石神井公園の風景（エッセイ４）

まるでお見合い！？のような３時間②

　
　雨宿りの喫茶店で、本多さんの誕生日を乾杯した二人の話は、まだまだ続きました。

本多：　それにしても、南国の透き通った海で泳げたら、気持ちいいだろうな～。
田中：　そうですね。でも、実は私、泳げないんですよ！浮き輪でプカプカ浮いて、波にゆらゆら流されて遊んでいただけで（苦笑）。
本多：　それは意外ですね。
田中：　私が通っていた小学校、私立だったんですがプールがなかったんですよ。夏の５日間だけ、国立競技場に通って水泳教室っていうのはあったんですが、５日間では泳げないですよね～（笑）。
本多：　そうだったんですね。私は、高校の時、水泳部だったんですよ。
田中：　それは、泳ぎはお得意ですね。
本多：　まあ、そうですね。でも、笑っちゃうことがありまして、大会があったんですが、前日から熱を出して参加出来なかったんですよね(苦笑)
田中：　それは残念でしたね。でも、大会出るレベルってことですから、凄いですよね！
本多：　いや～それほどでも…。田中さんは、部活は何かやってたんですか？
田中：　はい。硬式テニスをやっていました。
本多：　へー、いいですね～！！
田中：　私が１０歳の時、父は私を連れて、毎週（日）成城のテニスクラブに一緒に車で通っていたんです。
本多：　お嬢様じゃないですか～！？
田中：　そんなことはないんですが…。芸能人の三谷友里恵って知ってますか？
本多：　はい。
田中：　あの方が一つか二つ上の学年で、テニスクラブでは、お隣のクラスで、美人で上手でいつも見とれていました。父は、皇室好きで、テニスコートの出逢いだった昭和天皇と美智子皇后陛下に憧れて、私を成城のテニスクラブに入れたみたいです。
本多：　じゃあ、私もテニス始めようかな～（笑）。
田中：　（笑）
本多：　じゃあ、それからずっとテニスやってたんですか？
田中：　いいえ。私は、中学生になってからは貧血ですぐ倒れちゃう癖があって、テニスは中２までやっていましたが、そのあと中３と高１の時は、文化祭などに出るバンドをやっていました。
本多：　バンドでは、何をしてたんですか？
田中：　ピアノとキーボード。それと、ボーカルを少し。
本多：　へー！ピアノ弾けるんですか！？テニスとピアノ、やっぱりお嬢様だな～❣
田中：　いえいえ、そんなことは・・・。でも、中高は女子校でした。
本多：　やっぱり！そうですよね。お嬢様って感じしますよ♡
田中：　そうなんですか（笑）。

　私は、本多さんとの話の間ずっと笑顔をキープし続けていたので、だんだん顔が引きつり、頬っぺたが痙攣(けいれん)を起こし始めました。

ピクピクッ、ピクピクッ・・・
（どうしよう・・・私の顔の痙攣、気づいてるかな・・・）

　腕時計に目をやると、もう２０：３０過ぎ———既に、喫茶店に入ってから３時間くらい経っていました。時間を気にした私に気づき、

本多：　もう、こんな時間になっちゃいましたね。時間が経つのはあっという間ですね！
田中：　そうですね。早いですね。
本多：　名残惜しいですけど、あまり遅くなるとおうちでも心配するでしょうから、帰りましょうか。
田中：　はい。

　出口の会計のところまで行くと―――
本多：　今日は私が払いますから。
田中：　いえいえ、初めて会った人にご馳走して頂くのは悪いので。
本多：　今日は私の誕生日を祝ってくれたので。
田中：　いえいえ、誕生日なのに出して頂くのは・・・。
本多：　いえいえ、お礼とお近づきの印に、私に出させて下さい。
と、結局、本多さんに出していただきました。

田中：　ごちそうさまでした。
本多：　こちらこそ、今日は誕生日祝いを一緒にしてくれて、ありがとうございました。

―――らせん階段を上っていくと、雨は上がっていました。そして、荻窪ルミネの正面玄関の辺りで、立ち話。

本多：　今日は、本当にありがとうございました。
田中：　こちらこそ、色々聴かせて頂いて楽しかったです。
本多：　いいえ、こちらこそ楽しかったです。ところで田中さんは、明日はお休みですか？
田中：　はい、お休みです。
本多：　明日、もし良ければ、新宿かどこかで映画見に行きませんか？

突然の誘いに私は戸惑いました。

（どうしよう・・・。この人、いい人だけど、おしゃべりだし、年が近すぎて私のタイプではないし、、、。でも、私は先月別れたばかりで今、彼氏は居ないし、、、友達として付き合うなら、まあいいか…）

田中：　いいですね。
本多：　田中さんは、どんな映画が好きですか？
田中：　ラブストーリーか、コメディーが好きです。
本多：　ラブストーリー、いいですね～✨私、詳しくないんですが、何か見たいもの探しておいて頂いてもいいですか？
田中：　はい。
本多：　ちなみに、私、明日、午前中は仕事があるので、お昼ちょっと過ぎちゃいますが、ランチご一緒にいかがですか？
田中：　はい。
本多：　じゃあ、ここに１２：３０でもいいですか？
田中：　はい。大丈夫です。
本多：　あ、遅くなっちゃいましたから、送っていきましょうか？
田中：　いいえ、自転車なので大丈夫です。そんなに遠くありませんし。
本多：　じゃあ、明日また楽しみにしています。
田中：　今日は、ありがとうございました。明日また、よろしくお願いいたします。では、失礼いたします。

（なんという展開。今日が誕生日だったなんて！それに、明日会うことになっちゃった！？でも、お友達よね。お友達なら、まあいいか…。）

（つづく）