ。さきほどの方は心配で眠れないとおっしゃっていました」と困った顔をされた。悪いことしてしまったと大いに反省した。
その入院時に行った手術の後遺症で、左側の声帯が動かなくなる「片側性麻痺」が生じた。この1年間は声がかすれる、呼吸が苦しい、飲み込みにくい、頻繁にむせる状態が続いている。最初は「これじゃ仕事になんないじゃん!」と戸惑ったし、実際に収入減にもなった。
だけど、この経験をコラムにしたところ、近藤康太郎さんの三行塾でお褒めいただいた。同じ書き出しのコラムを中日新聞の『&スポーツ』にデフサッカーを紹介する記事として寄稿したところ、デスクの「とてもいいコラムですね」というコメント付きでゲラが戻ってきた。デスクからコメントをいただくのは初めてのこと。しっかりと元は取った。
来月声帯の手術をするのだが、不謹慎ながら修学旅行の前日のような気分でいる。「喉頭枠組み手術」という、局所麻酔で、手術中に声を出しながら調整する術式で、執刀できる先生も日本に数人しかいないらしい。前回は手術台に寝そべって麻酔の針を刺されたところまでしか記憶になく、気がついたらすべて終わってICUに寝ていたので、今度こそすべて余すところなく見てやろう!と鼻息を荒くしている。友だちから「さすがに顔に布をかけるんじゃない? 見られていたら先生もやりにくいでしょ」と指摘され、「確かにそうだな」とやや鼻息はおさまったものの、しっかりと耳掃除をして臨む構えだ。
「今日コレ受けvol.13」で、私は「橋すら探さず飛ぶ」タイプだ、と書いた。豪快に川にはまっても、洋服の中に魚入ってた的なラッキーが起こったり、濡れた服をいかに早く乾かすか選手権を一人で開催したりして楽しんできた。だからあまり悩まないし、悩みが続かない。
これからも、転んでも必ず何を掴むスタンスで生きたいとは思っている。でもこの性格はブックライターを志す上では弱みになるのでは、と最近気がついた。世の中の書籍、とりわけビジネス書、実用書の大半は、お悩みや疑問を解決するために書かれている。いいブックライターになるには、自分が何かに悩んだ経験が必要なのではないか。たまには悩んだりしなきゃダメだよな、と最近悩んでいる。
毎朝7時に更新、24時間限定のショートエッセイCORECOLOR編集長「さとゆみの今日もコレカラ」。「朝ドラ受け」のように、その日の「今日もコレカラ」を受けてそれぞれが自由に書く「遊び」です。
ひゃくぶんのいち【さとゆみの今日もコレカラ/016】
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?