旅と本:「イタリア宣教師がチャイナに行ってみた」byマテオリッチ
「京都の古本まつり行かない?」
「古本屋さんめぐり行かない?」旅行先で時間が中途半端にあまったとき、そんな提案をしてくれる友達は、未来から来たAIか、知己。
京都は百万遍の古本まつりに行きました。遠目からは人がぎっしりなのに、境内に入ったとたん、砂利を踏む音がひびくほどのシンとした空気…。私は知っている…!これはガチ本蒐集家の集まり…!
脳内の「いつか手に入れたい本リスト」と、眼前の本のサイズ感を爆速照合モードで渉猟跋扈フフフ、をしていたところ、「お!?」本を発見。状態は清潔、電子化チェックもクリア、値段が1冊200円、これは買い!
宣教師本は「16世紀のインテリ旅行エッセイ」
私はこの大航海時代叢書シリーズのファンなんですね。
飛行機もなければ国境もさだまっていない時期に、世界中を自力でアドベンチャーしていた人たちがいます。海賊王になる…!ではなく、キリスト教の宣教師になる…!インテリ冒険者、憧れますねえ。
当時の宣教師は、エリート中のエリート+冒険心過多+スーパーコミュニケーションスキル+途中で死ぬ覚悟という人が、「ねえ!僕たちの推しを見て!改宗して!」の一心で、船にのるんですね。もちろん仏教にもそういうパッションを持った人はいたんですが、キリスト教グループのすごいところは、布教のためのデータ集めは情熱に勝ると考えているところ。
具体的には、私が最初に読んだ、大航海時代叢書シリーズ、ロドリゲスの「日本教会史」を見るとわかりやすいかと…。私はタイトルからしてこの本は「キリストは…、聖書というものは…」と、推し紹介で始まるものだと思っていました。ところが冒頭は「はじめに。私たちの推しを紹介する地、アジアとは…」なのです。
アジアの国土、地形、気候、そのなかの日本はどんな国か、特産物は、風習は、建築は、食べ物は…と、「布教するにはまずターゲットを知れ」ということで、宣教師は16世紀のありとあらゆる日本のことを調べてキリスト教本部に報告しているんでした。
おかげで「日本教会史」は、真田幸村漫画を描く時にめっちゃ役に立ちました。玄関のどこに草履を置くのかに始まり、一般家庭で畳を敷き詰めていいとか時代的にありえないとか、まさに戦国漫画描きには第一級の必須本。
そんな経緯、宣教師本は「おもしろ旅エッセイ」というななめ認知があったうえに、マテオリッチって名前だけはきいたことある…が重なり、購入に至りました。
マテオリッチの特技は記憶術
マテオリッチさんは20代で、ラテン語、ギリシア語、弁護士(ロジックで考えること)、医学、天文学、数学大好き、特技は短期記憶術(物語や身体のパーツと覚えたい語を結びつける方法。私は物語派ですが、マテオリッチは4つの絵画と結びつける方法ですって!)だったそうで、中国人と仲良くなるときに、漢字まる覚え、言われた何桁もの数字を逆から言っていくなどブレイン自由自在に操って、ご披露していたそうです。かっこいいなあ。
さっそく読んでみたところ、目をひいたのは中国人の外国人に対する反応でした。ロドリゲスの本にも同じ項目があるのでくらべてみますね。
日本人:異国人を歓迎、好意を示す。
中国人:異国人を警戒し軽蔑する。
ロドリゲスが考えるには「日本は島国で他国から襲われた経験がないので、外国人が怖いものではない」
マテオリッチが考えるには「中国人は長いこと警戒していたが、私たち宣教師の国が遠いところにあり、戦をしかけてこないとわかると安心した」
おもしろい意見だわあ。中国は周辺の国から攻められたり外国人を見たこともある一方、日本人は島国だからそんな経験がないので警戒心を抱かないということですよね。マテオリッチはこうもいってます。「中国とヨーロッパの大きな違いはなにか。中国は国土が広く、豊かだから、他国を侵略せずとも生きていける。私たちヨーロッパの国は小さいので他国から物資をとらないと生きていけない」
たしかに、中国って世界で唯一、開店して以来、ひとつの国として営業し続けている国なんですよね。ほかの店はつぶれたか、合併したか、あたらしいか…。中国の魅力ってなんだろうなあ〜と考え続けるためのいい本に出会いました。
古本まつりはいいね…!