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bigをはじめるにあたり

”ファッションデザイナーは世界をよくするのか?” 言葉として潔癖なニュアンスを感じられるかもしれないけど、あえて言葉にすると向き合う問いはこうなる。もちろんそこには、ファッションデザイナーが、そのクリエイションの純粋さが、世界をよくするのであるという大きな期待というか、そうあってほしいと思う個人的な想いであったりする。

2013年、バングラディッシュのラナ・プラザ崩落事故は1000人以上の死者を出し、そこからは1日2ドル未満で暮らすその地の生活や児童労働、安全衛生状況の不備を明らかにし、ファッションは根本的な人権を議論せざる得ない状況になった。価格競争は大量生産の拍車をかけ、その本来的なコストは発展途上国が負担している。

衣服が消費される時代において、売れないものは大量廃棄、売れても着用回数は少なく廃棄される。上述したような負担をしいながら、年間30億着の衣服が廃棄されているという。多くは焼却処分されCO2を排出し地球環境へも負荷をかける。生産における水の消費は海洋汚染に影響を与えている。

世界で見るとアパレル市場は2015年の約150兆円から2025年には約300兆円規模が見込まれる成長産業である。背景には中国筆頭に、アジア諸国での人口増加及び経済的成長からの需要増である。日本だけを見ていると見えづらいが世界でファッションは依然として成長産業なのである。

大量に商品が出回るからか、シンプルでミニマルなものが好まれる時代になった。たくさんの消費が繰り返されることで一着への思い入れは希薄化しがちかもしれない。かつてのブランド志向といった話は聞かなくなった。見方によっては、ファッションは無地に、無味乾燥なものになりつつある。

一部のデザイナーはInstagramで直接顧客と深くつながり、需給予測はAIで進化を遂げ、Vtuberがファッションのメディアになり、衣服はデジタルコンテンツとしても昇華する。センシング技術は繊維に溶け込み、バイオインフォマティクスが新しい素材を生成する。ファッションにまつわるデジタライゼーションは全方位で急激に加速しはじめた。

ファッションとは、衣服とは、自分が何者であるか、ありたいかを示す社会的側面を持つ。ここまで述べてきたことを思うと、いま衣服は何を示すことができるのか、ファッションはクリエイションの本質に立ち返るべき時なのかもしれない。そして、衣服が持つメッセージを楽しむ素養が人間らしさを取り戻すことなのではないかとも思う。

ファッションデザイナーは世界をよくするのか。世界に何をもたらすのか。取り巻く大きな変化の中で、表現をつきつめることも、何かの・誰かの解決を思考することも、とにかくかっこいいことも、これまでにない程に強く求められる時代だ。デザイナーはその職能の本質を変えることなく、世界との新しいつながりや関係性によって次代の存在になっていく。

2019年4月bigプロジェクトが始動しました。これから世界で活躍するデザイナーと、ファッションにコレクティブインパクトを起こしていく人材・チームと、ファッションを愛する多くの人たちと、たくさんの実験的プロジェクトや対話を通じて、アジアを起点とした世界への大きな問いかけとともに、ポジティブな変化をもたらしていきたいと思っています。

https://www.bigproject.jp/jp

まず、アジアにグローバル水準のデザインコンペティションを立ち上げるところからスタートします。現在、応募を締め切り1次選考中です。8月にはファイナリストを集めた選考会を開きますので、その様子なども伝えていきたいです。

#ファッション  #デザイン #デザイナー #アパレル  #繊維


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