【今日コレ受けvol.010】虹と刀
20代前半までは、ヒリヒリとしていて、常に刀の鍔に親指をかけていた。何から自分を守ろうとしていたのだろう。笑ってしまう。
見兼ねた取引先の部長さんから、「君はさ、最初から刀剥き出しなんだよ。そんなんじゃ、すぐに刺されるよ。刀っていうのは、ギリギリまで見せないで、いざという時に一気に抜くものだ」と言われた。ありがたいアドバイスだったが、「だから、そういう駆け引きが好きじゃないんだよ!」と心の中で毒づいた。
ある日、ふらっと立ち寄ったタワーレコードの試聴機に釘付けになった。最初から最後まで、2度通した。「私みたいな人、他にもいるんだ」と思った。そのままCDをレジに持って行った。自転車を全速力で漕いで、家に帰った。何度も何度も繰り返し、聴き続けた。
NAGOYA CLUB QUATTROで行われたライブにも行った。ボーカルの山中さわおさんは、「俺たちは、別に売れたいわけじゃないんだ。ただ好きな歌を歌っていたいだけなんだ」と噛みついていた。最初から刀抜きっぱなしじゃん! かっこよかった。
理不尽な世の中に刃を向けながらも、彼らの奏でる言葉は優しい。だから、さわおさんの作る私信のような音楽に救われてきた。
写真のコンテストに落ちまくった時は
と自分を奮い立たせた。
サッカー協会を辞めるか迷った時は、
という歌詞に踏み出す勇気をもらった。
今は、少しは大人になった気がしてたけど、数年前テレビからふいに流れてきた『Funny Bunny』に涙した。まだまだ、向かい風。
ライターが書く言葉は、アーティストが紡ぐそれとは違う。だけど、その一行が、その一言が、誰かを救うこともあるかもしれない。そう祈りながら書いた言葉に、自分自身も励まされている。
毎朝7時に更新、24時間限定のショートエッセイCORECOLOR編集長「さとゆみの今日もコレカラ」。「朝ドラ受け」のように、その日の「今日もコレカラ」を受けてそれぞれが自由に書く「遊び」です。
過去を変える暴力。変えられる希望。【さとゆみの 今日もコレカラ/110】