0120から電話がきたら
電話営業が嫌いだ。
こちらの状況を鑑みず、いきなり営業をかけてくる。お時間、2,3分ほどよろしいですかと断りながら、平気で10分15分話してくる。
僕はもともと人の話をさえぎるのが得意でない。一方的なメリットの説明をいらいらしながら聞いてしまう。
一度引っかかったことがある。
アパートで契約しているTVチューナーの会社からの営業電話だった。いま使っているTVチューナーを無料でアップグレードできるというのだ。ちょうど貸与されていたTVチューナーが壊れかけで、自販機みたいな唸り声をあげていたので話を聞くことにした。電話口の40代女性と思しき熟練オペレーターはチューナーの機能を一通り説明した。テレビを録画してスマホで見れる機能もあるらしい。世の中でどれほどこの機能が欲しい人間がいるのだ。そして10分経過。
さらにですね・・・、彼女は続ける。
最新のアニメ映画が見られるチャンネルの話をし始めた。最新チューナーで見れるようになったらしい。タダで交換できるなら、これくらい我慢しようと思い5分ほど聞いた後だった。
「このチャンネルを契約した方に限り、無料でチューナーをアップグレードしております。」衝撃的事実を彼女はこともなげに言ってのけた。まるで何度も何度も練習して、まるっきり新鮮味がなくなったお芝居のセリフみたいだった。
日々の平凡な暮らしの中で自分だけに少しラッキーなことが起こったような気がして、お姉さんを信じた15分。その信頼は見事に打ち砕かれた。
一応聞いてみた。それは無料とは言えないですよね?
「このチャンネルを契約した方に限り、無料でございます」
話が噛み合わない。彼女はきっと、私が白と言ったものを黒と言い、猫と言ったものを犬といい、パンティーと言ったものをブラジャーと言う。これ以上の議論は無駄だ。
「今度電話する時は、キャンペーンの要旨を初めに述べて電話してください。時間の無駄です」
結論から先に言ってください、と上司からプレゼンのダメ出しをされた時の受け売りみたいになってしまった。
その後、歳をとるにつれて私も学習し、先制攻撃という技を編み出した。冒頭の説明後、お時間2,3分よろしいですか?と聞かれた時に、すかさずこちらが気になっているところを「それはこういうことですか?」と聞くのだ。
常に攻撃側に回ってる彼らは意外に防御力が低い。特に経験が浅いと、彼らはすぐにたじろいでボロが出る。そうなったらしめたもの。それなら結構です、と言って電話を切れば良いのだ。
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