チビッ子たち
週末はU-11の新人戦大会だった。
以前うちは現5年生がいない、と書いたが最近スクール生だった5年生の子がクラブ登録して、5年生1人・4年生2人・3年生5人、の計8人・交代ナシで大会に挑んだ。
予選は3チームの総当りで上位2チームが決勝トーナメントへ。
正直おれは予選突破は難しいと思っていた。
相手を崩すどころか、ディフェンスがいなくてもパスを繋ぐのがままならないような子達だ。
何か事故がなければゴールは生まれないと思っていた。
1試合目。トップチームは市内でも強豪のチーム。
先に行われた同グループ内のもう1チームとの試合も8-1で勝っていた。
試合前の整列で比べるまでもなく体の大きさが違う。
前半10分に中盤からのロングボールがディフェンスラインの裏に出て、ペナルティエリア内で肩くらいの高さに中途半端に跳ねるという、ややこしいボールの処理を息子がモタつき決められる。0-1。
これは、まあ、しょうがない。
このボールを処理する能力や判断力がまだ足りてなかった。
これから覚えればいい。
息子もさして気にしてなさそう。
それはそれで気になるが苦笑
まあその後のプレイに影響するようなことはなさそうだ。
相手は5年生の体の大きい子がワントップで、その子にボールを集めてくる。
そのマークマンは息子。
体格差はあるが特に苦にしてなさそうだ。
すべて冷静に対処して前を向かせない。
考えてみればU-12の試合で6年生のFW達とやりあってるわけで、多少の体格差は問題なさそう。
ただチームは終始劣勢。
止めても止めても、何度でも相手は攻めてくる。
クリアボールが大きく蹴れない。
パスが繋げない。
ドリブルキープが出来ない。
突破口が見えず、ただただ相手の攻撃を止めるのが精一杯。
集中が切れて、一人でもサボれば一気に傾くような展開だが、このチームのチビっ子たちは実に粘り強かった。
一人一人が臆することなく、相手に向かっていく。
失敗を恐れず果敢に挑む。
懸命に相手の攻撃に食らい付く。
経験が少ない故の無知が生むがむしゃらさだけど、このチーム一丸となった泥臭さは間違いなくこのチームのアイデンティティだと思う。
もどかしさもかなりあるが苦笑、その懸命さは見てるこっちもアツくなる。
結局そのまま0-1で試合終了。
試合後、子どもたちだけで作戦会議をしていた。
漏れ聞こえてくる内容がかわいくて笑ってしまったが、こうやって自分たちだけで何とかしようとする自主性がすばらしい。
2試合目。得失点の関係で引き分け以上なら決勝トーナメント進出だが、このチビっ子たちはそういう計算が出来ないから、目の前の試合に勝とうと集中している。
結果は2-0で勝利。
事故が起きなければ入らないと思っていたゴールが2点も決まった。
おみそれしました。
この試合、息子の出来が素晴らしかった。
サイドの選手が抜かれたと思った瞬間にはセンターバックの息子がカバーに入っていて敵の侵攻を止める。
シンプルで正確なプレイで運動量・集中力ともに素晴らしかった。
そして1日あけて祝日に行われた決勝トーナメント1回戦。
こっちは2位抜けなので、相手は当然別グループの1位抜けのチーム。
劣勢は覚悟している。
耐えて耐えてチャンスを待つ。それしかない。
試合が始まり案の定あいての攻撃の時間が続く。
負けたら終わりのトーナメント特有の雰囲気が試合の緊張感を増していく。
凌いでも凌いでも続くピンチに、チビっ子達は必死に堪えている。
試合のほとんどを相手ボールですごしている。
ただ攻めても攻めても決められない相手も焦っている。
後半終了間際、崩されたわけもなく、ミスしたわけでもなく、一瞬だけ前が空いた瞬間相手はシュートを打ち、ゴールの隅に吸い込まれた。
悲鳴と歓声が同時に上がる。
チビッ子たちが呆然と立ちすくんでいる。
ほんとに終了間際。ただ試合は終わっていない。
コーチが息子にFWに上がれと指示する。
ただここから強引に点を取りに行くには経験も技術も時間もなかった。
タイムアップ、負け。
胸に迫るアツい試合だった。
何人かのお母さん方は涙していた。
ただ冷静に、勝ち負けの観点から見ると、やはり文字通り一歩も二歩も相手より及ばなかった。
サイズの問題もあるが、来年はこのチビッ子たちが戦っていくわけで、いつまでもチビなのを言い訳には出来ない。
単純なリーチに差があるなら、反応を早くするとか、先に体を当てるとか工夫が必要だと思う。
ただこのチームは始まったばかりで、泣いて悔しがるチビッ子たちの道のりはまだまだこれからだ。
それにしてもこの子たちの戦いぶりには胸が熱くなる。
上手いやつも下手なやつも、みんな勝ちたいと思っているからだと思う。
正直に言うと6年生の中には技術や気持ちで劣っていて、その劣っていることを自覚しているせいか勝負を避ける子がいる。
劣等感だな。それはチームメイトに対して、相手に対して、そしてサッカーに対して。
勝負の場で、勝負を避ける選手はものすごく異質に映る。
本人は必死でやっているつもりだと思うが、勝負の本質から見るとあれはただのそういう「フリ」だ。
最上級生といえど、まだ小学生だ。
チビッ子たちと同じように無邪気にボールを追い掛けていても何もおかしくない。
彼もまだ下級生の頃は無知故の怖いもの知らずでプレイしていたのだろうか。
元からの本人の性格もあると思うが、この数年の経験が彼を勝負の場から離れさせたのであればそれはちょっと悲しい。
本人がどういう思いでプレイしているのかわからないが、サッカーを楽しんでいる感じはないかも知れない。
ただチームメイト達と過ごすのは楽しそうだ。
そして、その仲が良いチームメイト達との実力差が気後れの原因なのかも知れない。
結局上手いやつほど無邪気だ。
上手いから無邪気でいられるのかもな。
チビッ子たちもこれから練習や試合を重ね、上達に差が出るかも知れない。
もしそうなったとしてもみんなの気持ちがバラバラになることなくまとまって戦える、今回のようなチームでいてほしいなぁ、と願っている。